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半年で80万DLされた動画編集アプリ『SlideStory』に学ぶ、誰でもできるユーザー獲得の4STEP

2014/03/10公開

 

2013年6月に動画投稿に対応したInstagramをはじめ、LINEの動画投稿対応、Vineアプリの日本語ローカライズなどにより、国内のスマホユーザーにも浸透しつつある動画編集・共有サービス。

そんな中、国内スタートアップのナナメウエが開発する動画編集アプリ『SlideStory』が好調を維持している。2013年10月にiOS版をリリース後、2カ月で40万ダウンロードとスタートダッシュに成功。同年12月にSkyland Venturesから3000万円の投資を受け、2014年2月には80万ダウンロードを突破と勢いは止まらない。

『SliedeStory』では、32秒という時間の中で、写真のスライド、または動画をつなぎ合わせ、専用の音楽つきショートムービーを作成できる。作成したムービーはユーザーの端末に保存され、SNSでのシェアをワンタッチで行うことが可能だ。

「動画コンテンツの将来性に賭けて作ったのが、『SlideStory』です」と語る瀧嶋氏

「アプリのダウンロード数を上げるための魔法みたいな方法はないと思います。80万ダウンロードは、当たり前のことをコツコツやった結果です」

そう語るのは代表取締役の瀧嶋篤志氏。青山学院大学在学中にゲームアプリ開発会社でエンジニアリングを学び、卒業後の2013年5月に同級生と共にナナメウエを設立した。

設立後は、写真加工アプリなどの自社サービス開発と受託開発を並行。HONDAが2012年11月にリリースした動画編集アプリ『RoadMovie』の流行に、「動画コンテンツの将来性」を感じた瀧嶋氏は、SlideStoryの開発に着手した。

冒頭に挙げたように、競合アプリがひしめく「写真/ビデオ」カテゴリで着実に成果を積み上げているナナメウエ開発陣。その成長を支える、開発プロセスを紐解くと、4つのSTEPに分かれることが分かった。

STEP1:反面教師を集め、優れたUIを学ぶ
STEP2:予算やユーザーの声より、アウトプットの質にこだわる
STEP3:レビューを書いてもらう仕掛けを作る
STEP4:常にメンバー間で3つ先のビジョンまでを共有する

以下、具体的にどのようにこれらのSTEPを実践しているか、順を追って見ていこう。

STEP1:反面教師を集め優れたUIを学ぶ

まず最初に瀧嶋氏が着手したのは、質の高いアプリの大原則となるUI設計。SlideStoryは極めてシンプルな操作で、動画を編集することができるUIを目指した。

「『気付いたら、動画ができあがっていた』ぐらいに簡単な操作で動画が作れるUIになっています。意識したのは、ユーザー側のアクションを明確化し、導線を一直線にすること。提示されたアクションに対して行動するだけで、何も考えなくても動画が完成するようになっています」

ともすれば、複雑な操作を必要だと思われがちな動画編集アプリに対するハードルを下げるために生まれたUI。そうした設計は、リリース前には、ほぼ完成していたという。

「リリース前の開発段階で、ひたすら類似アプリのUIを分析しました。『次にすべき行動が分かりづらい』、『ボタンの視認性が悪い』、『無駄な画面遷移を強いられる』、など、ほかのアプリに対しての改善点をピックアップしたのです。そうした、反面教師をもとに、SlideStoryのUI設計を行いました」

STEP2:予算やユーザーの声より、アウトプットの質にこだわる

UI設計後に大事になってくるのは、最終的なアウトプットの質を高めること。SlideStoryでいえば、完成された動画の質を高めることだ。

瀧嶋氏は、質の高い動画に必要な要素を探る際にも、SNSでバズった動画や『YouTube』などで再生数の多い動画の分析することから始めた。

「SlideStoryでは動画の尺を32秒に限定しているのですが、これはSNSで見るにはちょうどいい長さだと分析したからです。あとは、スライドがめくれる時のアニメーションも、結婚式ムービーをはじめとした感動系の動画を研究して、試行錯誤しながら作りました」

