【東京】福島第1原子力発電所での1日。ヘビのようなロボットが原子炉建屋の床を掃除し、別のロボットが3次元(3D)カメラで放射能の濃度を画像化している。
同原発の原子炉が2011年3月の大地震と津波でメルトダウンを起こしてから3年。放射能の放出を封じ込めるには、まず原子炉建屋内の熔解した燃料棒とがれきを取り除かなければならない。ここにロボットが投入された。
これらの除去にはロボットが極めて重要だが、このことはロボットが奇跡の働き手であったり、模範的な従業員だというわけではない。ロボットは1台数百万ドルもし、そのほとんどは一つないしいくつかの仕事しかできない。一部のロボットは準備作業のために別のロボットが必要になる。時には事故が起き、少なくとも1台は現場から抜け出せなくなり、減損処理された。
通常の原発廃炉では、設備を取り出したり放射性廃棄物を扱うのに遠隔操作技術が使われる。しかし、東京電力の福島原発は放射能による健康被害の恐れがあることから、ロボットは通常よりも広範囲な役割を担っている。2号機建屋の4階部分では、防護服を着ていても、わずか1時間で許容限度の5年分の放射能を浴びることになる。
東電は昨年11月、カメラを備えた小さな遠隔コントロールのボートを、水がたまっている1号機建屋の地下に入れた。このロボットは、水が原子炉の格納容器から漏れていることを初めて突き止めた。
漏水は広く予想されていたが、これは原子炉から漏れ出た水の一部に過ぎない。資源エネルギー庁原子力発電所事故収束対応室長の新川達也氏はウォール・ストリート・ジャーナル紙とのインタビューで、「別の水漏れもあるはずだ。これを見つけなければならない」と語った。
ロボットたちの次の任務は、水漏れをピンポイントで見つけ、できればそれをふさぐことだ。
放射能に汚染された水が外に出ないようにする上で漏れの部分をふさぐことは、単に重要なステップというだけではない。原子炉から燃料を取り出そうとする際には、燃料を冷やし続け、放射能が大気中に漏れるのを防ぐために、原子炉内に十分な水を入れておかなければならない。
第1原発プロジェクトチーム燃料除去戦略担当ゼネラルマネジャーは、漏れを防げなければ、東電は燃料除去のための新しい方法を見つけなければならないと語った。
地下へのボート投入に先立ち、内部状況の3Dマップ作成のために別のロボットが送り込まれた。マッピング用ロボットの技術は千葉工業大学で開発された。同大学はロボカップを含むいくつかのロボット競技コンテストで勝利を収めている。同大未来ロボット技術研究センターは、開発と製作に少なくとも5000万ドル(52億円)を投じた「櫻弐號(さくらにごう)」など、福島原発で稼働しているいくつかのロボットを開発した。
ロボットはハイテク製品ではあるが、コードレスというわけではない。ロボットたちは無線がうまく作動しない場合に備えて外部と光ケーブルで結ばれている。トラブルに対する保証はない。櫻弐號の前身は、コードが損傷を受けたことから、11年10月以来2号機原子炉建屋内に置かれたままだ。
確かに、福島の廃炉作業では今後も人間が依然として重要な役割を担うことになる。例えば、建屋地下の床を通してボートを入れるための穴を作るには人の手が必要だった。この時は過度の放射能を浴びるのを避けるために何人かが手分けして作業を行った。
専門家は、人間のように現場を歩き回るスーパーロボットは将来も出てこないとみている。三菱重工の原子力事業本部主席技師、大西献氏は、むしろ放射能除去などには、「それぞれが専門的な仕事をする専用ロボットの小部隊」に頼ることになると述べている。同氏は原発で働くロボットを開発している。
何人かの若いロボット工学者たちは倉庫のような大きな建物の中で、櫻弐號が周囲のデジタル写真を撮りながら急な階段やがれきの山を難なく越えていく様子を見せてくれた。
福島原発ではがれき除去や床の掃除、ビデオ撮影などで十数種類のロボットが投入されている。それぞれの役割は違うが、ほとんどは小さくて幅のある戦車のように見える。いずれも、金属やコンクリートのがれきがある場所を横断するのか、あるいは階段を上り下りするのかによって、2本あるいは4本の脚があったり、キャタピラー様のものが付いていたりする。
細かい部分の漏れの状態を調べるために東電は、より小型で虫のようなロボットを使うことになった。開発しているのは日立製作所で、1号機の漏れの場所を見つけるために狭いスペースに入り込めるようにする。同原発メーカーとして日立は施設を熟知している。このロボットは15年に投入される予定だ。
2号機建屋の水がたまっている地下には小さな泳ぐロボットが入れられて、格納容器から漏れがないかどうかを調べることになっている。その次の、もっと野心的な計画では別の泳ぐロボットが漏れをふさぐという。
作業上の多くの課題の一つは、3号機内部の極めて高い濃度の放射能からどう作業員を守るかだ。日立と米ゼネラル・エレクトリック(GE)の合弁会社、日立GEニュークリア・エナジーのワキ・テツオ氏は「全ての原子炉とその建屋が異なった状況にあるため、ある設備で効果のある技術も他の場所では役立たないことがある」と話した。
ロボットでも放射能の影響を受ける。そのため、福島のロボットたちは出来るだけ長期間働けるように監視を続けなければならない。東電によると、ロボットには放射線モニターが付けられており、現場から戻る際にはしっかりと拭うことが必要だという。
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