大阪市長選:橋下流に手詰まり感…9日告示
毎日新聞 2014年03月07日 21時09分(最終更新 03月07日 22時22分)
大阪市の橋下徹前市長の辞職に伴う出直し市長選が9日告示される。政令市長選にもかかわらず、主要政党が軒並み候補擁立を見送る異例の選挙となる。政治的に行き詰まるたび、選挙に訴えて打開しようとする橋下氏の手法に各党が距離を置き始めているためだ。橋下氏が共同代表を務める日本維新の会も意気は上がらない。選挙戦の行方にかかわらず橋下氏の政界での求心力は低下しそうだ。
◇4党黙殺「敵」作れず
「自民、民主、共産は猛抵抗している」。橋下氏は7日、大阪市内で街頭に立ち、野党3党が市役所を残して既得権益を守ろうとしていると批判した。
橋下氏が「全政党が相手になる」と、3党に加えて公明党も敵に回した出直し選。公明は維新との協力関係を解消した形だが、全面対決する気など本来なかった。党内では、政府が今国会で成立を目指す地方自治法改正案を、大阪都構想が行き詰まった時の妥協案として検討しており、決裂を避けようと模索していた。
改正案は、政令指定都市と道府県が「調整会議」を新設するなど、二重行政の解消や都市内分権の方向性は都構想と重なる。松井一郎大阪府知事(維新幹事長)も「50点」と一定の評価はしていた。
「大阪の動きが国を動かしている」。橋下氏と公明が決裂した1月31日、都構想について議論する法定協議会で、公明の清水義人府議団幹事長はそう橋下氏を持ち上げ、改正案に維新が乗れるよう助け舟を出した。それでも橋下氏は協議を打ち切り、選挙での決着に踏み切った。
橋下氏は、行政組織や既存政党を「既得権益者」などと位置付けて敵に仕立て、激しく対決する手法で支持を集めてきた。知事時代には、全国学力テストの市町村別結果公表に慎重な府教委を「くそ教育委員会」と切って捨てた。市長就任後も、前市長を選挙応援したとして市職員の労働組合を庁舎から退去させた。相手との交渉で打開を図るのではなく、敵を作り出しては選挙に訴え、「民意」のお墨付きで突破しようとしてきた。
しかしその手法も限界に来つつある。代償として政敵を増やし続け、他党との調整が難しい政治状況を自ら作った。追い詰められて出直し選に打って出たものの、公明も含めた4党が黙殺で歩調を合わせ、標的を失った。4党の奇策には批判も根強いが、得意の「ケンカ」に持ち込めなかった橋下氏は計算が狂った。