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異世界でハーレムしてるけれど、まだチートに目覚めない僕にベリンダが振り向いてくれないっ!【小説家になろう大賞2014 応募作】 作者: 

第四章

第二十号 目覚めと出会い

 ひとり、部屋の中に取り残された龍之介は、ぶつぶつとつぶやいていた。
「あぁ、どんどん楽になる。俺を苦しめているウイルスを破壊してくれたのかな……」
 ガラスが割れる音がした。
「さっきから下が、うるさいような気がする」
 床がカリカリと音を立てている。低い破壊音。
「なんだ?」
 龍之介は体を起こした。
その途端、床が抜けた。ふわりと宙に浮いたかのように感じたが、すぐに落ちて行った。
しかし――
緩やかに地についた。なにが起こっているのか理解できていない。
龍之介は思った。
周りを見回すと、悪魔祓いの祈祷師達がいた。
龍之介は縮こまった。全員フードつきのローブをはおっていて、目深にかぶっている。
「僕になんの用で?」
 そう言った龍之介を無視した祈祷師のひとりが彼を棒で殴りつけた。
彼らは龍之介を連れて行く。龍之介は恐怖に押しつぶされていた。
黙って連れて行かれることにした。
 車に乗せられる。
遠くで陽子が叫んでいるのが聞こえた。
「どけえっ! 龍之介を返せ!」
 辺りに爆発音が響く。
だが、陽子は龍之介を救うことができなかったようだ。
車は発進し、あっという間に別荘を後にした。


『まぶしい』龍之介はつぶやいた。
 白い世界。一面が白色。
「お前は誰だ」
 若いけれども、凛とした声が夢世界に響いた。
 龍之介は焦点を合わせることができない。
「お前は何者だ」女性が質問を繰り返した。
『龍之介です』弱々しい声。
 女性の声は後ろから聞こえるようにも感じるし、前から話しかけているようにも感じる。頭の中から聞こえるような気がした。
「別荘でなにをしていた」
『風邪を引いたので、寝ていました』
 頭を揺れているような気がする。女性が質問を変える。
「なぜお前は悪魔につき従うのだ」
 龍之介は答えない。
「お前はなぜ、極悪非道を重ねる悪魔に肩入れするのだ」
『サタンさんは、極悪非道を重ねてなんかいない。僕たちを助けてくれた。僕たちの前ではなにも――』
 龍之介の頭に激しい衝撃。
「黙れ! 悪魔は人類、いや全生物の敵! それに疑いの余地もない」
 語気を荒げる女性は、なおも衝撃を加える。

「夢……」
 龍之介は目を覚ました。目の前には女の子と老人がいる。老人は、
「待て待て、時間はたっぷりある。()くでない急くでない」
 と話した。彼女は龍之介から一歩下がって、老人の前にひざまついた。
「しかし、司教様。……急がねば、世界が危ういのです」
「ベリンダ、焦ってはならないよ」
 司教はべリンダの肩を撫でた。息を荒くしていたベリンダは深呼吸を繰り返す。
「はい、司教様。申し訳ありませんでした」
 頭を垂れる龍之介は、べリンダが夢世界によく登場する女の子であることに気がついた。
 龍之介はなにか熱いものを感じた。

 かわいい。
 容姿端麗で金髪碧眼。
お人形よりも美しい。
人間離れしていて、言葉に表せない。
自分に話しかけていたドリームワールドの住人。
サラサラの髪をなびかせる夢世界人。
世界を救う?
そんな夢を見たことを思い出した。べリンダは僕のことを知っているのだろうか。
仲良くできるといいな。
せめて、お友達に――
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