2012-11-19 ケインズはこう言った
■[経済学ノート]ケインズはこう言った
『ケインズはこう言った』(高橋伸彰著、NHK新書、2012年8月刊)を読みました。著者は1953年生まれ、立命館大学教授。
ケインズならば、迷走日本を見てどのような処方箋、解決策を提言するだろうか。
著者は、「現在の喫緊の課題は、デフレ脱却でも財政再建でもない。何よりも雇用の不安を停めることである」。ケインズもそういうに違いないという。
ケインズは体系的な研究書よりむしろ時評を好んだ。私は理論的な研究書とされる『一般理論』も、ケインズにとっては時評だったと考えている。ケインズの経済学では、その時々における緊要な経済問題は何かという洞察が先に現れ、理論は具体的な政策に説得力を持たせる道具として後から登場する。
1929年に世界大恐慌に陥ってからは、働きたくても働く機会を得られない「非自発的失業」が増加した。ケインズが『一般理論』で明らかにした非自発的失業の原因は経済全体の需要不足である。そのことに専門家に気付いてもらうために彼は『一般理論』を著した。その意味で、ケインズの『一般理論』は理論的な専門書と呼ぶより、専門書の形式を装った時評と呼ぶのがふさわしい。
総需要の不足によって非自発的失業が存在するときは、中央銀行が貨幣供給量を増加して利子率を引き下げれば、民間企業投資が増えて需要が増え、生産量が増えて雇用量も増える、・・テキストには書かれている。しかし、金融政策によって貨幣供給量が増やしても、貨幣がタンス預金に廻れば利子率は低下しないし、仮に利子率が低下しても、企業家が弱気になれば新規の投資額は増えない。『一般理論』ではこのような可能性に言及しながら政策の効果が慎重に説かれている。
ケインズにとって、当時のイギリス経済が陥っていたデフレと失業の主因は高すぎる利子率にあった。・・利子率を下げられるなら、投資の減少を回避して、有効需要を維持し、失業率も下げることができる。つまりケインズは、利子率をゼロにまで引き下げれば、日自発的失業をはじめ総需要の不足が引き起こす大体の経済問題は解決できると考えていたのである。
あくまで当時のイギリスにあっては、利子率を引き下げれば企業家が投資を増やし、雇用も増えると説いた(その意味で時評だった)。しかし、
この見方を逆にすれば、利子率をゼロにまで下げても総需要が増えない場合には、・・・(ケインズの時代のイギリスのように)利子率を下げられないときと同じことが起こるというのが“書かれざる”ケインズのもう一つの予言である。
第1章で著者は「非自発的雇用」という概念を提起する。「非自発的雇用」とは著者の造語で、ワーキングプアや長時間残業のように、働いて得られる賃金よりも働くことに伴う苦痛のほうが大きいにも係らず、本人の意思に反して働かざるを得ない雇用者及び雇用状態をいう。
経済成長が問題を解決するという立場から、
日本を代表するケインジアンの吉川洋は、いまこそケインズとシュンペンターという二人の巨匠の経済学を統合して、持続的な需要の拡大を図るべきだと、彼は言う。
「病気を治せない医学になんの価値があろう。経済学も同じだ」。彼のいう「病気」とは、需要の不足による成長率の停滞に他ならない。たしかに、経済全体の需要を増やし、生産量を増やせば、雇用量も増える。機動力になる需要の導出を、国債の累増やゼロ金利で発動が制約されている財政政策や金融政策に依存せず、シュンペンターがいうイノベーシヨンで実現できるなら、日本経済は“失われた20年”のトンネルから抜け出ることができる。しかし、・・・非自発的失業とは異なり、非自発的雇用は総需要の不足よりも、労働力の買い叩き、雇用者を絞り取ることで利潤を獲得しようとする資本の論理にあるからだ。吉川のチャレンジが成功しても、解決されるのは非自発的失業に過ぎない。
「非自発的雇用」で国民の購買力が低下して、企業の生産した製品を消費できないならば、資本主義のサイクルが廻っていかなくなる。政府の経済政策も日銀の低金利政策も、資本主義のサイクルが廻らないときに、サイクルを回すようにする言わば“呼び水”なのだ。このサイクルが壊れているときには、”呼び水“をつぎ込んでも、つぎ込んでも、効果はない。それが日本経済の現況で、その意味で、日本経済が直面している危機はデフレでもなく、財政赤字でもなく、「非自発的雇用」である。(ケインズの)需要政策では、非自発的雇用を解決できないと説く。
ジョーン・ロビンソンはアメリカ経済学会の講演で、経済学が「第二の危機」に陥っていると語った。
『「第一の危機」とは、世界大恐慌後の大不況期に経済全体の雇用量がどのような要因によって決まるのを、当時の主流派が究明できなかったことによって生じた。この危機は、ケインズの『一般理論』で救われた。しかし・・・どんな需要もでも完全雇用に役立つのが望ましいという安易な成長主義がはびこると同時に、先進諸国において、貧困や格差が放置されていることを、「経済学の第二の危機」と呼んで憂慮した。さらに
(成長によって)絶対的貧困も増加するのです。・・・成長が(社会)の上層で進行するにつれて、ますます多くの仮定が社会の底辺に放り出されていきます。・・・「豊富の中の貧困」という言い古されたスローガンが新しい意味を帯びます』と言う。
第6章で、“迷走日本経済”への処方箋を記す。『私は非自発的雇用の解決には労働時間の大幅な短縮が必要だと考えている』つまり、ワークシェアリングである。
こうしたワークシェアリングは、経済成長にとってはマイナスだが、成長が無限に可能と考えること自体が誤りだというのだ。
ワークシェアリングで問題がすべて解決すると私には思えないが、非自発的でない雇用を提供する方策を講じない限り、経済は安定しないことは確か。安倍総裁の主張するように、日銀の大幅な金融緩和だけで経済は回復しないだろう。
経済のグローバル化に直面したとき、非正規雇用の増加で人件費を新興国並みにして、問題解決しようとした日本の政治家・経営者の姿勢が誤りの根本であった!
不況を克服する政策として採用された政策の背後にある思想は「新自由主義」と呼ばれることが多い。しかし、この「新自由主義」は新自由主義の元祖であるハイエクの思想とは似て非なるものだと、著者は言うが、この点についての詳細は割愛する。
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