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君とあの夏をもう一度 作者:ショボミール

美少女の転校生

「………おい…どういうつもりなんだよ?」


今俺は学校で残念なイケメン、英字と話をしているのだが……ちょっと怒っているのが英字だ。


「だから罰ゲームはやらねぇ。俺に恋なんてもう無理なんだよ。」


そう…結局俺は彼女が欲しいとは思うものの小さい時に会った少女の印象が強すぎて他の女の子がどうしても見劣りしてしまうのだ。実際もう十年くらい好き!って子には会ってない……まあ昨日の子はそれに劣らないくらい可愛かったが……。


「く、仕方ない。だが転校生を見てからでも遅くないだろ。」


「分かった分かった。」


かなり投げ遣りに答えた。


「おはよう。」


とんま先生が入ってきた。


「んじゃホームルームを……連絡はなしだ。じゃあ転校生を紹介するか。お~い…いいぞ。」


とんま先生は相変わらず全く持ってやる気のない声だった。


「はい。」


ピン!ピン!


突然机に伏せていた男どもが復活した。声から期待できると判断したのだろう。廊下から入って来たのは昨日孝一が正門の前で会った少女だった。


「じゃ、自己紹介頼むわ。」


少女はドキドキする心臓を息を吸って落ち着けた後話し出した。


「…私の名前は星河小百合(ほしかわさゆり)です。小さい頃に日本で住んでいたので日本語は大丈夫です。」


「……だそうだ。星河はアメリカに10年住んでいたから日本の事はあまり知らない。ちゃんと教えてやるんだぞ。」


先生が補足を入れる。


「あ~じゃあ悪いが一番前の席しか空いてないからそこに座ってくれ。後女子のクラス代表も頼むわ。概要は全てそこでふて腐れてる奴に聞けばいい。」


先生はそうゆうと俺を指差した。


今日転校して来た奴にクラス代表をやらせるなよ。全部俺がしないといけなくない。はぁ。


一層やる気のなくなった孝一だった。



「…咲矢孝一だ。よろしくな。」


「咲矢君ね。よろしく。」


定型的な挨拶を済ませホームルームが続く。


「ああ……今日から6限授業だが頑張れよ…以上。じゃ。」


先生は教室から出ていった。


もちろん先生が出てった後は小百合の周りに人だかりができる。俺はそれが鬱陶しくて直ぐに席を離れた。


「で、どうよ。あれならいけんじゃねえのか?」


席でPSPのギャルゲーをしながら英字が言う。


「やっぱダメだ。というかどう落とすんだよ!ハードル高すぎだろ。」


英字はPSPをしている手を止めて言う。

「どんな女も攻略出来ないなんて事はないとある奴は言った。」


2次元でな。


「だからまずは攻略の糸口を見つけるんだ。そう、フラグだ!フラグを立てるんだ!!」


あ、そう……。


孝一は彼女の方を見て言う。


「集まってるの…男子多いな。」


「最初が肝心だからな。」


英字は再びPSPをカチャカチャ始めた。


「まあ取り敢えず話してこい。でないと始まらないぞ。」


「話すって言っても……何を話せばいいか……。」

「はぁ……しゃあない。俺が手本を見せてやろう。」


英字はPSPをスリープモードにして引き出しに入れるとめんどくさそうに彼女の方に向かう。そして何かを話し始めた。


「Hello.My name is Eiji Misawa.Were you already used to Japan?
」(こんにちは。私の名前は三沢英字です。もう日本には慣れましたか?)


ものすごくぎこちない英語だった。


「Not yet familiar with Japanese is very difficult because.」(日本語がとても難しいからまだなれていません。)


「……?すまん!ほんとは英語できやんのや。」


彼女はクスっと笑うとこう言った。


「分かってたよ。無理に英語で喋らなくても日本語分かるから大丈夫だよ。」


「やっぱり慣れない事はするもんじゃないな。うん。じゃあ席に戻る前に一つだけ言っておくか。」


「何?」


興味津々に聞いてくる彼女に小さな声で英字は言う。


「咲矢のことだが……関わるんだったらそれなりに本気にしてかかれよ。」


「それってどういう意味?」


「後々わかるさ。」


英字が席に戻ろうとした時小百合は英字に一言言う。


「それは私にも言えるかも…。」


英字はこちらに戻って来た。しかもかなりしまったって顔をしていた。


「そんな顔してどうしたんだ?なんかまずい事でもしたのか?」


「ん?ああ、かなりまずい。キャラが分からん。ちょっと意味深な事を言ってお前に興味持たせようしたが…逆に好感度下がったかも。」


苦笑いを続ける英字。


……ダメだコイツ。リアルと二次元を一緒にしてる。キャラがつかめなかったってなに?


