動き続けよう。死の悲しみが癒えぬまま働く人へのアドバイス

2014.03.09 22:00

悲しみ


2014年1月17日、妹が急逝しました。享年46歳でした。私がその知らせを受けたのは、金曜日の午後遅く。その日の仕事を片付け、翌週締切の仕事に思いを巡らせている時でした。

私はすぐに思考を切り替え、ロボットのように淡々とシカゴ行きのフライトを予約し、ホテルを見つけ、まったく予想もしていなかった葬儀の準備を始めました。親族への電話、葬儀用の花の手配、遺体の送り先の指示などの電話をこなす間に、上司にメールで妹の死を報告しました。上司からはお悔やみの言葉とともに「必要なだけ休みを取っていい」と返信がありました。私はこんなに素晴らしい上司のもとで働いていることに、心の底から感謝しました。

私が勤める会社の規定では、肉親が死亡した場合、5日間の忌引きが認められます。多くの会社において3日間しか認められないこと、一部の会社では1日たりとも認められないことを考えると、私の会社は寛大なようです。ただ、このような場合に心の悲しみに対処する方策が決まっている会社はほとんどありません。積み上がった書類を片付けながら、何も知らずに「バケーションはどうだった?」なんて聞いてくる同僚に答えながら、押し寄せる悲しみに一体どうやって対処したらいいのでしょうか。

愛する家族を失ったばかりの人のために、9時から5時までの仕事を何とかこなしつつ、人生最悪の悲しみに対処するヒントをお伝えしたいと思います。


1. 自分にやさしく


人生で一度だけ、自分のことを優しい慈悲の心で包んであげるべき時期があるとすれば、それは今です。自分のために、必要なだけの時間をかけてあげてください。何に対しても動作が遅くなるのは仕方ありません。締切は絶対かもしれませんが、必ずしも自分ですべてをやる必要はありません。こんな時ぐらい、上司や親しい同僚に助けを求めましょう。少しずつ、仕事を分担してもらえばいいのです(もちろんお互いさまの精神を忘れずに。逆にほかの誰かが悲しみに暮れていたら、自分から助けを申し出てください)。

こういうときは、孤独を感じることも多いでしょう。でも本当のところ、いつだって私たちは孤独なのです。孤独でないときは、あえて誰かを自分の人生に招き入れているだけ。そう思ったとき、私はかつての上司がかけてくれた言葉を思い出しました。

「何もせずに手に入るものなんてない。でも、自分から求めればチャンスはやってくる。だから、求めることが大事」


2. とにかく動くこと


家族の死に直面した人は、塞ぎ込んだり、あきらめたりしがちです。死の悲しみというものは、私たちの歩みを止めてしまうほどに強力なのです。映画『ショーシャンクの空に』では、主役のアンディが「がんばって生きるか、がんばって死ぬか」(Get busy living, or get busy dying)と言っています。休む時間を取るのもいいことですが、暗い悲しみの中で立ち止まることは避けましょう。何はともあれ、動くことが重要なのです。

最初のうちは誰でも、1つ1つの行動をこなすだけで精いっぱいでしょう。「起きる」「仕事に行く」「帰る」「寝る」の繰り返し。それで構いません。とにかく、動き続けてください。自分以外のこと、悲しみ以外のことに集中し続けるのです。その集中が、仕事上の次のプロジェクトに向けられているなら、全力を投入して、場外ホームランを目指してください。悲しみの中で立ち尽くすことなく、自信と誇りを持って前に進めるようになります。

寿命は誰にでもやってきます。とにかく動き続けることで、ただ死を待つのではなく、この地球上にいる時間を有意義に過ごせます。動き続けることで気分や思考力が高まることは、生理学的にも証明されているのです。


3. 生きることで死者に敬意を表する


死、特に予期せぬ死は、今までいろいろなことを覆い隠していたフィルターを取り去ってしまいます。私たちは、今の立ち位置や向かっている未来を、鮮明に目の当たりにすることになるでしょう。以前は重要だと思っていた会議が、もう重要でないような気がしてしまいます。日常の仕事に忙殺されていると、人生の意味を失ったかのように感じてしまうかもしれません。映画の中のジャック・ニコルソンのように、「人生はあがいても変わらないぞ!」と、周囲の皆に向かって吐き捨てる自分の姿が思い浮かぶかもしれません。

変わりたいという衝動には、困難が伴います。仕事を辞めてずっとやりたかったことを始めるべきなのか? 給料が少ない仕事、ロクに休みも取れない生活、愛すべき家族、すべてを捨てて家を飛び出すべきだろうか?

そのように考えることは、決しておかしいことではありません。ただ、悲しみの淵にいるときは大きな人生の方向転換をしない方がいい、と多くの専門家が言っています。それに、あなたは素晴らしい贈り物をもらっていることに気付いていますか? 故人は、あなたに新しい視点をくれたのです。自分の立ち位置や、自分にとって大切なことを気づかせてくれた故人に感謝しましょう。人生の目標や目的の再評価は後からでもできます。目標に到達する道筋も、いずれわかる時が来るでしょう。

愛すべき家族を失った悲しみは、3日では癒えません。それに、3日で職場に戻っても、生産的な社員として機能するのは難しいはずです。必要なだけ時間をかけて、自分を労りながら、自分以外に集中して動き続けること。そして、家族の死を自分の人生や生き方を見直すきっかけとして捉えること。それが、悲しみの淵にいた私から言えるアドバイスです。


Grief at the Office: How to Deal with the Worst When You Still Have to Work|The Muse

Paolina Milana(原文/訳:堀込泰三)

  • 死ぬ瞬間―死とその過程について (中公文庫)
  • エリザベス キューブラー・ロス|中央公論新社
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