(2014年3月7日付 英フィナンシャル・タイムズ紙)
急拡大する米国の石油・ガス生産は、エネルギー自給を後押しする恵みとして描かれてきたが、ウクライナの危機はこれに異なる光を当てた。海外の同盟国を助ける戦略的な武器としての石油・ガスだ。
米国はロシアを抜いて世界最大のガス生産国となり、3月初旬には共和党の有力議員2人が、ロシアの燃料に対する同盟諸国の依存度を下げるのを手伝うために、米国は欧州向けの天然ガス輸出を促進すべきだと訴えた。
エネルギー生産拡大で目指すものは何か?
こうした状況はシェールロック層から抽出したエネルギーで米国は何を達成したいのかという議論を呼んでいる。ホワイトハウスと連邦議会は、シェールガスとシェールオイルが世界の安全保障を強化する手段なのか、それとも米国産業を育成したり、米国人にとって燃料価格を低く抑えたりするための手段なのかを決めなければならない。
これらの結果は相容れないものではないが、どれも結局、1つの疑問に縛られている。米国はエネルギーを輸出すべきなのか、それとも国内にとどめておくべきなのか、という問題だ。
現在は、石油輸出が事実上禁止されており、天然ガスは海外に販売できるものの、欧州連合(EU)を含め、米国と貿易協定を結んでいない国・地域への輸出は政府の承認が必要で、エネルギー業界によれば承認には極めて長い時間がかかるという。
元シェブロン幹部で、現在は戦略国際問題研究所(CSIS)の上級研究員を務めるエドワード・チョウ氏は、3月第2週までは輸出を巡る議論は国内問題を軸としていたが、ウクライナがこれを変えたと指摘する。
「これまで我々は主に米国の国内経済にとって良いことか否かという観点でガスや原油の輸出について論じてきた。ウクライナ情勢によって、これまでいわば背景に潜んでいた地政学、外交政策の側面が加わった」
共和党のジョン・ベイナー下院議長は、欧州向けの天然ガス輸出の承認を促進することは、「ロシアの侵攻に立ち向かう」1つの方法だと述べた。共和党の大統領候補になるかもしれないマルコ・ルビオ上院議員は、米国は「エネルギーを武器として使おうとするロシアの取り組みに同盟国が影響を受けにくくするために」、同盟国への天然ガス輸出をスピードアップすべきだと語った。