京大:iPS細胞だけ光らせる化合物発見 未分化細胞識別
毎日新聞 2014年03月07日 02時20分
京都大の研究グループは6日、ヒトの多能性幹細胞(iPS細胞やES細胞)だけを光らせる化合物を発見したと発表した。多能性幹細胞は、組織や臓器になる細胞への分化が不十分なものが残ったまま移植すると、がん化する危険性がある。この化合物を使えば、未分化な細胞を簡単に識別することが可能になるという。再生医療の安全性の向上に役立つ成果で、7日付の米科学誌「セル・リポーツ」に掲載される。
研究グループは、326個の蛍光化合物の中から、ヒトの多能性幹細胞内で強く発光するが、分化後の細胞では光が弱くなる化合物を見つけ出し、「KP−1」と命名した。グループには山中伸弥教授も参加している。
グループによると、KP−1は、特定のたんぱく質の作用で、分化後の細胞では細胞外に排出される。しかし、未分化の細胞内では、このたんぱく質の働きが弱いため、細胞内にとどまり、発光すると考えられるという。
実験の結果、血液幹細胞や心筋細胞などさまざまな種類の細胞で、未分化の多能性幹細胞を判別することができた。グループの京都大物質−細胞統合システム拠点の上杉志成(もとなり)教授(化学生物学)は「抗体で細胞に目印をつける従来の方法に比べ、培養液中にKP−1を添加するだけで簡単に見分けられる」と話している。【堀智行】