特集 週刊文春 掲載記事
告発スクープ

三菱東京UFJ銀行員に
4億円詐取された79歳資産家女性
【全文公開】

半沢直樹もビックリ

銀行が強引な営業を行い、預金者を食いものにしてきたのはバブル華やかなりし頃。だが、公的資金で救済されたメガバンクは、全く反省していなかった。三菱東京UFJの若手行員たちは高額預金者のお年寄りを騙し、総額4億円ものカネを毟り取っていたのである。

 東京都港区在住の中村雪子さん(79歳=仮名)は、5年前に夫が亡くなり、多額の遺産を相続した。子供がいなかったため、マンションを購入して生活。遺産の多くは、三菱東京UFJ銀行浜松町支店(現在は新橋支店に統合)に預けた。

「安全な運用を考えて、投資信託を購入しようかと支店に相談しました。『70歳以上の高齢者は1日では契約できない』と言われましたが、Yという若い男性行員が『大丈夫ですよ』と声を掛けてきました。そのYが私の担当になり、月に何度も色々なパンフレットを家に持って来て投資を勧めてきました。若くて熱心だったので、次第に信頼するようになりました」(中村さん)

 中村さんは2011年1月に投資を開始。投資金額は3億円を超えたが、約1年後、元本ベースで8000万円近くもの損失が出てしまった。中村さんはYに依頼し、より安全な投資に切り替えてもらった。

 だが本当の悪夢はここからはじまった。

「その直後、Yが『損を取り戻しましょう』と言って、男性2人を連れて来ました。1人はYの同僚のK。もう1人はKの幼馴染で、ライフコンサルタントを名乗るSでした」(同前)

三菱東京UFJ新橋支店勤務のK(左)
Kの友人のS(右)

 担当者Yと、Yが連れてきた行員Kは法政大学の同窓生。KとコンサルタントSは、福島県白河市で中学校まで同級生。3名は当時30歳だった。

 Yは昨年結婚し、現在は三菱東京UFJ海老名支店勤務。Kは現在も同行新橋支店に勤務している。Sは高校卒業後、上京して様々な職を経て、米国のマルチなどに手を染めていた。

 彼らは「1カ月3%の金利が付く」と言って、大阪のスピーシーという会社への投資を中村さんに勧めた。

「どんな会社なのか説明がなかったので、インターネットで検索したら、『詐欺』『マルチ』など悪評ばかり。でも彼らは『大丈夫、信じてください』と繰り返しました。銀行と関係の無い投資だと分かりましたが、Yは親身になってくれているように見えたし、Kは『お客様相談係』の名刺を持っていたので、損した人に特別に配慮してくれるのかと思いました。今思えば、彼らに完全に騙されていたのです」(同前)

 中村さんは12年1月、三菱の口座からスピーシーに2200万円を送金。さらに1週間後、三井住友銀行の口座から4000万円送金した。

「三井住友の送金は自分で行きました。YやKから、『高齢者が多額の送金を行なう時は、銀行は理由を聞いてくる。その時は、不動産を購入しますと言ってください』と教えられ、その通りに答えました」(同前)

 スピーシーは毎月5日に配当を出す契約になっていた。3月5日、最初の配当である193万円が振り込まれた。

「配当が出た時はうれしかった。3人にお礼をしなきゃと思って、東京タワー近くの『うかい』(豆腐料理の高級店)に招待しました。Yは転勤先の神奈川県から来てくれました」(同前)

 その後、中村さんはスピーシーへの投資を加速した。

 三菱東京UFJで安全投資にまわしていた分も解約し、配当2日後に1億4000万円、1週間後に1億6000万円を送金。2回の送金は、行員Kが中村さんの自宅に振込受付書を持参し、Kが支店に戻って手続きした。

 さらに2回目の配当の後、ゆうちょ銀行の口座から計1800万円を送金。中村さんの投資額は3カ月で3億8000万円に上った。

 しかし、配当は2回で止まった。スピーシーが破綻したからだ。

【次ページ】 現金4億円をすべて食いつくす

この記事の掲載号

2013年8月29日号
2013年8月29日号
総力特集 「やっかいな隣人」を黙らせる方法 韓国に“倍返し”だ!
2013年8月21日 発売 / 定価380円(税込)
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三菱東京UFJ銀行詐欺

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