STAP細胞:作製手順公表 研究成果の証明
毎日新聞 2014年03月05日 21時01分(最終更新 03月06日 09時08分)
理化学研究所は5日、新たな万能細胞「STAP細胞(刺激惹起<じゃっき>性多能性獲得細胞)」の詳細な作製手順をホームページなどで公表した。STAP細胞は、理研など日米研究チームが1月末に作製に成功したと英科学誌ネイチャーで論文発表したが、国内外の研究者から「実験を再現できない」との報告が続いていたことへの対応。
理研は公表について「多くの研究者が再現する一助とし、さらなる研究の発展につなげたい」と説明する。
研究チームは論文で、生後間もないマウスのリンパ球を弱酸性の溶液に30分浸し、1週間培養することで、体内のあらゆる細胞になれる能力を持つSTAP細胞ができたと報告し、論文には簡単な作製法を載せた。
だが、2月中旬から論文で使用した画像などに不自然な点があるとの指摘が相次いだほか、実験の再現性にも疑問の声が上がっていた。
公表された作製手順は、理研発生・再生科学総合研究センターの小保方晴子研究ユニットリーダーらが執筆。生後1週間を超えたマウスでは作製効率が大幅に低下する、雄マウスの方が効率が高いなど、元になる細胞の採取から培養に至るまでの注意点を順に示した。今後さらに詳細な解説も公表していくという。【八田浩輔】
◇存在自体を疑う声に「反論」の公表
STAP細胞を巡って、理化学研究所の研究チームは1月末の発表時、作製手法の簡単さを強調した。だが、実験が再現できたとの報告はなく、論文の一部画像に不自然さが指摘されたことも重なり、STAP細胞の存在自体を疑う声も出ていた。
科学の世界では、新たに登場した成果は、広く再現されることによって評価が固まる。山中伸弥・京都大教授が作製したiPS細胞(人工多能性幹細胞)も、世界中で再現され、研究が広がった。
画期的な技術の場合、早々に詳細を公開すれば、激しい研究競争で先行者としての利点を失うきっかけになりかねない。理研がその点も踏まえ、論文発表直後に詳細なノウハウを公表したのは、成果への強い自信を示すとともに、外部の再現実験を促し、「論文の結論は揺るがない」という認識を広めて事態の沈静化を図ろうという意図がうかがえる。