三菱東京UFJ銀行員に
4億円詐取された79歳資産家女性
【全文公開】
半沢直樹もビックリ
甘すぎる三菱のチェック体制
中村さんは今年7月に知人に相談し、初めて彼らに騙されていたことを知る。
「Sが電話してきたので、きつく問い質すと、Sが初めて言い訳じみたことを言いだしました。でもすぐ話を変えて『海釣りに行きませんか?』と誘ってきた。私は足が不自由なのに、なぜ船に乗せようとするのか。怖くなって、電話を切りました」(同前)
以後、中村さんは彼らの連絡を拒否し続けている。
「今思えば、ずっと騙されていた。一番憎いのは、(最初の担当者の)Y。Yを信頼していたのでKとSにも会いました。一番信頼していたのに……」(同前)
本誌はYとKに直接取材を試みたが、支店長と上司が出てきて「広報を通せ」と取材拒否。その直後、なぜか同行新橋支店幹部は中村さんに電話をし、「今からそちらに行くので話をしたい」と、証拠隠滅ともとれる言葉を発している。
三菱東京UFJは行内調査に着手した。
「Yは正直に話しはじめましたが、Kは開き直り、弁護士の同席を求めている。彼らが利益を得ていたら大問題です」(関係者)
本誌が一部入手したスピーシーの紹介料リストにはSの名前が書かれている。Sには、4300万円余りの紹介料が出ている。YやKにも巨額の金が渡っていた可能性は高い。
しかも、彼らの餌食になったのは中村さんだけではないのだ。
「Kは名古屋に勤務していた時の顧客だった70代後半の女性にもスピーシーを勧め、7000万円を投資させている。Kが東京に戻った後は、後輩の行員を担当にさせ、うまく丸め込んでいる」(事情を知る人物)
同業の銀行員が驚くのは、Kが巨額の振り込みを続けて実行できたことだ。
「不正防止のため、高額の振り込みを実行する時は、担当者に加え、役席者が伝票に検印する。支店では副支店長がお金の出入りを毎日見ます。高額預金者が突然振り込みをすれば非常に目立つ。Kがよほどうまく理由を作ったのか、三菱東京UFJのチェック体制が甘いのか」
現在、中村さんは刑事告訴の準備を進めている。担当の桃谷一秀弁護士が語る。
「銀行員が根拠無く『絶対に大丈夫』と投資を勧めたり、勝手に現金を持ち出せば、詐欺罪が成立する可能性がある。警察と銀行が高齢者を詐欺被害から守ろうとしている時に、当の銀行員が預金者から巨額のお金を引き出している。
被害者は高齢者で、銀行員を信頼し、預金の引き出しを委ねた末にほぼ全財産を失った。民事上は、過失でも不法行為に基づく損害賠償責任が発生する。使用者責任のある銀行に対する返金請求を検討したい」
一方、三菱東京UFJ銀行は「本件は調査中につき、回答は差し控えさせていただきます」(広報部)と回答するばかり。
当の行員たちが調査に協力しない以上、一刻も早く捜査当局による強制的な全容解明が望まれる。
被害女性が11月27日、東京地裁に提訴をおこないました。
詳細は、週刊文春12月5日号「本誌スクープ 三菱東京UFJ4億円詐取銀行員を被害女性が提訴へ」に掲載されています。