チーム初となるトップリーグとの2冠を達成し、喜ぶパナソニックのフィフティーン=国立競技場で
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◇ラグビー日本選手権<決勝>
パナソニック、初の2冠−。ラグビーの第51回日本選手権は9日、現在の東京・国立競技場では最後となる決勝が行われ、今季トップリーグを制したパナソニックが30−21で東芝を破り、三洋電機時代の2009年度以来4大会ぶりの優勝を果たした。パナソニックのシーズン2冠は三洋電機時代を通じ初めて。南半球のスーパーラグビー(ハイランダーズ=ニュージーランド)でプレーする日本代表SH田中史朗(29)が強気のアタックでチームを引っ張り、オーストラリア代表51キャップのSOベリック・バーンズ(27)が3PG3Gの15得点と逆転勝利に貢献した。
試合後の表彰式。選手たちがジャージー姿で各種トロフィーを受け取る急造ステージに、ジーンズ姿の小柄な若者が現れた。スタンドからは大歓声。童顔に口ひげ、ダウンベストを着込んだ男は、数分前までピッチの上で躍動していたパナソニックSH田中史朗だった。
普段着姿にはわけがあった。スーパーラグビーのハイランダーズでプレーする田中は、この試合のため緊急来日。決勝を戦い終えると、当日夜の便でニュージーランドへ戻るため、試合終了と同時にロッカールームへ。着替えて表彰式に顔を出すと、すぐにピッチを去った。成田へ向かう車に乗り込みながら手短にコメントした。「この試合のために帰ってきたかいがありました。国立競技場は最高でした!」
決勝前の練習に参加したのは2回だけ。それでも存在感は揺るがなかった。東芝の激しさに後手を踏んだ前半も、闘志を前面に出してチームを鼓舞。相手の反則にはすかさず速攻に出てリズムをつくった。田中との絶妙の呼吸で3トライをアシストしたSOバーンズも「フミの負けず嫌いには感心するよ」と脱帽だ。
チームには規律の高さが貫かれている。反則は東芝16に対してわずか3。「反則でトライを防ぐ発想はウチにはない。取られたら相手が上。話し合って修正して、次に取り返す」。この試合でもチーム最初のトライを決めたエース山田はサラリと言う。「(拠点の)群馬県太田市はいなかで遊ぶ所もないから、いつもチームの仲間と一緒なのがアドバンテージかな」とバーンズ。上州の空っ風の中で育んだ熱い絆が、最後の国立競技場で栄冠をつかんだ。 (大友信彦)
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