起業の本や雑誌などを読むと、「株式会社」「合同会社(LLC)」「LLP」という3つの会社形態が出てきます。この3つは何が違うのでしょうか?なかなか理解しにくいですね。
この章では、「合同会社(LLC)」と「LLP」と言ったものがどういったものかを、株式会社との比較を通じてご説明をしていきます。起業の際の意思決定の一助にしていただけると幸いです!ではまずは合同会社から見ていきましょう。
合同会社は平成18年5月に施行された会社法によって新しく出てきた会社形態の一つです。その特徴を簡単にまとめますと、次の5つになります。
・配当が出資割合によらず自由にできる
・設立の実費が安い
・法人格を持っている
・柔軟な機関設計ができる
・出資者の有限責任
と、こんな風に書かれただけだと、わかりにくいですよね。順番にわかりやすくご説明させていただきます。
「配当が出資割合によらず自由にできる」
合同会社も株式会社と同じく出資者から出資してもらって会社が成立します。そして株式会社と同じく、利益が出たら出資者に配当を出すことができます。ここまでは株式会社も合同会社も同じなのですが、ここからが合同会社の特徴の部分です。株式会社は「出資割合に応じて」配当が出されます。(配当優先株式などがありますが、法律の規制を受けます)それに対して合同会社では「出資割合に応じない自由な配当」を出すことができるのです。
たとえば株式会社では出資割合が50パーセントずつならば、配当も50パーセントずつにしなければいけません。ですが合同会社では出資割合が50パーセントずつであっても、配当を60パーセントと40パーセントのように自由に設定できるのです。これって具体的にはどんなメリットがあると思われますか?「自由な利益分配」がどういった場合に有効になるかと言いますと、「お金はないが技術力を持った人」と「お金はあって販売力もあるが技術力がない人」が共同で事業を行う場合などです。
このような場合、従来の株式会社であれば「お金はないが技術力を持った人」への配当割合は低くならざるを得ませんでした。そのため技術力のある人が起業しにくく、国際的な競争力が弱まると懸念されていました。こういった状況を打破し、技術力を持った人が起業しやすくするために合同会社は有効なのです。ですがひとつ注意点があります。
それは「配当」という利益分配の方法についてです。「配当」は、法人の「税引”後”利益」から支払います。言い換えると、法人税の計算上、経費にはならないということです。同じ利益分配でも「役員報酬」という方法があります。(株主が役員になることが前提条件です。)この場合であれば「役員報酬」は法人の経費になります。支払った分、利益の40%という高税率な法人税が安くなっていくということです。
多くの起業の場合「出資者=役員」という形態が多いと思われますが、このときに「配当」として利益分配するのと「役員報酬」として利益分配するのでは、同じ利益分配であっても税金が変わるのです。そして多くの場合は「配当」で利益分配をするほうが税金が高くなってしまうのです。こういった税金の知識は知っているか否かで結果が変わります。合同会社を作ることを決めておられる方は、設立前に実際に税理士に税額をシミュレーションしてもらうようにしてください。
「設立の実費が安い」
株式会社と合同会社の設立はかかる実費が違います。株式会社は公証人役場で「定款の認証」が必要ですが、合同会社の場合には不要です。公証人役場での認証は「電子定款」でも約5万2千円、電子定款でなかった場合は9万2千円かかります。この代金が合同会社の場合は0円です。
また法務局で払う「登録免許税」も異なります。株式会社の場合は15万円~ですが、合同会社の場合は6万円~になります。あと必要な経費としては、法務局で定款に張る印紙代が4万円(電子定款の場合不要です)と、会社の実印代が1~2万円程度ですので、手続を自分で行う場合には最も低い金額で約8~12万円で会社が出来上がります。このように合同会社は株式会社よりも安く設立ができます。
「法人格を持っている」
法人格があれば銀行で口座を開いたり、事務所や通信機器を法人名義で借りたりすることができます。つまり株式会社と同じということです。これはLLPと比較して考える必要があります。LLPは後ほど詳しくご説明いたしますが「組合」であって法人格を持っていないのです。
ですので銀行口座なども「合資会社」単独としては開けないのです。(有限責任事業組合●●●組合員●●●という形になります)この点が合同会社(LLC)とLLPの大きな違いです。ただし合同会社は株式会社と同じく法的には同じ「法人格」を持っているのですが、法人格の持つイメージは違うようです。
2013年現在でも「株式会社●●●」と「合同会社●●●」を比較すると、多くの人は「株式会社●●●」のほうのが信用が高いイメージがあるようです。今後合同会社がもっと広がれば、それに伴って社会的な信用のイメージも広がると思いますが、まだまだ発展途上と言わざるを得ないのが現状です。