安達裕哉

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ドワンゴが入社試験を有料にしたのは合理的だったか

投稿日: 2014年03月09日 16時39分

ニコニコ動画運営の「ドワンゴ」が新卒が入社試験を受ける際に、「試験料」を徴収することに決めたところ、厚生労働省から行政指導が入り、中止を要請された。

試験料は2525(ニコニコ)円。得られたお金は寄付をするという。と言っても地方の学生からは徴収せず、負担するのは東京都と神奈川、埼玉、千葉の3県在住の学生のみ。

「冷やかしでとりあえずエントリー」を防ぐためのようだが、導入に際しては賛否両論であった。

賛成派は、「本気の人だけ就職試験を受ける」であるとか、「企業の負担が減って、一人一人をきちんと見られるようになる」と言った意見が多い。反対派は、「学生の負担が増える」であるとか、「傲慢だ」と言った意見もある。

難しい問題である。一体どう考えればよいのだろう。



まず前提として、「採用には手間とお金がかかる」ということだ。中小企業でも大企業でも、採用は「人を集めて」「書類を見て」「面接をして」と、極めてたくさんの業務をこなさなくてはならない。まして、新卒採用のように一時期に負荷が集中するような仕事は本来、望ましくない仕事である。

したがって、担当者は大量の入社希望の新卒を「さばく」ことで手が一杯である。

経験的にはペーパーテストの1次選考、2次の15分程度の人事部面接で8割の受験者を落とす。それは機械的なふるい分けの作業そのものだ。

当たり前だが、採用の面談をする担当者が一日にきちんと1時間くらいかけて面接できるのはせいぜい5人くらいだろう。

よって、「人気企業」「大手企業」の担当者の本音は「スペックの高い学生しか受験してほしくない」である。



このような現状を見ると、人事にとっては「受験者の数を少なくして、質を高めたい」が最も重要な課題である。

だから、「学歴」であるとか、「サークル活動」、「試験の点数」といったような形式的に審査が可能なものでまずふるい落とすことが合理的だった。

「学歴」と「学生の質」にある程度の相関があるだろうというのが、多くの人気企業の共通した考え方だったからである。

しかし、ドワンゴは敢えてそのようなことをしなかった。

それは、「学歴」と「学生の質」にそれ程相関がないのではないか、あるいは純粋に学歴によるフィルターを「クールではない」と考える企業が増えてきたことに通じる。

その代案として、「受験するのにカネを出すかどうか」ということによって学歴のごとくフィルターをかけようと言っているのだ。

考えてみていただきたい、2525円出す学生と、それすら出さない学生との質の差を。
「学歴」より合理的だろうか?



いろいろな意見があるとは思うが、感覚的にフィルターの機能としては不十分だろう。おそらく1人3万円以上取らないと、フィルターの機能としては弱いと思う。2525円なら、ポケットマネー程度だ。1日程度のアルバイトで十分稼げる。

3万円を超えると人によっては親に頼るようになり、親から「そんな会社やめとけ」と言われて思いとどまる、と言った具合だと思う。

だから、本来の目的を果たすために様々な会社がある程度の金額の「受験料フィルター」を導入すると、学生の負担はそれなりに増えるに違いない。

これは良いことなのか、という倫理的なもの以前に、

・親の経済力と、子供の学歴に相関がある(文科省調査
・学歴がある学生がより人気の企業に就職する
・よって、経済力のある学生が人気企業に就職する可能性が高い

という現行の学歴によるフィルターと何が違うのか、ということになり、「結局同じじゃないか」というところに落ち着きそうである。



さて、他に良い「フィルター」は無いのだろうか。「学歴」でもなく「カネ」でもないフィルターが。ざっと挙げてみる。

1.Facebookの友達の数(500名以上など)

2.「ブログ」か何かを書かせて、一定期間内でのアクセス数で評価

3.Evernoteがやっているように、プログラミングのweb試験を行う(課題を解いた人が応募できる)

4.資格

考えればいくらでも出てきそうだが、所詮は「フィルター」なので、「成功した採用だったか」は働きぶりを見ないとわからない。

その程度のものであると考えれば「受験料」も特に目くじらを立てるほどのものではないかもしれない。


(2013年12月3日 Books&Apps に加筆・修正)

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