僕は新興国株式に引き続き弱気です。

トルコをはじめとする一部の新興国の中央銀行が通貨防衛のための利上げをしたのが功を奏して、危機は去ったという意見もありますが、僕はそう思いません。

その理由は先週発表された米国の雇用統計が良かったことで、米国連邦準備制度理事会(FRB)のテーパーリングが今後も粛々と進んでゆくことが確実になったからです。下はフェドファンズ・フューチャーズのチャートですが、2015年以降は、いよいよFFレートも上がりはじめる事を市場は織り込み始めています。

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加えて先週の欧州中央銀行(ECB)の政策金利会合では追加的な緩和は発表されず、ドラギ総裁は欧州経済の底打ちに自信を深めている様子でした。

アメリカ、EUがもうジャブジャブの緩和政策を取らないのであれば、以前のように「行き場の無いダブついたおカネが、より高い成長をしている新興国へ向かう……」という論法は、もう意味を成しません。

なぜなら先進国経済は十分成長しているし、わざわざリスク取ってまで新興国へおカネを持って行く必要は無いからです。

実際、新興国の債券や株式市場からは、おカネが流出しています。

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このトレンドは、今後、加速すると思います。

投資家は新興国の持つリスクに対して、以前ほど寛容ではなくなっています。その一例として新興国のソブリン債の利回りはじり高しています。

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また、現地通貨建てとドル建て債の利回りスプレッドは拡大しています。

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これは投資家が新興国通貨を嫌がっているからに他なりません。

「高利回りが魅力なはずの新興国債券ファンドが、なぜ嫌気されるの?」

皆さんはそう思うかもしれません。その理由は、折角、利回りが魅力でも、為替でしっかり損するからです。

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新興国の株式への投資は、悪いストラテジーでした。

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しかし未だ多くの懲りない投資家が、新興国の復活に最後の期待を持っています。この期待は、裏切られると思います。なぜならいままでBRICsブームをけん引してきた中国の経済、とりわけ輸出がどんどんスローダウンしているからです。

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上のグラフでは、2月の数字が落ち込んでいます。これは春節の影響なので、単月で考えると間違います。1・2月を合算して考えた方が良いでしょう。

しかし、その場合でも去年に比べて輸出がスローダウンしていることは明らかです。

国別で僕が一番リスクを感じるのは、次の順です:

1.トルコ
2.南ア
3.ブラジル
4.インド
5.ロシア

中国は今回の新興国の通貨安、株安の原因を作っている国です。ただファンダメンタルズ(経済の基礎的要件)では上にあげた国々のほうが遥かに悪いです。

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