本当は昨日出そうかと思っていたんですが、あまりにも短かったので他が出てくるのを待っていました。ネイチャーに理研の小保方晴子リーダーらのSTAP細胞論文が載りましたが、その論文に疑惑が生じていることに関する海外メディアの反応についてです。
(一般人は
STAP論文捏造疑惑への海外の反応 小保方晴子が「女性だからか?」で)
STAP細胞、画像使い回し疑惑に世界も注目 海外はどう報じたか? | NewSphere(ニュースフィア) 更新日:2014年2月19日
STAP細胞の研究成果がネイチャーのオンライン版に発表された1週間後の1月29日、科学論文議論サイト『PubPeer』では、匿名ユーザーが、論文で使用された写真が不自然だと指摘した。米学術雑誌サイエンスが報じている。さらに2月13日にも同サイトで、STAP細胞から分化したとされる胎盤細胞の同じ写真が、何度も使い回されているとの投稿が寄せられた。
http://newsphere.jp/national/20140219-1/
1月29日にも話が出ていたんですね。ただ、本格的に火がついたのは2月13日です。私が写真がおかしいという話を知ったのも同じ2月13日で、2ちゃんねるの不正追及スレでした。だから、ネタ元が海外だったのかな?と今確認してみると、スレで最初にSTAP論文疑惑が提示されたのは2月12日の夜遅くですね。別ルートかも。
13日には日本で別論文の方にも飛び火。以下は、ウォール・ストリート・ジャーナルの記述だろうと思います。
日本では13日、2011年の米再生医療専門誌ティッシュエンジニアリングに掲載された小保方氏らの研究報告の画像が加工されたものである可能性がある、とネット上で疑いを提起された。
このせいで論文の共著者であるハーバード大学医学部のチャールズ・バカンティ教授に話が行き、「単なる手違いではないか」とウォール・ストリート・ジャーナルに答えたようです。
もう一つ載っていたのはちょっとわかりづらいですが、ネイチャーの記述っぽいです。肯定・否定両方載せています。
ある研究者は、「高度な実験環境で行われた研究は、他の研究所で再現することは難しい」として、追試がうまくいかないのは当然だとしている。また他の研究者は、「ノーベル賞級の発見にいちゃもんをつけるつもりはないが、慎重に検討を重ねるべきだ」小保方氏の研究結果は「非常に疑わしい」としている。
以上のようにあまり詳しいものではなく、しかも情報が少ないです。これだけじゃ短いということで、待っていたらウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)の記事が出てきてくれました。たまに海外の見方なのかな?と見ると、記者が日本人ということもあります。今回は外国人っぽいお名前ですので、「海外の反応」扱いとします。
2014年 2月 20日 12:06 JST 幹細胞研究成果の再現、科学者らが苦闘 By GAUTAM NAIK AND ALEXANDER MARTIN ウォール・ストリート・ジャーナル
http://jp.wsj.com/article/SB10001424052702304775004579393873565129530.html あまり海外と比べて日本は…としたくないのですが、こちらは良い記事でした。日本では今毎日新聞・朝日新聞あたりは頑張っているのですが、ちょっと内容的に物足りません。この2紙は不正疑惑前も結構書いていた印象なので、科学ネタは強い方なのかも。一方、読売新聞は不正疑惑が出てからは全然ですね。
(
小保方晴子報道で「リケジョ」を避けた新聞はどこ? 理由は?で最後にちょろっと書きましたが、読売新聞には理研理事長の息子さんがいるからかもしれません)
まあ、それは良いとしてWSJの内容です。日本の人なのに日本紙が報じていなかった関由行専任講師の話が載っていました。
関西学院大学理工学部生命科学科の関由行専任講師は、新方法の再現は単純だと考えていた。しかし、同氏はマウスの細胞でこれを実現することはできなかった。同氏は、さまざまな条件が完全に満たされた時だけうまくいくのかもしれない、と指摘。さらに、あるいは論文では触れられていない何らかのプロセスがあるのかもしれない、との見方を示した。
他にスクリプス研究所(米カリフォルニア州)の再生医療センターのディレクター、ジーン・ローリング博士も「ヒトの細胞で試したが、これまでのところうまくいかない」とのこと。
こういった追試報告の載っているウェブに関しては、日本でも報道があったと思います。ただ、さらっとした扱いでした。一方、WSJでは、"カリフォルニア大学の幹細胞研究者ポール・クレプラー博士は、これを再現しようとしているさまざまな研究所の努力を記録したブログ"と所属や名前などまでしっかり書いています。
