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給料の世代間格差に変化の兆しが。高齢者以外は結局皆同じに?

賃金など労働者の待遇に中高年と若年層で格差があることは以前から指摘されているが、最近は世代間格差の状況がさらに複雑化してきている。

 厚生労働省がまとめた賃金構造基本調査では、2013年の労働者の月額賃金は前年比で2千円減少している。だがその減少幅は年齢によって大きく異なっている。

 20代前半については0円、20代後半はマイナス700円とほぼ横ばいの状況となっている。だが45~49歳では6800円のマイナス、40~44歳では5100円のマイナスとなっており、いわゆるバブル世代の賃金下落が激しいことが分かる。一方60~64歳では1600円の上昇、65歳以上では4000円の上昇となっている。

 この状況を見てバルブ世代だけが大きく損をしていると判断するのは早い。若年層は当初から賃金が安く昇給も制限されてきた。企業は若年層の賃金引き下げが限界に達したことから、賃金引き下げを中堅層にシフトしている可能性が高い。
 一方高齢者の賃金が上昇しているのは、高齢者を引き続き企業が雇うことを義務付けた高齢者雇用安定法の影響が大きいと考えられる。確かに60歳以上の高齢者については、年金支給開始年齢が引き上げられたとはいえ確実に年金の給付が受けられることを考えれば、客観的に見てかなり優遇されていると判断してよいだろう。
 だが50歳以上についてはバブル世代ほどではないにせよ賃金はやはり下落しており、全体的に見れば賃金がプラスになっているのは60歳以上だけという状況なのである。

 経済の基礎体力が落ちてくるにしたがって、日本は基本的に若年層にその負担を押し付けて対処してきた。だが景気の低迷が長引くにつれてそれだけでは対処しきれず、徐々に年齢層が上の社員の待遇を減らし始めている。
 この状態がさらに続けば、若年層と中高年層の格差は今後縮小していく可能性が高くなる。相対的に得をしたのは、現在すでに60歳以上になっている人だけという状況になってしまうかもしれない。

 安倍政権では経済界に賃上げを強く求めており、一部の企業はこれに応じる構えを見せている。だが相対的に賃金の安い非正規社員の数は増えており、賃上げが実施されても賃金の平均値はあまり上昇しない可能性が高い。同じく賃金の安い女性の労働者が急激に増加してきており、こちらも平均賃金を下げる方向に力が働く。
 さらにいえば生産拠点の海外シフトに伴い、労働者の製造業から非製造業へのシフトも起こっている。非製造業の賃金は製造業よりも低く、この動きも賃金低下圧力につながる。

 従来は世代間格差の問題が大きいはずだったが、景気低迷の期間があまりにも長かったことや日本経済の体質転換が進んでいることから、相対的に世代間格差が縮小する傾向が見え始めている。
 今後は賃金の絶対値をどう上げていくのかを真剣に考えていく必要がありそうだ。今まで日本人は目先の利益を優先し、経済の付加価値や生産性に関する議論を避けてきた。こうしたスタンスはもはや限界に来ていることを統計結果は示しているのかもしれない。

ニュースの教科書編集部
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