March 7, 2014
約61億光年先の銀河で、大質量ブラックホールが光の速さの約半分という超高速で自転している事実が判明した。観測には「重力レンズ効果」が利用されているという。
私たちの天の川銀河(銀河系)をはじめ、ほとんどの銀河中心には同様の巨大ブラックホールが存在する。RX
J1131-1231の超大質量ブラックホールの質量は太陽の23億倍。銀河系中心の400万倍とは桁違いの大きさだ。さ
らに、自転しているブラックホールとして最も遠くにある。
研究共著者でミシガン大学アナーバー校のマーク・レイノルズ(Mark Reynolds)氏は、「非常に速く、コマ
のように回転している」と話す。
ミシシッピ州オックスフォードにあるミシシッピ大学の天体物理学者エマヌエル・ベルティ(Emanuele Berti)
氏は第三・・・
私たちの天の川銀河(銀河系)をはじめ、ほとんどの銀河中心には同様の巨大ブラックホールが存在する。RX
J1131-1231の超大質量ブラックホールの質量は太陽の23億倍。銀河系中心の400万倍とは桁違いの大きさだ。さ
らに、自転しているブラックホールとして最も遠くにある。
研究共著者でミシガン大学アナーバー校のマーク・レイノルズ(Mark Reynolds)氏は、「非常に速く、コマ
のように回転している」と話す。
ミシシッピ州オックスフォードにあるミシシッピ大学の天体物理学者エマヌエル・ベルティ(Emanuele Berti)
氏は第三者の立場から、「しかも、ブラックホールの回転が確認されたほかの銀河よりも4倍以上遠い」と話
す。つまり、130億年以上前に形成された初期の銀河により近いことになる。
今後、高速回転の観測によって、初期銀河の形成プロセスの解明につながると期待が集まっている。
「銀河の形成に関する情報は、中心の超大質量ブラックホールの回転に含まれている。今回の観測が興味深い理
由だ」と述べる。
研究チームは、ブラックホールが放出するX線スペクトルの歪みを測定し、回転速度を割り出した。
レイノルズ氏によると、ブラックホールに落ち込む物質がX線を放射し、周囲を準光速で回転する降着円盤に
反射して放出されているという。
◆ブラックホールの“作り方”
銀河中心の超大質量ブラックホールは、小規模なブラックホールが結合し、ガスやちり、星などが重力で落ち
込んで成長すると考えられている。銀河系中心の「いて座A*(いて座エースター:Sagittarius A*)」の質量は
太陽の約400万倍。RX J1131-1231のように、数十億倍のブラックホールを抱える巨大銀河も数多く存在する。
しかし、最初からこのような巨大質量だったわけではない。ベルティ氏や他の天文学者によると、ブラックホ
ールの成長が一定だったか、波があるかを調べると、周囲を取り巻く銀河の形成過程も判明するという。
「銀河同士の遭遇や衝突など成長に波があると、回転はゼロに近づいていく」とベルティ氏。その場合、ブラッ
クホールは横からランダムにキックされたコマのように動く。回転エネルギーが奪われるためだ。
一方、成長する銀河の構造が整然としていている場合は異なる。水素ガスの巨大な雲が集結し、ときには小規
模ブラックホールが吸い込まれて、中心のブラックホールが着実に成長すると回転の速度は上がるという
「観測されたのは非常に高速な回転だ。つまり、初期銀河の形成は、整然とした構造を保っていたようだ」とレ
イノルズ氏は語る。いずれは、銀河系や太陽のような恒星の形成過程の解明につながる可能性も期待されてい
る。
◆クエーサーを探せ!
RX J1131-1231のようなクエーサーは、宇宙で最も強力なエネルギー源の1つだ。中心のブラックホールは強力
なジェットを放出して明るく輝き、天体観測で灯台のような役割を果たしている。
「NASAのチャンドラX線観測衛星でクエーサーのX線放出を観測できたのは幸運だった」とレイノルズ氏。という
のも、光学的な観測には「重力レンズ効果」が必要だからだ。
「重力レンズ効果を受けたクエーサーが、ちょうどよい位置関係に来ないと観測できない」とベルティ氏は説明
する。手前の楕円銀河の重力によってクエーサーからの光が歪んだおかげで、地球から質量を測定できるように
なった。これが、いわゆる「重力レンズ効果」だ。
研究チームは、より遠方の銀河も含めて同様のクエーサーをさらに探し、中心ブラックホールの回転を測定し
たいと考えおり、初期銀河の形成条件の解明につながると期待されている。
今回の研究結果は、「Nature」誌オンライン版に3月5日付けで発表された。
PHOTOGRAPH BY R.C. REIS/NASA/CXC/UNIVERSITY OF MICHIGAN