23日(木)に召集された緊急理事会で、結末への青写真は概ね固まった模様。業界が分裂するかのような先走った論調の記事も散見されるが、そんな話しではもともとない。
※新団体設立の意向=不正経理疑惑で理事ら-統括組織分裂の可能性・-ボクシング(6月23日/時事ドットコム)
※日本ボクシング分裂の可能性も 新団体設立へ代行が辞意(6月24日/共同)
※日本ボクシングコミッションが分裂の危機!(6月25日/リアルライブ)
安河内前事務局長と斎藤専務理事の2人を更迭するか、さもなくばJPBA(日本プロボクシング協会)が結束して新しいコミッションを創設する。一貫して我関せずを通し続ける林コミッショナーに、「これでもまだ踏ん切りが着きませんか?。」と、業界の総意を示した。
JBC(日本ボクシングコミッション)の設立経緯をご存知ない方には、いまいちピンと来ないかも知れない。あるいは、JBCという組織,日本におけるプロスポーツのコミッションを、中立公正かつ厳正な統括機関なのだと誤解しておられる方々にも、状況が正確に伝わりにくいだろう。
業界団体が統括機関の汚職・醜聞に腹を立てて、クーデターを企てた訳ではないのである。
元々JBCは、力関係で言えばJPBAの下であり、業界内の秩序や既得権益に絡む重要な懸案などについて、コミッションが独断で物事を決定することは有り得ない。JPBA(主流派・体制派)が実際の舵取りを行い、JBCは追認するのみ。
簡単に構造を説明するなら、相撲協会から、理事会(理事長=コミッショナーを含む)・審判部・相撲競技監察委員会・相撲協会診療所・生活指導部などをまとめて独立させ、試合の管理運営や力士の資格審査と、ドーピングも含めた健康管理などを協会とは別組織にして行っているだけ。
なんでそんな面倒なことをするのか?。
それがボクシングの国際的な常識だからである。
業界団体がチャンピオンシップ(本場所)に始まるすべての興行を手掛け、審判から試合の運営まで何もかも取り仕切ったらどういうことになるか。
「八百長やり放題でしょう。」
プロモーターと業界OBたち(現場組み)の強大な影響力(不正・不当な圧力)を、いかにして試合の運営から排除するか。審判の独立性と公平性をどうやって担保し切るのか。八百長だけではなく、様々な不正行為と日々戦うスポーツを統括する機関の永遠のテーマであり、これは何もボクシングに限った話しではない。
純然たる西欧型スポーツには分類出来ない(してはいけない?)相撲ではあるが、現在に至るまで連綿と続く相撲協会の組織形態を、海外のスポーツ記者や選手,関係者たちがつまびらかに知ったら、口を揃えてこう言うだろう。
「八百長やるに決まってるじゃん。」
西欧型スポーツの代表選手の1つでもあるボクシングでは、国際的な常識と約束に従い、「1国・1コミッション制度」を今から約半世紀ちょっと前に採用し、現場組み(協会)と背広組み(コミッション)とに分けて、審判も含めた試合運営の公平性と中立性を、建前として維持している。
建前であるから、本当に重要な取り決めは、現場組み(協会)が決める。背広組みの頭領(コミッショナー)は、現場組み(協会)の言いなりになる傀儡でなければならない。
この期に及んで、公の場に出て説明1つしようとしない林コミッショナーは、「日本型コミッショナーの鑑」と言うべきで、現場組み(協会)の意向が、完全に、明確に、最終的に1本化されるまでは、具体的な判断・決定は絶対に行わず、流れに任せて様子を見る。
「そこまで言うこと聞かないなら、お前らもういいわ。新しいコミッション作るだけだから。」
カネに女とやりたい放題だった、人望薄い愚かな事務局長のクビをすげかえて、後任を立てれば済む筈が、専務理事と審判部門の代表格約1名がやりたい放題のお仲間で、血相変えて窮地の事務局長を救おうと、表に裏に立ち回ったから、話しがこじれてしまった。
主流派から完全に外れて久しい具志堅会長の、いささか的外れなところもある見解(反主流派・傍流の辛さも滲み出ている)を読めばわかる通り、協会側もけっして一枚岩ではないし、対応を誤れば本当の分裂(協会内部の権力闘争に引火)にもなりかねない。
※具志堅、JBC内紛騒動に「意思疎通もっと」 (1/2ページ)(6月25日/サンケイスポーツ)
林コミッショナーとしては、協会の総意としての結論が固まらない限り、安易に安河内・斎藤のクビを切る訳にも行かなかった。
