Webアプリケーション開発の定番となった「PHP」。フレームワークもたくさんあり、これから学びたい場合、「どこから手を付ければいいのやら」と迷うこともあると思います。学習の流れもいろいろありますが、本連載では、PHPの「文法」を基礎から学んでいくことを目標とします。
プログラミング言語には、英語などの自然言語のように「文法」と「語彙」に当たるものがあります。この両方を習得して初めて自在に読み書きができるようになるのです。文法は読んで字のごとくですが、語彙はPHPに備わっているさまざまな機能や、フレームワークの使い方に相当します。
ただ語彙については、自然言語と同じく調べることが簡単にできます。英語の学習に例えるなら、英和辞書はPHPのサイトにあるリファレンスマニュアル、和英辞書なら逆引き系の書籍でしょうか。しかもサーチエンジンでもっと簡単に調べられます。うろ覚えでも何とかなるものです。
しかし文法は、ちゃんと覚えていないと書くことも読むこともままなりません。他のプログラミング言語を知っていれば類推もできますが、完全に「初めて」であれば、それも難しいでしょう。文法をきちんと学ぶというのは少し退屈かもしれませんが、とても重要なことなのです。
PHPは正式名称を「PHP:Hypertext Preprocessor」といい、C言語で書かれたオープンソースのスクリプト言語です。
他の言語にはないPHPの最大の特徴は、Webアプリケーションにフォーカスした言語であるということです。ただこの特徴は、文法的にはさほど大きく影響はしていません。機能的な部分が主なものです。
例えば、下記のようにHTMLの中に埋め込めるとか、実行環境をWebサーバーに組み込むことができるため高速に動作する、などです。逆に、WebではなくGUIアプリケーションは基本的には作ることができません。
<!DOCTYPE HTML> <html lang="ja"> <head> <meta charset="utf-8"> <title>PHPサンプル</title> </head> <body> <p><?php echo 'Hello, World!' ?></p> </body> </html>
PHPの歴史は意外に古く、20年近くあります。今の形になったのは、ここ15年くらいです。
当時Webアプリケーションを作る場合、「CGI」という規格に従って「Perl」などの言語が主に使われていましたが、これはWebサーバーにアクセスがあるたびに外部のプログラムを起動しており、性能的に限界がありました。一方、PHPでは前述のようにWebサーバー内に組み込むことで、そういったロスをなくすことができたのです(図2)。
HTMLとの親和性や速度というアドバンテージに加え、さまざまなデータベースなど外部のシステム対応が早く、また豊富だったのも拍車を掛けたと思います。さらに、ここ10年ほどで便利なCMS(「WordPress」が有名)やフレームワーク(「CakePHP」「Ethna」「FuelPHP」など)が登場し、その地位を確固たるものにしました。
現在PHPはバージョン5.5系列が最新で、2013年6月にリリースされました(参考「Windows XP/2003のサポートは終了:PHP 5.5.0リリース、パスワードのハッシュ化を容易に」)。今のところ5.4系列と5.3系列が並行してメンテナンスされています。5.3については5.5リリース以降、セキュリティアップデートのみとなりましたので、今のうちにバージョンアップが必要です。
PHP 5.5の新機能については、記事『さっくり理解するPHP 5.5の言語仕様と「いい感じ」の使い方』を参照してください。
本連載では5.5系列を対象として進めます。2014年2月の執筆時点では5.5.9が最新です。レガシーな部分は、コラムのような扱いでちょっと紹介するようにします。
ここからは、PHPを実行するための環境を作っていきます。PHPはWebブラウザーからアクセスして実行するため、Webサーバーも必要になります。ですが、現在のPHP(5.4以降)は開発用のWebサーバーを内蔵しているため、PHPのみをインストールするだけで利用できるようになりました。
PHPはさまざまな導入方法や関連ソフトウェアを同梱した統合パッケージがありますが、基礎を学ぶ上でできるだけシンプルな方法を紹介します。
まずはWindows環境ですが、別途配布されているバイナリを使います。配布サイトは「PHP For Windows: Binaries and sources Releases」です。64bit環境なら「x64 Non Thread Safe」を、32bit環境なら「x86 Non Thread Safe」の欄にある「zip」をダウンロードします。
ダウンロードしたzipファイルは、「C:\PHP55\」などのフォルダーに展開してください。フォルダー内の「php.exe」が実行ファイルです。
(Mac)OS Xでは「MacPorts」「Homebrew」といった、オープンソースソフトウェアの管理ツールを使ったインストール方法があります。
ここでは「PHP 5.5/5.4/5.3 for OS X 10.6/10.7/10.8/10.9 as binary package」による、コマンド1行でダウンロードおよびインストールができるシンプルな方法を紹介します。実行ファイルは「/usr/local/php5/bin/php」です。
$ curl -s http://php-osx.liip.ch/install.sh | bash -s 5.5
Linuxでは、各ディストリビューションのパッケージを使いたいところですが、PHP 5.5はまだ収録されていないことが多いでしょう。となると、非公式なパッケージを使うか、統合パッケージを使うか、ソースコードからインストールするか、ということになります。
今回はPHPのみのインストールという前提ですから、ソースコードからのインストールもシンプルにできますので、これを紹介します。ソースコードのアーカイブをPHPの公式サイトからダウンロードして適当なディレクトリに展開し、次のように実行します。
$ cd {ソースコードを展開したディレクトリ} $ ./configure --prefix={インストールしたいディレクトリ} $ make $ make install
「{インストールディレクトリ}/bin/php」が実行ファイルになります。
アンインストールは、どのOSでもインストールフォルダーを削除するだけです。
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