「ま、そういうわけだから後は頑張れよ。」


「あ、そう……で、結局何も得るものはなかったって事?」


「そういうことだ。」


……もうなんでもいいや。どうせ俺には関係のない世界だったって事で終わらそう。


チャイムが鳴るので咲矢は自分の席に戻る。


席に戻ると直ぐに星川さんから声をかけられた。


「咲矢君。何か秘密もってるんだってね。さっき三沢君から聞いたよ。」


「え、ああ。持ってる…らしいな…。」


「らしい…な?」


何!?俺なんか秘密持ってるクールキャラ演じなきゃいけないの?そういう流れなの?


「そう、俺には色々あってな。だから関わらない方がいい。」


ちょ!?俺何言ってるの!?何かかわり合うなって空気だしてんの。


「ふうん……まあ大した秘密でもないんでしょうけど……教えて欲しいなぁ……。」


……秘密とかないんだけど…なにある的流れになってるの?俺どうすればいいの?


悩みに悩んでいるところに都合良く先生が来た。正直先生が救いに見えたのはこの日が初めてだった。


「むう、放課後聞くね。バイト先で。」


「バイト!?何で俺がバイトしてることをしって「うるさいぞ。さっさと号令かけんか。」


はい。先生に叩かれました。今日は散々です。


なんやかんやで放課後になったようだ。6限の授業は正直だるかった。


どうやら星川さんは授業の間に俺の秘密?については忘れたようだ。ある意味安心してバイトに行けると同時に俺の罰ゲームは終わりでいいと思う。


うん。俺にしては頑張った。他人がなんて言おうと俺は頑張ったはずだ。


という訳でバイト先のアイスクリーム屋に向かう。


この時期、あまり来ない客を相手にしながら少なくなったアイスを足す。


………暇だ………。


奥ではおっちゃんが新作を考えていたが俺には手伝う事もないので暇である。


ぼうっとしていると突然聞きなれた声が聞こえた為びくっとする。


「こら!サボるな!」


「あ、明!?」


レジの前に明が立っていてびっくりする。


「今日は二人分おごってもらうぞ。これとあれと…それも!」


お前のせいで実質三人分だよ。というところには突っ込まずに仕事と割り切って用意する。


「で、もう一人って誰なんだ?」


「ん?小百合ちゃんだ!どうだ。すごいだろ!」


明は自慢げに言う。


「……別にお前が凄いという訳じゃない気がするが…まあいいか。星川さんはどれにする?」


星川さんはしばらく考えた後言う。


「一番高い奴頂戴。」




「一番……高い…奴?」


孝一が固まりながら言う。


「うん。何か変な事言った?」


「い、いや、そんなことはないと思う……。」


今月のバイト代が………。


泣く泣く一番高いアイスを奢るのだった。


「それで、咲矢君の秘密って何?」


「えっと…それはだな……。」


覚えてたのか……。


心の中で誰かに助け舟を求めるもその声に反応する者はいない。


「孝一に何か秘密なんかあったのか?………ああ…あったかな…多分あれか。」


明が思いついた様に言う。


おお!もうなんでもいい!何か思い付いたなら言ってくれ。


「孝一はな…実はシスコンなのだ!」


……ナニ…ソレ……。


「……ふうん……シスコンなんだ…。」


いや!違うから!!可愛い妹だけどシスコンじゃないから!多分…。


「冗談だ。」


慌ててる俺を前にしてやったりという顔をしていた明が言う。



ああ、そう……なんか無駄に疲れた。


「じゃあ秘密って……。」


「ありません。英字のバカが勝手にそういうふうにしただけです。」


「……つまらない男ね。」


つまらない男だって!?……終わったんじゃね?……。


「孝一は常につまらない平凡な男だと思うが……何か孝一の事を知ってるのか?昔に会ったとか?」


冗談の感じで明は星川さんに聞く。すると真剣に考え出した星川さんは暫くして言う。


「……分からないけど多分会った事があるはず。そう、その時の咲矢君は凄くかっこよかったはず……。」


「……はず?というか人違いでは?」


星川さんは首を横に振ると一枚の写真を見せてくれた。明が先に手に取って見る。


「おお、ちっちゃいときの孝一だ!?……右の金髪の女の子は誰?」


