ぷるぷるメモ

アクセスカウンタ

help RSS 『先輩からの手紙』 (1)

<<   作成日時 : 2013/07/20 19:28   >>

ブログ気持玉 0 / トラックバック 0 / コメント 0

 『先輩からの手紙』は、私からの簡単な質問に対して、大学時代の先輩から届いた便せん約40枚の長文の手紙のことです。数回に分けて投稿いたします。
 手紙は、手紙本体と知人に宛てた手紙のコピーからなっています。
 この手紙が届いたその年(1998年(平成10年))に、先輩は、病気でこの世を去りました。
 今もたびたびこの手紙を読み返して、内容の理解に努めています。
 (個人に関する部分は省略しています。)


「前略、年賀状での一方的な申し出に、早速に答えていただき本当にありがごとうざいました。

 貴君の文章を読ませて頂いて、改めてここ(あしかけ)十年の変化の激しさを思わずにはいられませんでした。
時代の変化もさることながら、学会の中も、相当に一般活動家の中に不満がたまり、求心力を失い、崩壊を食い止めるのに精いっぱいのように見受けられます。
そして、それ以上に小生自身は変化したのかもしれません。

貴君の指摘されるように、脳科学、心理学は極めて有効だと思います。それ等の他にも、生物学の分野の最近の展開には目を見張るものがあります。免疫理論の成果も実に示唆に富んでいますし、サル学の長年の蓄積も人間の能力についての従来の神話を打ち壊してくれます。これらの様々な学問領域が相互に交流しながら、所謂「生命学」といえるものを生み出し始めたと明確に言える状況です。

仏教についての理解も、河合隼雄さんの「ユング心理学と仏教」や養老猛司さんの諸著作を読むと実に的確に深い理解がされるようになったと思いますし、分子生物学者の柳沢桂子さんの著作などでも「空」の理解など、実にきちんと捉えています。そして、多分、これ等の傾向を代表するものとしてトランスパーソナル心理学のメンバーを挙げることができようかと思います。
仏教の側にも、中村元さんを中心とする東方学院のメンバーや唯識とトランスパーソナル心理学を融合させようとする岡野守也の著作や内観療法のグループ、森田療法の後継者のグループなど様々な取り組みが見られます。

このような動きを見ていますと極めて近い将来、宗派や教団の壁は言うに及ばず、(イスラム圏やヒンズーの動き等は少々予測不可能な面がありますが)東西の文化的差異が急速に縮小して高度に機械文明、物質文明を発展させた結果生じてきている「人類共通の課題」として人間の脳の持つやっかいな側面を正面から問題として採り上げる総合人間学という領域が誕生してくるものと思います。

その総合人間学の共通のテーマは、
@ 過剰の中で暴走する人間の脳のバーチャル性にどう歯止めをかけ、正気の状態を取り戻していけるのか。
(環境や食糧、人口問題などの制約を思考の中で検証できる、個々の脳の成熟を如何に図っていくのか、と言い換えられるでしょうか)

A 仏教でいえば、十界論に代表される境涯の問題や宿業の問題、心理学でいえば、深層心理や無意識の問題。
それの形成にかかわるトラウマの問題を始めとする家族関係のあり様。
精神分析でいえば集団無意識や神話の及ぼす影響、等々。
人間の認識と価値判断や行動が如何に揺れ動き易く、偏頗なものになり勝ちであるかを正確に評価したうえで、如何に正鵠を得た認識を共有しうるのかという認識形成とその教育の問題。


B 共感とか、喜びとか、希望とか、人間及び(多分、動植物を含めた様々の生命体が内包しているであろう)生命の持つ溌溂とした状態と、それと正反対の硬直や死をもたらすものへの多角的なアプローチ。

C 個性というものへの多角的アプローチ。(生命の持つ個性化指向)

 このようなことが、現在、小生の頭には浮かんできます。

 無論、これ以外にも、身体論、技術論、都市化の問題および巨大組織、巨大機構の問題とそれに伴う情報社会化の問題などが考えられますが、取り敢えず問題を拡大する方向よりは、一個の人間の脳の成熟をどう図っていくのかを中心に置いてもらいたいものだという小生自身の願望があるのです。」

《つづく》

月別リンク

ブログ気持玉

クリックして気持ちを伝えよう!
ログインしてクリックすれば、自分のブログへのリンクが付きます。
→ログインへ

トラックバック(0件)

タイトル (本文) ブログ名/日時

トラックバック用URL help


自分のブログにトラックバック記事作成(会員用) help

タイトル
本 文

コメント(0件)

内 容 ニックネーム/日時

コメントする help

ニックネーム
本 文
『先輩からの手紙』 (1) ぷるぷるメモ/BIGLOBEウェブリブログ
[ ]