福島第1原発事故 痕跡今も生々しく 過酷な現場、ミス誘発
福島第1原発事故から3年となるのを前に、東京電力が1.2号機の中央制御室を報道機関に公開した。津波で全電源が喪失する中、社員が初期対応に当たった痕跡を残す。汚染水流出などのトラブルも相次ぎ、最長40年と言われる廃炉工程の道のりは険しい。
(福島総局・山崎敦)
<水位メモ残る>
制御室は広さ800平方メートルで壁に計器類が並ぶ。1、2号機のコントロールタワーだ。事故当時の様子を体験してもらおうと、東電社員が明かりを消した。窓がない部屋は瞬時に暗闇となった。
その間5秒。社員が手にしたペンライトが計器類の横に殴り書きされた原子炉水位を映し出す。
「1:24 +130cm」
時刻に加え、核燃料頭頂部を基準にした水位が記されていた。メルトダウンまでの時間を推定できる重要な情報だ。
時系列に記された数字を追うと、水位は徐々に上昇していた。1号機原子炉建屋が水素爆発したのは2011年3月12日午後3時36分。水位は低下傾向を示すはずで、計器がその時点で壊れていた可能性が高い。
放射線量が毎時1ミリシーベルトに達した事故発生時、東電社員41人が現場に残り初期対応に当たった。暗闇の中、命懸けで壊れた計器をメモしていたのかと思うと、やるせない気持ちになった。
初期対応に当たった作業員は全員、第1原発以外で働いている。「多量の放射線を浴び、第1原発では働けない」(東電)からだという。
<事故後絶たず>
汚染水を貯蔵する地上タンクエリアに向かった。タンクから100トンの超高濃度汚染水が漏れたH6エリア近くを通る。
流出は、人為的に配管の弁を開閉し、タンク水位の警報を「誤報」と見誤る二重のヒューマンエラーが引き起こした。
2号機原子炉の温度計破損、4号機につながるケーブルの破損。ヒューマンエラーによる重大事故が後を絶たない。ケーブル破損では使用済み核燃料プールの冷却停止を招いた。
取材陣は防護マスクと防護服姿。視界は遮られ、声はくぐもる。スムーズな身動きも封じられる。頭はマスクで締め付けられ、痛み始める。人為ミスの続発は過酷な労働環境が影響している。
「完全にアンダーコントロール」。取材で原発に入るたび、安倍晋三首相の言葉と現実の隔たりを感じる。
2014年03月07日金曜日