前日銀総裁の白川方明氏が8日、都内で講演した。2013年3月に退任するまで5年間の総裁時代を振り返り、金融政策は「大胆さと周到さのバランスが大事だ」と語った。後任の黒田東彦総裁が進める「大胆」な金融緩和策への直接の評価は避けたものの、将来的な金融不均衡などに目配りする「周到さ」も必要だと求めた格好だ。
退任後、白川前総裁が一般公開された国内での講演に姿を見せたのは初めて。日銀の金融政策は「安定的な金融環境を維持していくことが最大の仕事だ」と訴えた。失敗例として挙げたのが、08年のリーマン危機前の世界経済の安定成長期。安定しているように見えたが「実は金融バブルを生み出した時期だった」と振り返った。
足元の景気回復は政府の大規模な財政出動や、4月の消費増税を控えた駆け込み需要を主因とする循環的な景気拡大だと評価。人々が生活が豊かになっていると実感するには「日本経済の潜在成長率を高め、企業が無理なく物価以上に賃金を上げられるようにする必要がある」と述べた。
白川氏が特に強調したのが、人口減少や高齢化への対応の遅れだ。放置すれば、いまの生活水準を維持できなくなると指摘。「どう持続可能な成長に転換していくかが最大の課題だ」と労働力人口の増加や生産性向上への取り組みを官民に訴えた。
白川方明、日銀、黒田東彦