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異世界でハーレムしてるけれど、まだチートに目覚めない僕にベリンダが振り向いてくれないっ!【小説家になろう大賞2014 応募作】 作者: 

第二章

第十号 ドリームワールド

 翔の部屋。
『正午くらいかな?』
 そこには部屋の主と涼介がいた。
ふたりは、またテレビを見ている。

 テレビ。
「――そもそも性別はわかっていません。顔をしっかりと確認した目撃者もいないのです」
「娘と称していますし、女性だといいですよね」

「どういいいのか、よくわからんアナウンサーだな」涼介は舌打ちをした。
『僕も同意する』
 突然、翔が涼介に質問した。
「サタンの娘は涼君のことだよね?」
「……そうだとしたら?」彼は唐突の質問にも動じなかった。
「涼君は嘘をつくのが苦手なんだよ」
 翔がコップを取り、お茶をすする。
「別に僕は、これからも涼君と一緒にいるけれどね。ただ、犯罪を続ける理由を聞きたいなと思って」
 涼介は翔を見た後、うつろな目をした。
「お前のことを話してもいいか?」
 翔は首をかしげた。
『え? もしかして僕じゃないよね。なにが起こるのかな……?』

 翔の無言の問いに答えることなく、涼介は訥々(とつとつ)と話し出す。
 悪魔との出会いを。
今日は涼介も昼食を食べるようだ。
「薄味だな」と不平。
「薄味が体にいいのさ」

そんな不満を漏らしながら涼介が説明する。
翔は真剣に聞いているらしい。
「俺は人一倍、気がしっかりしているうえに、悪魔以上に深い闇に包まれているのかもしれない」
 地平線に身を隠し始めた太陽。
涼介が携帯電話を手にする。
「――もう、こんな時間か。ところで、悪魔は俺に憑りついたことを後悔してるみたいだぞ」
「……うんっと、つまり?」
理解しようと努めているのか、翔が必死なのがわかった。
「悪魔が生き物に憑りつくことはある。しかし、悪魔が囚われの身にされるのは前代未聞らしい」
「悪魔の歴史書にも載っていない珍事ってことだね」
 翔はようやく理解できたとでも言いたげな口調。
「そうそう。まさか、自分が憑りつかれていたとは思いもしなかったらしい。サタンは俺に自分の力を与える代わりに、悪事を働く人間を罰することを要求した。断る理由がない」
 いつのまにか翔の顔色は白くなっていた。
「お前、だいじょうぶか。横になってた方がいいんじゃないのか?」
涼介は動揺しているらしい。
「……だいじょうぶ、よくわかった。その、サタンさんと僕は直接話せないのかな?」
「――無理だ。俺の中に閉じ込められてる」涼介は即答した。
「どんな理由があっても、人を傷つけるのはどうかと思うのだけれど」
「仕方ないんだよ。それでも、お前が納得しないことは聞かなくてもわかる。だから、聞くな」
 翔は苦しそうな顔をして、
「いままでは、生きるとはなにか。人類の存在意義はなにかを考えていたけれど、たったいま、新たな課題を見つけたよ。悪魔の存在だね。それと――」
「あんま、難しく考えるなよ」涼介が話を遮った。
「いいじゃないか。サタンさんは、悪魔じゃないって言ってたけれど、真の悪魔はだれかな?」
「悪魔祓いの祈祷師だ、って言ってるぞ」涼介が伝えた。

 サタンによると、神を語って邪神を奉らせている宗教が数多くあるらしい。
実際には神が存在せず、市民たちの信仰心だけで集まっているという集団もあるらしい。
 サタンが率いる一派は、邪神が人類を惑わすのを防ぐために働いている。
第一次世界大戦では、インフルエンザを流行させた。第二次世界大戦末期には、各国指導者に憑りついて戦争終結に努力した。
「もっとほかの手がなかったのかな」と翔が尋ねた。
 サタンは、犠牲なくして早期終結はあり得ないと答えた。人間にしては強力な魔力を持っている指導者もいたそうだ。
サタンでさえも太刀打ちできなかった。邪神が憑りついていたためである。
その棟梁を捕虜にした涼介の力はいかなるものかと、サタンはふたりに問いかけた。

 悪魔たちの結論は、戦争はなくならない。人口が増え続ける限り、それは不可避である。人口増加に伴い戦争が起こるのは普遍的である。共倒れするわけにはいかないからだ。

 冷戦中にも手を尽くしたサタンであったが、ここ最近は手に負えなくなってきた感じているらしい。
というのも、正義を語る集団が、魔法を使って勢力を拡大していたからだ。
さらには複雑な世界情勢である。
ここ百年で人類は進化しすぎた。何千年にも及ぶ人類観察の中でも、ここまで危機的な状況になっているのは、初めてだとサタンは考えている。
「へぇ。ということは、サタンさんは完全な悪じゃないんだ。涼君が呪い殺されなくて良かった」翔はそんなことを言った。

 平和という課題を何千年と考えてきたらしい。生きる喜びを。
 その間に、地球を支配するものは、人間となり加速度的に人間の侵略が進んだ。
サタンは人間を愛している。
すべての人間が平和に過ごしてほしいと願っている。
だが、それを成し遂げることはできない。
話を聞いた翔は驚嘆した。
「サタンさんこそが、地球で一番平和を求める者なんでしょうね」

 ピザの注文がされていたらしい。
涼介はそれを手に取った。
暗い夕日が、翔の部屋をさしている。涼介が説明を再開した。
「魔法にはふたつある。白魔法と黒魔法だ。黒魔法は悪魔が使う。人間は使うことができない。サタンがいる俺には黒魔法を使うことができる。黒魔法はとても単純。破壊魔法だからだ。声の大きさの二乗に比例する」
「声量の自乗か……」
「だが、魔力にも限界がある。使い切ると二度と魔力を溜めることができない。もちろん、溜めることができる量もそれぞれであり、サタンは、一度に放出する魔力の量、魔力の単位時間当たりの回復量、魔力の保存量も、悪魔の中で抜きんでている」
「凄いんだねぇ」翔は信じているのか信じていないのか、そのように棒読みした。
「自称、この世界の中で一番らしい。俺はサタンに魔力を補給してもらいながら、活動をしていたんだ」
 翔がうなずく。
「白魔法には、攻撃魔法がほとんどないらしい。闇払い師たちは結界を張ってるから、サタンでさえも入るのに苦労して、詳しくはわからないらしいが」
 涼介はコーヒーを飲んだ。翔は微笑んだ。
「いつもブラックだよね。砂糖でもいれたらどうかな?」
「俺が砂糖もミルクも入れないこと知ってんだろ?」
 翔は笑っている。
「――ともあれだ。神に祝福されし者に与えられた力は、悲しくも有限だ。使わなくても、溜まることはない。魔法を使えば、自身の生命を削られる。教会は否定しているが事実だ。白魔法が神の力だと言えるのか? 俺には悪の力だとしか思えない」
 翔はすこしの間、黙っていたが口を開いた。
「それは悪魔側の主張だよね。自分の目で見ない限り、わからないんじゃないかな……」
「――俺にとっては破壊こそが生きがいなんだよ」

 太陽がすっかり地に沈んだ。
悪魔が動き出す時間。
それは、悪魔祓い師の活動時間でもある。
 龍之介は夢の世界から抜け出すのを感じた。
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