ビットコインの発明者、Satoshi Nakamotoが実在する人物であることをスクープしたリア・マグラース・グッドマンに、いろいろな批判が寄せられています。

「本人が否定しているのだから、ひと違いじゃないの?」
「取材の仕方が、強引ではないか?」
「誰が発明者であるかを暴く必要がそんなにあるのか?」


などです。

こうした批判を受けて、リア・マグラース・グッドマンはNPR系列局のWBUR(=確かな報道で信頼されるラジオ局です)のインタビューに応じました。この番組はこのリンクから聞く事が出来ます。以下要点抄訳:

私はサトシナカモトが誰かを調査するにあたって二人の科学的犯罪捜査(forensic research)の専門家に相談した。さらに色んな学会の識者にもアドバイスを求めた。

サトシナカモトが暗号解読の専門家である可能性にも当たってみたし、それが偽名(pseudonym)かどうかに関しても色々なシナリオを考えた。

正直に告白すると私はこの人のことを見過ごしていて、別のリサーチャーから「この人は、どうだろう? もっとちゃんと調べてみては」と指摘を受けた。それでウラをとってゆくうちに証拠が固まってきたというわけだ。

ナカモトサトシは自分がビットコインの生みの親であることを否定しているが、本人が否定する可能性は私が事前に彼の家族や親族に周辺調査したときから「彼は否定するよ」と忠告されていたので予想通りだった。むしろ驚いたのは私が彼にあった時、自分がビットコインに関わっていた事を認めた事だ。

私が彼の家の玄関で取材を申し込んだとき、彼は警察を呼んで、二人のお巡りさんが来た。それでお巡りさんが「あなたはなぜこの人に面会しようとしているのだ?」と私を問詰め、私は「自分はリポーターで、この家の人が、ひょっとするとビットコインの発明者かも知れないからです」と説明した。

お巡りさんはビットコインのこと、ビットコインが時として金融犯罪と絡んで話題となっていることなどを知っていて、私が彼と言葉を交わすことを許した。

それで私はナカモト氏が玄関の扉をあけたとき「もしやあなたがビットコインの発明者ではないか? と考える人がいるので、お話を聞きたいのですが」と彼に言った。すると彼は「いまはそれについて話はできない。もうそれと自分は無関係なんだ(I can’t talk about that. I’m not connected with it anymore.)」と言った。これは正確な引用だ。

そこで私は「それとは無関係だと言った場合のそれとは、ビットコインのことですか?」と聞いた。すると彼は「そうだ」といった。その後、いろいろやり取りした後、私は「もしあなたが本当にビットコインと全く無関係なら、いまこの場で関係を否定して下さい」と頼んだ。彼は「それは……できない」と言った。


さて、ここからは僕の感じたことですが、先ずリサ・マグラース・グッドマンはフィナンシャル・タイムズやウォールストリート・ジャーナルで記事を書いた歴戦の探偵記者であり、過去にもEdgy(角のある)な記事を沢山モノにしています。それでジャージー島から「貴女は入国させない」とボイコットされたこともあります。

だから取材や調査の段階で、初歩的なミスをしている可能性はゼロだと思います。

またNewsweekも「紙」のバージョンを復活させるにあたって、その突破口となるカバー・ストーリーにこの記事を使っているので、この記事の正統性に少しでも疑いがあれば、活字にしていないと思います。

アメリカのお巡りさんは市民(この場合、ナカモトサトシ氏とリア・マグラース・グッドマン氏の両方)と尋問する際、手順が厳しく決められています(例:捜査令状の必要の有無など)

したがって、メディアが誤った引用をすることには極めてセンシティブです。警察が「あの記事に書かれている事は、事実ではない」と発言していない以上、上に紹介したやり取りは事実だったに違いありません。