23日の理事会には、遂に本田明彦帝拳ジム会長が姿を見せた。業界内に隠然たる影響力を持ち、その気になれば「影のコミッショナー」的な動きも容易に取れるだけの実力者。
何しろ先代の本田明会長(実の父)は、亡くなるまで「本田天皇」と呼ばれていた。業界内に巣食う「帝拳(支配に対する)アレルギー」も根強く、それ故に二代目は、「また帝拳が・・・」と言われることを嫌い、コミッションの重要な役職には就こうとしないできた。
※JBCの役員名簿と組織図(JBC公式サイト)
マニアたちからは、「出て来るのが遅過ぎるよ。」と非難されているようだが、実際に本田会長は理事でも何でもないのだから、役員会に出席しないのが当然で、最終段階にならなければ、具体的に動けなくても仕方がない。
協会の出した結論は、予想を遥かに超えて強行なものとなったが、それだけ外部から招いた理事たちの決意(現行体制維持なら二度と協力はしない)が硬いのだろう。安河内・斎藤ツー・トップの抵抗が激しかったことも確かだけれど・・・。
内々に2人を呼んで、「これ以上業界内部の恥を晒す訳にはいかない。ここは潔くお退きなさい。」と説得出来ない林コミッショナーもだらしがなさ過ぎる。
協会側は、本気で新コミッションの設立を強行するつもりはないと思う。安河内派を引き下がらせる為の脅しと見るべきだ。
コミッションの運営資金のほとんどは、管理コストの名目で興行の上がりから徴収する上納金。協会が一致結束して新しいコミッションを作れば、現コミッションには今後一切上がりが入らない。水道の元栓を締めてしまう。
世界王座認定機関(WBAとWBC)は、黙っていてもプロモーターの側(協会)に付く。
新コミッションの設立と同時に、WBAとWBCは現コミッションの登録を取り消す筈だ。審判たちも同様だろう。協会側についていかざるを得ない。安河内・斎藤体制に辟易としている職員の大多数は、喜んで新コミッションへと移る。
沈み行く船と一緒に海中に没しようとする者が、いったいどのくらい居るのだろう?。
問題になるのは、現コミッションが保有する資産(特に現金)と、公益法人の認可・取り消し。現有資産につていは裁判で争う事態になるかも知れないし、公益法人認可に関しては、新制度への対応に合わせて、文科省と相談しながらということになるのだろうが、業界内を仕切る現場組みが見捨てた組織を、政治家と役人がバックアップ出来る筈もない。
暫くの間は混乱するかも知れないが、新コミッションの体制確立には、さほど時間は要しないと考えるのが妥当だ。
具志堅会長の心配(既に決まった興行や交渉中の国際試合は大丈夫?)も尤もだが、九分九厘杞憂に終わる。
最悪の展開は、協会内部に現コミッションを支持するグループが多数いて、現コミッションと行動を共にするというケース。
公益法人認可を受けている現コミッションを、安河内・斎藤のツー・トップもろとも担ぎ、反安河内派と袂を分かって、新しい協会を設立する。
もしもそういう事態になれば、まさしく「分裂騒動」ということになるし、安河内派もそれを狙った切り崩しをかけていたのは間違いないが、23日の理事会では、一部に異論はあったものの、5つある支部の代表者全員が、新コミッションの設立に同意したとのこと。
本田会長がお出ましになったのは、最終的な意思決定の場であると同時に、反対分子を押さえ込む為である。
反対分子も考えた筈だ。ここで叛旗を翻したところで、余程大きなスポンサーが付かない限り、抗戦を続けることは不可能。かつての日本IBFの二の舞だけは避けたい。長い目で見れば、不承不承でも体制派に付いて行くしかない。
林コミッショナーが、安河内前事務局長の後任に内定した(?)森田健氏(元審判で現理事)の辞表を取りあえず受け取らなかったのも、現場組みの動向をしっかり見定めたかったからだと思う。
※森田氏、辞表提出できず=「会えない」とコミッショナー-JBC(6月24日/時事ドットコム)
大橋会長ら数名の代表者が、協会の総意(安河内体制維持なら新コミッションの設立)を林コミッショナーに伝えた際、「(安河内・斎藤ツー・トップの)追放は難しい。」と答えたとの伝聞もあり、安河内派の徹底した強硬姿勢の裏づけ(背後にどういう力が動いているのか?)も含めて、未だに予断を許さないとの見方もある。
「林コミッショナーは、安河内と斎藤に何か弱みを握られてるんだろう。」
騒動が公になって以来、記者たちだけでなく、マニアたちの間でもそういう噂が立っていた。いかに傀儡とは言え、余りにも腰が重過ぎたからだが、協会の最後通牒に対して、いかなる態度を表明するつもりなのか。
