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君とあの夏をもう一度 作者:ショボミール

俺の日常

「ああ……ああ~~…眠い…」


布団で寝ていた青年は突然少女にかけ布団を取られる。4月だというのに未だにこの部屋は寒い。


「…寒い…眠い……。」


敷き布団にくるまっていく。


「お兄ちゃん、早く起きてよ。」


「分かったよ、起きればいいんだろ。起きれば。」


先程から俺を起こしているのは妹の咲矢由衣(さきやゆい)である。容姿は黒に少し茶色がかっておりまあまとめるとポニーテールだ。目は当然の黒。顔はちょっと小さくて…性格は全体的に少しツンッとしている。まあ勿論自慢の可愛い妹だけど…この時……起こされる時だけは泣ける。いや、俺が悪いんだけど。


「早くしないと遅刻するよ。」


「あ~…遅刻はまずいな。仕方ない。行くよ」


くるまっていた布団から出てきた孝一の容姿は普通…平凡な何処にでもいそうな高校生だった。普通の髪の毛は寝癖でボサバサ。目が覚めたばかりなので目もはっきり開いていない。ここだけ見たら不良になりそうだな。いや、ただ単に寝起きが悪いだけなんだけどな。


「やっと起きた。もう世話がかかるんだから。」


俺を下から覗き込むように見る。こうして見ると小3、122㎝の由衣と高2の170㎝の俺…かなり、いや……めっちゃ差がある。多分由衣の中ではもういっちょまえの大人気取りの積もりなのかも知れない。まあそんな事は置いておいてさっさと朝御飯を食べないとな。


「はいはい。朝飯食ってくるわ。」


妹を置いて1階に下りていく。


「あ、もう待ってよ。」


そう言いながらも孝一の後を着いてくる。1階のリビングに着くと親父が新聞を広げながら朝御飯を食べていた。


「ん、おはよ。」


「…ああ。」


最近親父とは朝に会話をする事はない。理由か?話す内容がない。これが理由だ。

「ご馳走さま。」


大概俺と由衣がくる頃に親父は食べ終わる。これも理由になりそうだな。


「ほら、あんた達も早く食べなさい。」


母さんが定番のご飯と味噌汁を出す。母さんに言われて急いで食べる。由衣は食べ終わってから俺を起こしに来たらしい。母さんの洗い物を手伝っている。


兄という威厳は全くないがいざというときは妹にとっては頼れる兄のはずだ……多分…。


そんな事を思いながら朝御飯を食べ終え高校へと向かう。俺の通っている日沢高校、学力は…普通よりは良いらしい。詳しい事は知らないが賢い奴が偏差値を上げてるとかなんとか誰かが言ってた。


まあそんなぐだぐだな俺だが最近欲しいものは彼女だ。だから通学途中の曲がり角で可愛い女の子がピンチだ!とかあったらって思うが実際はそんな事はない。何故なら可愛い子が居ないからだ。これはまあその内理由を教えてやる。


そう思って曲がり角を曲がると誰かにぶつかった。


「いてぇ!?ちゃんと前見ろよ。」


ぶつかって尻餅を付いた小学生の少年が言う。その少年はこちらを見た瞬間ヤベェという表情を出す。そして逃げて行った。


「?………あ…。」


少年が去ってから落ちている弁当を見つけたのだ。


……通常なら放って置くが……まあ学校終わったら警察に届けるか……弁当を?聞いた事ないよなぁ…にしてもどっかで見た気が……妹の弁当箱に似てるな…。


暫く疑問に思い続ける。そんな事をしているといつの間にか遅刻ぎりぎりの時間になっていた。


やば、早く行こう。


はや歩きで高校に向かう。正門が見えてくると時計をチラチラ見ながら周りで何かを探している金髪の少女がいた。このままでは間違いなく遅刻しそうな感じだ。


……厄日だな。初日からこれだとやる気なくなるよなぁ。


「…早くしないと遅刻するぞ。何か探してるのか?」


困ってる人を見ると基本的に助けてしまう性分なのである。その声に少女の金髪のロングヘアーの髪が風に靡きながらこちらを向いた。その顔は近くで見るととても整って美しかった。端正な目に小さい唇。更に見える部分には傷1つなくスタイルもいい。俺は少女から目が離せなくなってしまった。


