論文にひそむアーティファクト
テーマ:研究世界ってどうなのよ死者が一人出ている大事件、阪大捏造論文事件はいったいいつ決着するのでしょうか。最重要人物である杉野教授が、先日懲戒免職処分に異議をとなえたのはどうしてなんでしょうね。何がどう不服なのか、彼の主張もぜひ公開してほしいと感じる今日この頃ですが、皆様いかがお過ごしでしょうか?
彼にどのような裁定が下るのか、クビを長くして待っているのですか、結論が出るまでにはまだまだしばらくかかりそうな気配なので、この間に、私の知っている限りの「論文のアーティファクト」を指摘してみたいと思います。
まずは問題の杉野教授、後から指摘のあった2論文 について、どこがどうアーティファクト気味なのか具体的に見ていきましょう。
1つめは2002年、酵母の持つDNAポリメラーゼに関する論文から。Fig.2のAとBのゲル電気泳動結果に気になる箇所が2つあります。
2.
(以上、J. Biol. Chem. (2002) 31, 28099-28108. より引用、一部改変は筆者)
画像AのARS1のデータおよびARS305+8のデータが、Bと一部一致しているようですね。
2つめは同じく2002年、別の筆頭著者の論文です。Fig.2の画像右半分、2つの電気泳動像レーンのゴミみたいなバックグラウンド部分にご注目ください。
2.
(以上、J. Biol. Chem. (2002) 40, 37422-37429. より引用、一部改変は筆者)
この2つは別の実験なはずなので、バックグラウンド部分まで全く同じゴミが出るとは考えにくいんですが……うーん。
以上、杉野教授の追加疑惑論文についてお伝えしました。
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ここからは趣を変えて、某2ちゃんねる(某になってないですね(笑))で流れているウワサの中から、私が確かにアーティファクトだと確認できたものだけをピックアップして画像で確認していきます。
1つめは、Genes to Cellsという論文誌の2003年7月号から。Fig.3CのSup35scとSup35yrscの上のレーンが……
2.
5.
(以上、Genes Cells. 2003 Jul;8(7):603-18. より引用、一部改変は筆者)
Sup35scとSup35yrscは全く別のサンプルのはずなので、電気泳動像がぴったり重なることはまずあり得ません。これは正にアーティファクトと言えるでしょう。ちなみに下のレーンはちゃんと異なっています。
なんか疲れてきたのでもう画像だけ並べていきます。
2つめはMolecular Microbiology誌、2004年11月発表。Fig.2Bです。
2.
5.
(以上、Mol Microbiol. 2004 Nov;54(4):1063-75. より引用、一部改変は筆者)
3つめで最後ですが、これはちょっと説明しなきゃだな。
Genes & Development誌、2005年発表の論文。各画像とも上はFig.3のB、下はFig.5のBでそれぞれ別のFigですが、画像をかんたんに比較できるよう、筆者が一枚にまとめました。
1.(元画像)
(以上、Genes Dev. 2005 Sep 15;19(18):2176-86. より引用、一部改変は筆者)
ポイントは4枚目。どういうわけか、ちょっと横比率が変化しているんですね。ヘンに一手間増えている分、さらに謎が深まると言いますか……
以上5点、画像は見た目をできるだけいじらずにお伝えしたつもりですが、気になる方はご自分でもチェックしてみて下さい。
科学論文にはまだまだアーティファクトが隠れているような、そんな予感を感じてしまいました。
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昨日の晩酌
・海 (芋焼酎、25%、大海酒造) ロックで。
一升瓶がもうすぐ飲み終わります。
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1 ■無題
杉野教授には、結局懲戒解雇の処分が下されましたね。
http://www.nikkei.co.jp/news/shakai/20061221AT5C2002320122006.html