そして、再三槍玉に挙がっていた調査委員会の最終報告は、明日(28日)出されるらしい。
※JBC不正経費問題、安河内氏処遇28日に最終判断(6月24日/スポーツ報知)
不正経理の実態がどこまで明るみになるのかは甚だ心許ない状況で、安河内・斎藤ツー・トップにすべての責任を押し付けて、トカゲの尻尾切りで一件落着との雰囲気も濃厚だが、ここまでこじれてしまうと、トカゲの尻尾切りでもやらないよりはマシ,という気もする。
安河内前事務局長は、騒動の発端となった怪文書について、被害届(名誉毀損)を練馬署に提出したとのこと。女の問題はともかく、カネの方は徹頭徹尾潔白を主張するつもりのようだ。
※JBC前事務局長 名誉棄損で被害届提(6月23日/スポーツニッポン)
彼にだって家族や友人は居る。JBCの職員になったばかりの頃は、純粋にボクシングの為に頑張っていたのかも知れない。多分そうなのだろう。だがしかし、一連の騒動を経た今、既成事実として認定されたに等しい、愛人に関する職権乱用と日常的なパワハラを否定することが可能なのか?。
週刊新潮に掲載された、問題の写真をご覧になった方も多いと思う。
「安河内氏に向けられた一連の疑惑と職員による告発は、現場で働いている我々の総意。これ以上許容し続けることは出来ない。今でもボクシングを愛していると言うなら、自ら身を引くべき。」
浦谷信彰審判(東京試合役員会会長)の言葉を、大多数のボクシング・ファンは支持する筈だ。
警察が何処まで本腰を入れて捜査するのかはわからないが、仮に怪文書の送り主が判明して裁判になれば、苛められた職員たちが複数証人として出廷し、日頃の仕事ぶりについて、つまびらかに語ることになる。
不正経理の方は、立件されない確たる自信があるように見受けるが、裁判でクロだと立証されない限り、カネに関する疑惑は法的には無罪。
「警察がいくら調べたところで、証拠なんて出てきやしない(処分は終わってる?)。」
だとしても、事ここに立ち至って、まだボクシング界に残って仕事が出来ると考え得る図太さに、大半の関係者とファンは驚き呆れているのだ。
その根拠は、一体何処にあるのかと・・・。
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■関連サイト及び記事
<1>”新JBC”設立の経緯から見えてきた疑問点とは(6月25日/気まぐれ通信)
<2>速報!!! ボクシング業界の決断は、新JBCの設立だった(6月23日/気まぐれ通信)
<3>ボクシングの”場外乱闘”は、今日が剣が峰になるのか(6月23日/気まぐれ通信)
<4>JBC違法経理告発 JBC分裂も 協会「新団体設立」支持(6月24日/毎日.jp)
<5>JBC分裂…内部問題収束せず、新団体設立へ(6月24日/スポーツニッポン)
<6>第2コミッション設立へ 協会が理事会で決議(6月24日/Box-on)
<7>JBC分裂!安河内前事務局長の復職に反発 (1/2ページ)(6月24日/サンケイスポーツ)
<8>JBC不正経費騒動で人事抗争続き分裂も(6月24日/ニッカンスポーツ)
<9>JBC、24日にも新団体発足…前事務局長不正で内部分裂(6月24日/スポーツ報知)
<10>不正疑惑問題でJBCに代わる新団体設立へ(6月24日/デイリースポーツ)
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23日に報じられた、「厚労省のお役人が偽名でレフェリー」の一件は、時期が時期だけに「またか」という気もするが、要するに役所にレフェリーのアルバイトがバレるのが怖くて、偽名を使ってましたというだけの話し。
マスコミの取材に対して、「審判員は試合できちんと働いてくれればいいので、職業などは把握していない」と説明しちゃった森田健氏にも困ったものだが、長年後楽園ホールに通う筋金入りのファンなら、事も無げに言い切っちゃうんじゃないだろうか。
「関係者に知り合いがいたんだよ。元々ジムに通ってたとかさ。だったら、そのぐらいの便宜は図ってくれるでしょう。」
くだんのお役人、ボクシングが好きだというのはよくわかる。だったら、カネを受け取らなければよかっただけのこと。正真正銘、無給のボランティアで頑張ってるトレーナーさんも沢山いるんだから。
資格審査云々以前に、「本人確認ぐらいしろよ」ってことなのだが・・・。
※厚労省職員:偽名でレフェリー14年 プロボクシングで(6月23日/毎日.jp)