「……私の顔に何か付いてる?」



身長は150くらいなので下から少し見上げる感じで見ている。少女は俺が目を離せないのを顔に何か付いてるのかと勘違いした様だ。慌てて俺はそれを不定する。


「い、いや、何でもない。それより何してるんだ?もう入らないと遅刻するぞ。」


すると少女は言いにくそうに言う。


「……弟が弁当を届けに来るはずなんだけど……来ないの。」


「弟が弁当ねぇ………あ!」


先程の出来事を思い出した俺は鞄から弁当を取り出す。


「弁当ってこれか?」


というより今日は弁当いらない気がするが…。


「そう、それ!どうして貴方が持ってるの!?」


「え?ま、まあさっき小さい子とぶつかって落としってったから警察に届けようと…。」


「ふうん…アイツなら確かに逃げそうだわ。取り敢えずありがとう……。」


少女が弁当を受け取る際に俺の顔を少し見てそっかそっかって感じで納得した後クスッと笑うと少女は急いで中に入って行った。


?何か俺の顔に付いてるのか?…それよりあんな子いたってけな……う~ん……。


キ~ンコ~ンカンコ~ン


……マジかよ…はぁ。


俺は諦めてゆっくりと校舎に入っていく。勿論顔に何か付いてないか確認しながらだ。


そして2年Bにやって来た。


…クラスはここか……今日から2年生……そして初日から遅刻…苦難だわ。


覚悟を決めてドアを開ける。


「……おう、咲矢、来たか。さっさと空いてる席に座れ。ああ、と言っても一番前か。」


何故か一番前の二席だけ空いていた。


「あ、担任とんま先生ですか?」


やったぁ!助かった!……ああ、そしてまたあれか…。


「そうだよ。また一年頼むわ。」


この先生、名前はとんま出流(いずる)先生。性格は自堕落。大抵人任せで面倒くさがりである。だがやる時はやるらしい。俺が席に着くと話始めた。


「あ~、俺が受け持つ事になった。…以上。今日は代表?ああそうだ。クラス代表を決めるだけだ。じゃあ咲矢、任せた。皆、いいな。」


誰も反対する人はいなかった。


分かってたよ。この人が担任の時点でそれは分かってたから。


「じゃあ女子の方を……明日までに決めとくわ。」


とんま先生に立候補とかの概念はないらしい。


「じゃあ体育館……そうそう、改装中だ。教室で待ってたら始業式始まるからなぁ。それと転校生がくるはずなんだが…寝坊なのか?」


「先生~、転校生って男ですか?女ですか?」


生徒が聞く。


「あ~、確か女だ。じゃあそこんとこ確認行くから咲矢、後は任せたぞ。」


あくびをしながら出ていった。


ま、という感じであの人が担任になるとゆるゆるになるわけだ。


「おい、孝一、久しぶりにしようぜ。」


コイツは残念なイケメン。三沢英字だ。(みさわえいじ)。幼なじみと言えば多分そうだ。不定はしない。そしてしようぜっていうのは今学校で流行りの罰ゲームポーカーだ。


「分かったよ。やれば良いんだろ。」


仕方なくメンバーに入る。今回は5人で行うらしい。あらかじめじゃんけんで勝ったやつが紙に罰ゲームの内容を書いておく。そして普通にポーカー。3回勝ちで抜けていく。最後の奴は紙を引いて罰ゲーム実行。シンプルだ。


このゲーム、書いた本人がビリになっても罰ゲームを実行しなければならない。故にあまり無茶苦茶な事は中々書けない。そしてこのゲームにやたら強いのが英字だ。毎回ストレート以上を叩き出す。多分イカサマだ。そんな感じで場は進んでいく。暫くやっていて既に3人が抜けてラストゲームである。


この日に限って場は英字と俺の一騎討ちになっていた。
珍しく英字がイカサマを使ってないだと!とおもった俺がバカだった。
ラストゲームは……ロイヤルストレートフラッシュだってよ。
イカサマにも程があるだろ。
俺だってフルハウスだったんだぜ。そんな事を思いながら最後の紙を開く。


「………誰だ?これ書いたの?」


「あ~、俺俺。」


あ~、英字だったな……決めた。この罰ゲームはやらん。だってよ……内容が転校生を恋愛シュミレーションゲームみたいに落とせだって……お前…痛いよ。


「おい、やらないってのは無しだからな。噂によると可愛いらしいから大丈夫だって。それにそろそろ彼女を作らないとまずいだろ。」


何が大丈夫なのか全く分からん。とゆうよりお前が先に作れよ。


低レベルの愚痴を思った所で放送が入った。


(只今より始業式を開始します。)


奇妙な教室での始業式を終えると先生が戻ってきた。


「あ~、じゃ終わり。」


また先生はあくびをして出ていった。あれで先生が勤まっているのだろうか…。


「孝一、今日はバイトないのか?」


帰る準備をしている目の前から目を輝かせながら聞いてきたのは幼なじみの浜里明(はまさとあかり)。一言で言うなら猫に近い。多分猫耳を付ければクラスで一番合うと思う。ついでに家には猫が三匹いるらしい。いや、ちゃんと容姿は説明しよう、うん。黒のショートだ。それに若干小柄。纏めると猫顔だ。いやいや、つまり凛としていてしっかりとした眉毛に動きが俊敏だ……何を言っているんだ俺は……大体猫顔ってなんだ?聞いたことないぞ。