アプリをシェアすることで、使用できる音楽が増えるというキャンペーンも行っている

質の高い動画に必要な要素を洗い出し、アウトプットのクオリティを上げていったナナメウエ。数ある要素の中でも最終的に一番重要とされるのは、「BGM」だという。

SlideStory開発陣は、UI設計、アウトプットのクオリティに関する研究・分析を行うことで、2カ月間で40万ダウンロードという結果を出すことに成功した。加えて、「スマホ向けアプリが飽和状態の今、最初に触ってもらう瞬間が勝負。そこでどれだけいい第一印象を与えられるかが明暗を分ける」と語る瀧嶋氏。

数少ないチャンスをモノにするために、ナナメウエが行ったような、入念な事前準備が必要なことが分かる。

STEP3:レビューを書いてもらう仕掛けを作る

アプリのクオリティを上げた後、必要になってくるのは、いかにユーザーの目に触れる機会を増やすことだ。そのための仕掛けもSlideStoryにはちりばめられている。

「ユーザーにレビューや動画のシェアを促すポップアップを表示しています。しかし、ただ闇雲に表示していては、UXを著しく下げる要因になる。そのため、表示のタイミングや頻度などは試行錯誤を繰り返して決めました。結果、動画編集後や、閲覧後など、シェア意欲が高く、操作が一息つくタイミングを狙って表示するようにしています」

レビューを書いてもらうからには、当然、チェックも怠らない。

AppStoreのレビューやSNSでのユーザーの声を参考にアプリを調整し、2週間に1回はアップデートを行っている。その結果、2014年2月には80万ダウンロードを達成した。

STEP4:常にメンバー間で3つ先のビジョンまでを共有する

ユーザーにストレスを与えないタイミングで表示されるレビューへの誘導画面。こうした小さな工夫の積み重ねがDL増加につながる

こうしたPDCAを繰り返す中で、瀧嶋氏は「3つ先のビジョンを持つ」ことを大切にしているという。

「3つ先のビジョンを持ち、ロードマップを描くのは、大切なことだと思っています。ビジョンがあれば、作業目的が明確化し、開発スピードの向上につながります。また、メンバー間での意見のズレをなくすため、新しいビジョンはメンバー全員でアイデアを出し合い決めています」

メンバー全員で決めたという、3つ先のビジョンとは何なのだろうか?

「次のステップとして、3月には完成した動画をサーバーで保存できるようにバージョンアップを予定しています。そうすれば、バックアップも取れるし、保存容量を大きくしてマネタイズも図れる。その次は、毎日使って楽しいと思える機能の追加。ユーザー継続率を高める狙いです。最後はクローズドでの動画共有機能の実装。ライバルが多い分野ですが、既存ユーザーとのつながりと質の高いアウトプットで勝負したいです」

今回の取材で、瀧嶋氏が語ったアプリ開発に関するノウハウは、堅実で予算をかけず誰にでもできるものばかり。そうした、「当たり前のことをサボらずにやる」ことこそが瀧嶋氏、ひいてはナナメウエの開発ポリシーだ。

「バズワードを拝借していうと、僕らがやっているのは『誰でもできるグロースハック』なんだと思います。特別、難しいとか、斬新な施策をしているわけではない。押さえるべきツボをきちんと押さえ、質の高いアプリを作る。そうすれば、80万人のユーザーを獲得できるし、ユーザーにアプリを通して良い体験を提供できるのです」

アプリが乱立状態にある中でも、基本に忠実に質の高いアプリ開発を行えば、ユーザーの獲得が可能だということを証明したSlideStory。「誰でもできるグロースハック」を実践する、ナナメウエの開発ポリシーは、多くのアプリ開発者にとって参考になるはずだ。

取材・文/長瀬光弘(東京ピストル


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