私は難聴――物ごころ付いた頃からの難聴。聴力は両耳ともに50dBとも60dBとも言われ、体調により上下する。この数字だけで見れば、軽度難聴から中等度難聴の範囲であり、身体障害者手帳が交付される事は無い。
私は健聴者と共に育ち、健聴者として社会に溶け込んでいる聴覚障がい者でもある。普段の生活の中では、私が難聴である事を他人が看破する事は至難の業であろう。とは言っても、聴覚障がい者独特のなまりが多少あるためか、聴覚障がい者に接点のある人はすぐに私の事に気付く。そして、補聴器を両耳に装着しているため、これにより難聴者である事にやっと気づく人は多い。
このサイトは、ひっそり暮らしている難聴者とはどう言うものなのかを説明する為に立ち上げたものである。軽度難聴で身体障がい者とされていないとは言え、その人が歩む世界は健聴者とは全く違った世界である。「ちょっと聞こえにくいだけ」などと簡単に説明するべきでは無い。些細な事がその人の人生を大きく変え、大きな誤解を生んでいる。だが私自身、悲観に満ちた人生を歩んで来た事は無い。「素晴らしき人生」と断言する事も出来る。これは姉達や友人、そして多大な愛情を持って接してくれた両親のおかげである。だが、難聴でも軽度とは言え、常に感じてしまうある種の疎外感、孤独感、無能感――そして現実感との遊離。
もし、あなたの周りに難聴者が居て、その人の気持ちを知りたいと思ったら、もし、あなたの大事な家族が難聴になったら――そんな時の為にこのサイトが役に立つ事を願う。