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精子提供で生まれた男性 遺伝上の父開示を
3月7日 19時13分

精子提供で生まれた男性 遺伝上の父開示を
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不妊治療の精子提供で生まれた横浜市の男性が、遺伝上の父親を知りたいと、治療を行った東京の慶応大学病院に対して、精子の提供者の情報を開示するよう文書で求めました。
精子提供で生まれた子どもは少なくとも1万人に上るとみられていますが、専門家によりますと、遺伝上の父親が知りたいと情報開示を求めるのは初めてです。

精子提供は、夫の精子では子どもができない場合、第三者から精子の提供を受けて人工授精で妊娠を試みる治療で、国内では、東京の慶応大学病院が中心になって戦後まもなく始まりました。
この治療で生まれた子どもは、ここ数年は毎年100人ほどで、これまでに少なくとも1万人に上るとみられています。
今回、情報開示を求めたのは、横浜市の医師、加藤英明さん(40)で、医学生だった11年前に授業で行ったDNA検査で父親と血のつながりがないことが分かり、母親から慶応大学病院で精子提供を受けたことを打ち明けられたということです。
加藤さんは、その直後、病院の医師を訪ね、提供者を教えるよう求めましたが、病院側は提供者の匿名を条件に治療を実施しており、両親も同意したとして回答は得らませんでした。
加藤さんは、この10年間、当時の医学部生が提供したとみて、卒業名簿から自分に似た人はいないかなど遺伝上の父親を探し続けてきましたが、手がかりは得られませんでした。
このため、7日、病院の医師に対して提供者の情報を開示するよう求める文書を郵送しました。
開示されなかった場合、法的な手続きも検討しているということです。
専門家によりますと、遺伝上の父親が知りたいと情報開示を求めるのは初めてです。
海外では子どもが遺伝上の親を知る権利を法律で認めている国もありますが、国内では、平成9年に日本産科婦人科学会が精子提供者のプライバシー保護のため、提供者は匿名とするというガイドラインを示しています。
加藤さんは「これまでの人生がすべてうその上に成り立っていたと感じ、自分の中に穴が空いているような感覚が消えず、遺伝性の病気があるかどうかも分からない。自分と同じ苦しみを味わう子どもたちがこれ以上増えないよう、すぐにでも提供者の情報開示を認める制度を整備してほしい」と話しています。
これについて慶応大学病院で精子提供の治療を担当している吉村泰典医師は「古い資料はほとんど残っていないが、そもそも提供者を匿名とするルールになっており、開示するのは難しい」と話しています。

「出自を知る権利」国内の現状

国内には、子どもが遺伝上の親を知る権利「出自を知る権利」を定めた法律やガイドラインはありません。
平成9年に日本産科婦人科学会が精子提供について定めたガイドラインでは、医師に対して精子提供者の記録を保存するよう求めたものの、プライバシー保護のため提供者は匿名とするとしており、出自を知る権利は認められていません。
一方、平成15年に厚生労働省の審議会が、精子のほか卵子や受精卵の提供を受けて行う不妊治療の条件についてまとめた報告書では、出自を知る権利の重要性を認め、15歳以上になった子どもが望めば、名前や住所など提供者を特定できる情報を知ることができるとしました。
報告書では制度の整備を求めましたが、その後、国会での議論はされず、いまだに法整備されないままになっています。
こうしたなか、去年11月、自民党が第三者が関わる生殖補助医療の法整備について検討する作業チームを設置し、議論を始めています。
作業チームでは、ことし中の法案の提出を目指していますが、出自を知る権利を認めるかどうかなど詳しい内容は決まっていません。

海外の現状は

海外では15年ほど前から子どもが遺伝上の親を知る権利「出自を知る権利」について議論が活発に行われるようになり、先進国を中心に法律で認める動きが広がっています。
法律で権利を認めている国では、提供者の情報は公的な機関で管理されていて、子どもが一定の年齢に達した場合、情報開示を求めることができる仕組みになっています。
提供者の情報をどこまで開示するかは国によって異なっていて、このうちイギリスやニュージーランドなどでは提供者の名前や住所など提供者を特定できる情報が開示されることになっています。
また、スペインやギリシャなどでは、提供者の国籍や病歴、それに遺伝的情報などの提供者が特定されない情報に限って開示するとしています。
一方、フランスやデンマークでは、日本と同じように提供者のプライバシー保護の観点から、一切の情報開示を認めていません。

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