英国では長い間、フェイスブックは「ソーシャルネットワーク」代名詞ともいえる存在だった。26歳の私にとっても、2006年の大学入学以来、フェイスブックは常にソーシャルライフの中心にあった。婚約者と出会ったのは同じ趣味を持った人たちが話題を共有するフェイスブックのファンページだったし、友人や日本留学中に知り合った人たち、海外で暮らす家族と近況を報告し合うためには、今も絶対に欠かせないツールだ。
しかし、ここ最近、英国ではユーザー数の減少などを根拠に、「フェイスブックの死」を予測する報道が話題を呼んだ。フェイスブックが、メッセージサービスの米ワッツアップの買収に190億ドル(約1兆9000億円)もの巨費を投じるというニュースは、こうしたネガティブな報道が増えていたときに飛び込んできた。
「フェイスブックの死」は、本当に近づいているのだろうか。
フェイスブックの盛衰は伝染病と似ている?
フェイスブックの成長率が鈍化したり、利用者数が減少したりする状況を予測する悲観的な見方は、フェイスブックの人気が高まった当初からあった。しかし、ここ数カ月、特に注目が高まっている。
象徴的だったのが今年1月、米プリンストン大学の研究者2人が発表したリポートが、大きな議論を呼び起こしたことだ。フェイスブックの普及過程を伝染病の拡散過程と比較した論文で、米マイスペースなどソーシャルネットワークの成長・衰退曲線は、腺ペストの拡散・収束曲線と非常に良く似ていると指摘。この軌道を基に予測すると、フェイスブックは2015〜17年までにピーク時の利用者数の約80%を失う可能性があると結論付けた。
このリポートは、各方面から批判された。サービスの人気が伝播していく模様を、実際の利用者数ではなくグーグルで検索されたキーワードの数を基に分析している点や話題性重視のアプローチなど、研究の信頼性が疑われた。しかし、少なくとも英国においては、フェイスブックの利用者数の伸びに終わりが訪れたことは、統計的にも明らかになっている。調査会社コムスコアによれば、昨年12月末時点の利用者数は約3100万人で、1年前から約150万人減少していた。
ただし、他のソーシャルメディアと比べると、フェイスブックの強さは依然として際立っているのも事実だ。10代を中心とした若者のフェイスブック離れが指摘されているが、その一方で、今も若者の多くがフェイスブックを利用し続けている。調査サイト「ソーシャルベーカーズ」によれば、英国ではフェイスブック利用者の25.6%が25〜34歳で、その次に多いのが22.3%を占める18〜24歳だ。
調査会社グローバル・ウェブ・インデックスによれば、全世界では、16〜19歳のソーシャルメディア利用者の48.5%がフェイスブックを利用しており、その数はソーシャルメディアとしてフェイスブックに次ぐ利用者を抱える米ユーチューブより67%も多い。グローバル・ウェブ・インデックスの広報担当者は、「フェイスブックは依然として圧倒的に優位な立場にあり、『フェイスブックの死』が近づいているという指摘は誇張されすぎている」と話す。