年金運用:「株価対策」の見方も…国債中心見直し

毎日新聞 2014年03月06日 21時38分(最終更新 03月06日 21時53分)

 厚生労働相の諮問機関、社会保障審議会年金部会の専門委員会は6日、公的年金の積立金を運用している「年金積立金管理運用独立行政法人」(GPIF)に対し、国内債券中心の運用を見直すよう求めた報告書案を大筋で了承した。一義的には、高収益を見込める資産への投資を増やすことが目的だが、株価を重視する安倍晋三政権の経済政策「アベノミクス」の一環とも受け止められている。

 年金保険料を財源とする約120兆円の資金運用をするGPIFに関しては、どんな資産を何%ずつ持つかを定められている。国内債券は60%±8%、国内株式は12%±6%−−といった具合だ。

 国内債券が6割を占めるのは「国債は手堅く安全」とされるためだ。だが、政権内には「みすみす高収益を得る機会を逃している」との見方も強くあり、同専門委は6日、リスクはあるが高収益を狙える資産への投資を増やすよう求めた。GPIFは先月、海外の先進国を中心にインフラへの投資を始めることも発表済みだ。

 ただ、政権の成長戦略に対する市場の評価が芳しくない中、運用見直しを「株価対策だ」(民主党議員)と受け止める向きも多い。資産に占める国内株式の保有割合が12%±6%(最大18%)と決められている現状では、株価がアップして18%の枠を超えると保有株を売らざるを得ず、逆に株価下落につながる。そこで国内債券の保有比率を下げ、その分株式などの割合を高められるようにしようとしている、との見立てだ。

 一連の見直しには「年金資金は安全に運用すべきだ」「運用に政治が介入するのは危険」との懸念もくすぶる。学習院大学の鈴木亘(わたる)教授(社会保障)は「(アベノミクスで)インフレが起きるとインフレ分だけ長期保有する国債の価値が目減りする可能性がある。運用の自由度を高める方向性はいい。高い運用利回りを求める政府の影響を受けて過度なリスクを取らないよう、組織のガバナンス(統治能力)を構築する必要がある」と指摘している。【佐藤丈一】

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