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聴覚・音響の専門教育を受けた一人として、低周波音問題研究会に参加してから数年が経ちました。

この会に入会し、機関紙のバックナンバーを拝読させていただいた際、音響学の視点から見て気になることがひとつありました。それは、低周波音による(と疑われる)被害の多くが、壁に囲まれた場所で発生しているという点です。低周波音が存在すれば、無条件に被害が発生する訳ではなく、どうも壁に囲まれた場所で被害が発生し易いようなのです。誰が聴いても大音量のうなり音を発生させる発電用風車による(と疑われる)健康被害でさえ、(ひょっとしたら私の不勉強のせいかもしれませんが)屋外で健康被害が出たという話は、ネットを調べても見つかりませんでした。

でも不思議なことに、低周波音被害を訴える側からも、その存在を否定する側からも、今の所、「壁に囲まれた場所で」という条件に言及する声は聞こえてきません。音響学的に見ると、壁で囲まれた空間では、特定の場所で、特定の周波数の音の音圧だけが高くなる、定在波という空気振動がしばしば発生します(この現象を、壁の外から見ると”共鳴”になります)。低周波音の影響を、”科学的”に解明しようとする学者さん達は、壁に囲まれた場所ではなく、見渡す限り周囲に何も無い場所(自由音場)を模擬した無響室での実験で、問題に白黒つけようとしていますが、無響室では定在波は発生しません。果たして無響室が、低周波音(の関与が疑われる)被害が発生している現場の環境を、適切に模擬できるのか?疑問が残ります。

さて、もし、低周波音による(疑いのある)健康被害が発生している場所では、低周波の、つまり、非常に波長の長い定在波が発生していると仮定すると、音波とは、空気の分子の密度が高くなったり低くなったりする現象ですから、波長が長いということは、その場所周辺の空気の分子密度が長時間変動し続ける、つまりその場所では小さなな気圧変動が続いていることになります。

そうすると、その気圧変動は音として感じ取れなくても、三半器官や、例えば肺などの内臓に影響を与える可能性があり、聴覚への影響の有無だけでは、健康被害の有無を判断できないことになります。

実際、低周波音による(疑いのある)健康被害の訴えでは、めまいや鼻血、頭が重いといった、耳鼻科系の症状に似た訴えも多く、私自身が立ち会った低周波音の被害調査でも、部屋の窓や扉を閉め切った時に被害が生じ、開け放つと被害がなくなるという、定在波の関与を示唆する被害例を確認しています。

低周波音による健康被害が実在するのかどうか? 肯定するにしても否定するにしても、科学的な結論を出すには、従来のような、聴覚理論に基づく(音として認知できるかどうか?の)検証だけでは不十分ではないか?もっとはっきり言えば、聴覚から問題を解明しようとするのは、ひょっとしたら筋違いなのではないか? という気もしています。

個人的には、「微少な気圧変動の継続が人体に与える影響」の科学的解明が、問題解決の鍵になるような気がしています。

佐藤宏
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