「…バイトは……あるなぁ……。」


「あるのか?おごってくれるな?」




一層輝きを増す明。まあ久しぶりの学校だから仕方無くはないけど。


「分かったよ。おごれば良いんだろ。アイスを。」


「さすが孝一!良く分かってる!さあ、早く行くぞ。」


無類のアイス好きな明はこうなったら止まらない。しかしバイトのエースの俺がバイトを休む訳にもいかず仕方無く帰り道の途中のアイスクリーム屋に行く。


「お、来たか、バイトと客が。」


店長のおっちゃんが出てきた。このおっちゃん、腕は一級品でこの辺りのアイスクリーム屋のトップと言って過言ではない。確か去年に目の前に同じアイスクリーム屋が立てられておっちゃんがキレていたが僅か数ヶ月で潰れたよ。客の舌は本物らしい。


「料金はそっちの小僧から減らしとくからドンと食べなさい。」


「じゃあアレとアレとアレ!」


「はい。毎度あり!」


毎度ありじゃねぇよ。勝手に俺のバイト代から買うようにするなよ……はぁ……。


明の勢いを見ると抵抗する気力さえなくしてしまった。


「おい、お前は早く手伝え。」


「は、はい!」


おっちゃんに言われてバイトの服に着替えてレジに立つ。明の奴はアイスを貰うとさっさと帰りやがった。正直この時期は来る客もまばらで楽なバイトである。だから話し相手の暇潰しに使いたかった…この楽なバイトをやっていると突然声が聞こえてきた。


「に、兄ちゃん。」


レジの前の下から突然現れた。かなり緊張しているようだ。


「ん、何か欲しいのか?」


「あれ、兄ちゃん、覚えてないの?」


少年が安心したように言う。勇気を出して話しかけてきたのだろう…直ぐに逃げれる様に半身だが……。


「……誰?」


考えたが全く思い出せない。どこで会ったのだろうか?


「あ、あのさ、朝にぶつかった時に弁当箱落ちてなかった?」


ああ!逃げた奴か!まあどうでもいいんだけど。


「落ちてたな。拾ったけど。」


「か、返してくれ。で、でないと姉ちゃん怒られるんだ!」


少年は両手を合わせてお願いしてきた。


「今は持ってないし…これ持って家に帰れ。そして姉ちゃんに謝れ。それで解決する。」


俺はカップアイスを袋に摘めて渡す。少年はキョトンとした顔でこちらを見るとやがてドンヨリした足取りで帰って行った。全く信用されてないらしい。


「孝一く~ん、何を勝手に商品を渡しているのかなぁ?」


おっちゃん、こえぇよ!



俺は速攻で土下座する。


「さて、バイト代から引いておくか。」


「お、おっちゃん~。」


「ははは、5割引きにしといてやる。」


やっぱり金は取るのね。


そんな事もありながらバイトを終えて家に帰宅する。




「お帰り~、というよりお兄ちゃん帰ってくるの遅い~、ご飯冷めちゃうよ。」


由依に言われて悪い悪いと晩御飯の卓に着く。晩御飯を食べていると由依が好きな色を聞いてきた。またこれかと思いつつ答える。


「……金色かな……。」


「金色だね……えっとねぇ……今年は人生の転機でしょう。まずは勇気を出す事です。」


そう由依のクラスで流行っているのは占いだ。言っとくが俺は信じてないからな。


「転機ねぇ……確かに進学か就職かも決めてないしな。んで、お前は?」


「私?私はねぇ。素敵な出会いがあるでしょう。小さな変化を見逃さないでください。」


……小3で素敵な出会いだと!?……ないない。あっても親父が認めねぇよ。


「ついでにねぇ。お父さんは会社の危機。リストラされない様に頑張れ。」


「円高だからな。」


さらっと流す。


「んで、お母さんは……子どもから嬉しいプレゼント。今年はいい年になりそう。」


ないな。プレゼント渡さないから。


とまあこんな感じの毎日を過ごしてる訳だ。後は父さんが帰ってきてちょっと話したら自分の部屋で寝るだけだ。


いや~、明日はいい日になると良いなぁ………そういや今日会った可愛い子……どっかで会った気がするんだよなぁ……まさかな……そうか…やっぱり罰ゲームはダメだな。


なんて事を思いながらゆっくりと深い眠り着くのだった。
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