研究室の共通目標

「複雑な脳の形成を正確に制御する分子・細胞ルールの解明」

 

「研究テーマ総論」

発生学における最も根本的な質問は「どのようにして、たった一つの受精卵が分裂を繰り返すだけで、複雑な身体ができあがってくるのか?」というものです。発生過程を顕微鏡の下で常々観察するなか、その疑問は研究すればするほど深まってゆき、私たち発生学者の心を強くつかんで離しません。

 

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私たちの研究グループでは、脊椎動物の初期発生、特に神経系の発生制御の分子機構を研究の中心テーマとしています。脊椎動物の脳は、1000以上の種類の構成細胞が正確な位置に正確な数で発生し、しかもそれらの多くを占めるニューロンは他のニューロンと正確にネットワークを形成し、それが私たちの脳機能のもととなっています。

 

 

 

 

 

 

 

 


哺乳類をはじめとする高度に複雑な脳がどのように発生過程で非常に正確に制御されて形成されるのか?という疑問を軸に、その分子レベル・細胞レベル、そして組織レベルのルールを解明する研究を進めています。そのため、ラボ内外の強い共同研究により、分子生物学、細胞生物学、発生工学、幹細胞生物学、ライブイメージング、定量計測・画像解析、シミュレーション・数理モデル化などの先端的な技術を動員し、独創的な研究を進めています。

 

中心コンセプトとして、特に

(1)脳の発生場の位置情報の統合的な理解

(2)脳組織内のパターン形成における自己組織化のメカニズム

に興味を持った研究を、現在目指しています。

 

また、こうした研究の延長として、脊椎動物の脳のプロトタイプと多様性形成にも挑んでゆきたいと思っています。

 

私たちの研究室の中心テーマは、基礎科学的なアプローチで「複雑な脊椎動物の脳形成の原理」の理解を目指すものです。

 

一方で、その研究成果からは、ES細胞などからの試験管内分化誘導による特定の医学的な有用神経細胞(ドーパミン神経細胞など)の産生など、応用可能な基盤要素技術も生まれてきています。

 

 

「研究テーマ各論」

研究テーマの各論(最近の成果や進行中の研究テーマ)については、下記の項目で詳しく説明しますので、ご興味のある方はクリックください。(各論は生物系の大学生・院生向きに少し専門的な書き方になっていますので、ご了解ください。)

 

(1)脳の発生場の位置情報の統合的な理解

A)未分化多能性細胞から神経前駆細胞への分化制御機構

    B)脳の多様な領域化の分子基盤

    C)初期胚内の位置情報の詳細決定の分子基盤

 

(2)構成的発生生物学アプローチによる脳発生研究

    A)ES細胞を用いた試験管内での脳発生の再現

B)脳組織内のパターン形成における自己組織化のメカニズム

 

(3)発生生物学・幹細胞生物学の医学応用に関する基盤研究・開発

    パーキンソン病や網膜変性症の細胞治療の基盤技術

    創薬や病因研究のためのアッセイ系への応用など

 

錐体ニューロン