3月に入っても道内は厳しい寒さが続く。そんな時はやっぱり温泉。といっても、今回の主役は人間ではなく、おサルさん。さあ、「サルの温泉物語」のはじまり、はじまり――。

 ちらつく雪の下、気持ちよさそうにお湯につかるサル。映像や写真でその姿を見るたび不思議に思っていた。バスタオルで体を拭いたりドライヤーで毛を乾かしたりしないのに、なぜ彼らは湯冷めしないのか。長年の疑問を携え、サルの湯あみで有名な函館・湯の川温泉にひとっ飛びした。

 サルたちは温泉街の一角にある函館市熱帯植物園にいる。動物園ではなく、なぜか植物園。温泉熱を利用した温室で熱帯の植物を育てようと、1970年に開業。子どもも楽しめる施設にしたいと翌71年、本州からニホンザルを20匹連れてきて開いたのが「サル山」だ。10畳ほどのプールを造り、園内にある泉源から湯を引いてみたところ、いつしか一匹、また一匹と入り始めたらしい。