福島原発事故:安全意識の欠如、原子力学会も反省
毎日新聞 2014年03月08日 19時48分(最終更新 03月08日 21時11分)
東京電力福島第1原発事故の原因などを調べた日本原子力学会の事故調査委員会は8日、事故の直接原因を「事前の津波対策、過酷事故対策、事故後対策の不備」とする最終報告書を公表した。背景として、事業者や規制当局の安全意識の欠如に加え、学会自身についても「災害への理解が足りず、専門家として役割を果たせなかった」と反省した。
報告書は、事故などの原因について、▽過去の大津波を対策に生かせなかった▽過酷事故への備えが不十分だった▽避難範囲の設定など住民の被ばく対策が不十分だった−−ことなどを挙げた。事故当時、東電の対処次第では炉心溶融を回避できた可能性も指摘しつつ、「事故当時に現場に要求することは困難だった」と分析した。国会の事故調が地震の揺れによる重要機器損傷の可能性を指摘したが、「安全機能に深刻な影響を与える損傷はなかった」と結論付けた。
今後については、事業者や規制当局に、災害対策などの強化や安全性向上の取り組みを続けることを求めた。学会自身も「中立性を守る努力が不足していた。自由に意見交換できる雰囲気の醸成に努める」と改革の必要性を指摘した。
学会事故調は2012年6月に発足、約50人の専門家が事故進展や現場対応などを調べたが、既存の公表データを基にしたため、新事実は乏しい。事故調委員長の田中知(さとる)・東京大教授は「調査に限界があり、事実解明に十分ではない点がある。学会の議論を規制や事業者の取り組みに反映させる仕組みを作りたい」と話した。
学会は今後、福島第1原発の汚染水対策、溶融燃料の取り出し、除染や放射性廃棄物の処理などに科学的な助言をする「廃炉問題検討委員会」を発足させる。最終報告書は丸善出版から近く出版される。【西川拓】