さらに"少なくとも9研究所は再現が実現できなかったとしている。加えて、半ダースほどの一流の研究所はこれがうまくいかなかったことを非公式に同博士に伝えてきた"という話も載せていました。
(関連:
小保方晴子論文STAP細胞、追試で再現性取れず 世界各地で検証中)
日本人では若山照彦教授もこの後登場。関由行専任講師と異なり、こちらは日本のメディアでも出ています。というか、日本の報道では若山教授しか出ていないといった勢いです。
にも関わらず、「あれ、そんなこと言っていたっけ?」という話がWSJに載っていました。"若山教授は、まだ理研にいた時に一度再現に成功したが、山梨大に移ってからはできていないとしている"という記述です。じゃあ、雲行き怪しいんじゃないの?と思わせる発言なのですが、実際の若山教授は今目一杯論文の正当性を主張している真っ最中です。
この若山教授でもう一つ気になったのは、「再現を成功させるために学ばなければならないノウハウがある。言葉で表現するのが難しい技術だが、経験を積んで獲得する必要がある」という発言。これも胡散臭く思われそうな言い方。というか、このWSJの発言のチョイスからすると、「かなり怪しい」と暗に言いたいのでしょう。
ここでは反応を紹介するだけなので広げませんが、ネイチャーが最初に調査したときに、理研や小保方晴子さんがきちんとした対応をしていなかったことが、海外での信用度にかなり響いた感じがします。
WSJでは、そのネイチャーの件にも触れていました。こちらも日本の報道より詳しく、そうだったのか!というのがありました。
ネイチャーも失敗した。同誌には、このような研究結果を実証する大量のゲノムデータを誰でもアクセスできるサイトに置くことを要求するという政策がある。これによって他の科学者たちは研究結果の有効性を測ることができる。しかし、今回の二つの論文についてのゲノム情報はサイトに載せられていなかった。ネイチャーの広報担当者は「管理上のミスだ」とし、「生データが早期に公表できるようにする」と述べた。
データ要求の件は
早稲田大も小保方晴子の博士論文を調査 広報は「影響しない」と先手で使った記事にもありました。しかし、ネイチャーが本来用意しておくデータをもらっていなかったという話は出ていませんでした。
もともと必要だったデータという情報がありませんでしたので、私はネイチャーが通常以上のデータを論文著者に要求している、つまりかなり疑っているという可能性を考えていました。でも、ネイチャー側のミスで単に遅れて要求という話でしたら、そうとは限りませんね。
(2/25追記:ここらへんについてメールをいただきました。私の書き方が悪かったんだろうと思いますが、「データが届いているのにネイチャーがアップしなかった」と書いたつもりはありませんでした。メールくださった方の書き方に従えば、「投稿者はデータ提出を怠り、ネイチャーは投稿者に提出させることを怠った」という理解です。
私がネイチャーも悪いと感じたのは、不備のある状態でも論文掲載を優先したのでは?という疑いのためです。本当はまだ載せてはいけない論文だったんじゃないでしょうか?)
うーん、それにしても
早稲田大も小保方晴子の博士論文を調査 広報は「影響しない」と先手で書いたように、ネイチャーも悪いですよ。まず、全く無関係と主張されるような図の差し替えもしくは削除が、雑誌掲載後に必要となっていること自体がチェック不足だったことを示しています。
さらに上記のデータ提出の件。「管理上のミスだ」と言っているそうですけど、私はインパクトある論文を早く載せたくてわざと手抜きしたんじゃないかと疑っています。
ローリング博士という方が、STAP細胞論文はずさんであり、疑わざるを得ないといった厳しいことを言っていました。「このことはある種のずさんさを示唆しており、なぜ論文のすべての点を信じるべきなのかと尋ねたい」という発言です。
たぶんこれもネイチャーで載せていたものなのですが、今回はネイチャー自身のずさんさも目立ちました。「炎上商法」とも揶揄されていたように、ネイチャーのインパクト優先の編集方針にも反省と改善が必要でしょう。
追加
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STAP論文捏造疑惑への海外の反応 小保方晴子が「女性だからか?」 ■
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ネイチャーも小保方晴子STAP論文の調査 「単純な取り違え」と擁護も ■
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