明が孝一に手渡す。それを俺が見るとびっくりして星川さんと写真を交互に見る。その写真は小さい頃の俺と金髪の少女が祭りの会場で手を繋いでる写真だった。


「……こ、こ、これ、星川さん?」


「う、うん、多分。でね、咲矢君、写真の裏側見てくれない?」


写真を裏返すと小さな文字が何行か書いてあった。


『孝一といつかまた必ず祭りに行くと約束した。そうだ!あの渡した熊のぬいぐるみをまた会う時までに大切に持っていたら孝一と結婚しよう。10年後が楽しみだ!』


「……ほ、星川さん。何かの冗談ですよね?」


孝一は苦笑いしながら言う。


「それが私にも冗談か分からないの。私は交通事故に合って日本にいた時の記憶だけ無くなってるから…だからその男の子、つまり孝一君が見つかれば解決するんじゃないかって。私もその言葉の通りにちょうど10年後に来たの。」


「へ、へぇ……。」


確かに熊のぬいぐるみは未だに俺の部屋に置いてあるし、俺も星川さんと付き合えるならもの凄くいい……だけど、それは違うよな。


「星川さん。確かにその写真に写ってるのは俺だ。だけど…星川さんはその事を覚えてないなら別に実行しなくていいと思う。10年も前の事だから……。」


俺は星川さんに写真を返すと奥に入っていく。


「……小百合ちゃんは先に帰ってて欲しいな。後の事は私に任せてさ。」


明は素早く星川さんを帰すと孝一の後を追って奥に入っていくがそこに孝一の姿はなかった。


「おう、嬢ちゃん。あの小僧ならさっき着替えてあがったぞ。」


「は、はやいな!?」


明は慌てて孝一の後を追う。まあ大体行き先の見当はついているのだが。


明はいつも祭りが開かれる神社に向かう。長い石段を登りきると孝一はベンチに腰かけていた。


「……やっぱりここにいたか。隣いいか?」


「ん、ああ、明か……いいぞ。」


明は孝一の隣に腰かける。


「明さぁ…俺の事バカだと思うか?たった一晩、それも祭りが終わるまで一緒にいた少女が今でも好きってさ……。」


「さあ?でも相手は嬉しいだろうね。覚えてたらね。でもまだマシだと思うよ。小百合ちゃんはちゃんと覚えてないって言いに来たから……。」


「…そうかもな……。」


「それでさぁ。まさか諦めたって言わないよね?」


「ん?ああ、正直ほぼ諦めてるよ。あれはなんつうか…住む世界が違うって感じがする。」


「そんな事で諦めるのか。孝一らしくないな。10年間祭りの時は石段の所であの子を待ち続けてたのに諦めるのは早いんだな。」


「…何だよ?まるで俺が諦めたらダメみたいな感じだな。」


「さぁ?ただ私は何もしないのに諦める奴は嫌いって事だ。」


…何もしないか……でも俺だって10年間彼女を待っていたんだ。それを交通事故なんかで失うなんて……なんて運がないんだろうか…いや、いっその事思い出として二度と会わない方が良かったのかもしれないな……。


「よし!今会った星川さんは初対面にしよう!」


「え?それはどういう意味なんだ?」


「俺なりにケジメをつける。あの日の事はなかった事にする。うん、それで解決だ。」


「……遂には現実逃避か。相変わらずのバカだな、孝一は。」


明が呆れた様に言う。


初恋なんだろ?だったら相手が自分の事を思い出すまでアタックすればいいじゃないか。まあ思い出したら思い出したで今のとのギャップに失望するかも……。」


明はそれはそれで今度は小百合ちゃんが可哀想だな思ってしまった。


「じゃあ何か?俺は今の星川さんを惚れさせたうえで記憶を戻させろって事か?」


「それだ!それで解決だ。」


明は頑張れよと言わんばかりの顔で言う。


……さっき俺つまらない男って言われたばかりだけど……そもそもそうなったら記憶戻す意味なくね?


という所はあえて気にせず再度本気で星川さんを落とす事を決意した孝一だった。





























「で、何からすればいいだろうか?」


「そんな事は自分で考える事じゃないのか!?」


明は幸先がもの凄く不安になるのだった。

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