安倍晋三首相が率いる日本は一方に傾く様相を呈し、心配でならない。日本はこれまで、歴史問題をめぐり、韓国や中国が何か言っても見向きしない一方、欧米諸国が口を挟めば驚いたふりをしてきた。西欧に対する根深いコンプレックスもあるが、「国際社会」という言葉が持つ重みがそうさせてきたのだ。
だが、安倍政権はそうでもない。靖国神社への参拝に対し米国が数回警告を発しても、軽く聞き流すような素振りを見せた。昨年5月に国連拷問禁止委員会(CAT)が行った「従軍慰安婦問題の責任者を処罰し、政府レベルで謝罪と賠償を行うように」との勧告に対し、安倍首相は「事実誤認に基づいた一方的な勧告であり、法的な拘束力はない」として無視した。国連安全保障理事会(安保理)の常任理事国を目指そうという国のトップが国会で行った答弁がこうだ。当分の間、国際社会の権威も、安倍首相の暴走を止めるのは困難なように思える。
核兵器こそないが、日本は国際社会で強い力を持っている。2010年以降は中国に押されたが、今なお世界第3位の経済大国であり、開発途上国に対する政府開発援助(ODA)の額は米国に次いで2番目に多い。また、国連分担金も米国に次いで多い。
日本は国際社会で、単なる金持ち国として扱われているわけではない。世界の人々は、日本を「文化大国」であり、魅力的な国だと考えている。『ドラゴンボール』や『進撃の巨人』などの漫画は世界を席巻し、「和食」は国連教育科学文化機関(ユネスコ)の無形文化遺産に登録された。韓流よりも先を行く状況にありながら、日本政府は2010年から「クール・ジャパン」と題する国家プロジェクトを進めている。20年までに文化関連の輸出を3倍に増やそうというのだ。
そんな日本が最近、世界最大とされるフランスのアングレーム国際漫画祭で大恥をかいた。韓国が出展した、旧日本軍の慰安婦強制動員をテーマとする漫画展を、1万6000人もの人々が観覧したためだ。チョ・ユンソン女性家族部(省に相当)長官は「漫画市場で日本の影響力が大きいため、展示が失敗に終わる可能性もあった」と語った。日本は「慰安婦をテーマにする漫画展は政治的で不適切だ」と抗議したが、主催者側は「知られていないことを伝えるのは政治的ではない。事実を歪曲(わいきょく)することこそ政治的だ」と一蹴した。慰安婦問題について歪曲する内容の日本の作品は撤去された。左派・右派を問わず、政府と文化人たちが力を合わせて成し遂げた快挙だった。
しかし、日本が一度恥をかいたからといって、慰安婦問題が収束するわけではない。「アングレームの奇跡」は始まりにすぎない。慰安婦問題をテーマとする漫画で世界の人々が衝撃を受けたということは、国際社会がそれだけ、この問題を知らなかったということを意味する。韓国国内向けではなく、海外にも配給され、世界の人々が慰安婦問題の実情を知ることができるような映画を制作しようではないか。韓国が映画制作で中心的な役割を果たせば、中国や東南アジア諸国も協力するだろう。日本の良心的な映画人たちの出演を拒む理由もない。米国の女優アンジェリーナ・ジョリーさんや、アイルランドのロックバンドU2のボノのように、社会問題に関心を持つ芸能人たちにも協力を求めるべきだろう。
日本の影響力は映画界でも強い。だが日本も、アングレームで思い知らされただろう。どんなにカネを出しても、ロビー活動をしても、真実の前でそのような力は及ばないということを。そして、慰安婦問題は韓中日3カ国だけの問題ではなく、人類の普遍的な問題だという事実を。