東日本大震災から3年経つ今もなお、被災地の子どもたちを取り巻く環境は厳しい。

 岩手・宮城・福島3県では、小中学生の6~7人に1人が、生活の苦しい家庭向けの就学援助を受ける。厚生労働省の調べでは、被災した子の3割が強い不安や不眠などに苦しむ。いまだ仮設校舎の学校も多い。

 だが、希望の芽も探せる。

 家族や家を失った子、親が仕事を失った子。被災しなかった子も周囲の現実は見ている。経験を糧に、子どもたちは何のために自分は学ぶのかを深く考え始めているようだ。

 3県の大学進学率には落ち込みがみられない一方、高校卒業後に就職も進学もしない生徒は減った。「自分も社会と復興に貢献したいという意識の表れ」と福島県教委の担当者はみる。

 大手予備校、河合塾の佐々木一幸東北本部長も、明確な志望動機をもつ大学受験生が増えたと感じる。「たとえば再生可能エネルギーを学びたいと話す生徒が何人もいる。震災前には聞いたことがなかった」

 東北の危機を「わがこと」ととらえ、自分にできることを考える。そんな姿勢は、地元の教育者らが机の上では身につかない「生きる力」を養う実践を重ねた成果でもあるだろう。

 福島県立福島高校の生徒有志は、課外の活動で福島復興プランを考えている。

 例えば、地元の土湯温泉街は原発事故で宿泊客が激減した。「温泉の熱を使って南国の果実を育て、食の魅力で再建しては」。生徒らの提案を受け、温泉街で試験栽培が始まった。「世の中に出て役立つ力を育てたい。文句を言うより自ら行動する大人になってほしい」。指導する遠藤直哉教諭の願いだ。

 社会の課題を自ら見つけ、解決策を考え、行動する。福島大学が経済協力開発機構(OECD)と進めるプロジェクト「OECD東北スクール」もそんな力を育む試みの一つだ。

 「東北の魅力と復興を世界に発信するイベントを作る」との課題に、3県の中高生ら100人が2年前から取り組む。支援に慣れて受け身にならぬよう、費用も参加者が企業の協賛などを頼んで回り、調達する。

 この夏パリで集大成の祭典を催す。「私は津波にのまれ、九死に一生を得た。命の文字通りの『有り難さ』を伝えたい」。一人一人がこうした伝えたい体験や言葉を抱えて臨む。

 自分が今いる場所から、このさきの社会を考える。東北で出た芽が全国に広がるなら、未来は捨てたものではない。