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異世界でハーレムしてるけれど、まだチートに目覚めない僕にベリンダが振り向いてくれないっ!【小説家になろう大賞2014 応募作】 作者: 

第一章

第二号 出会い

 寒い風がずっと吹いているなか、段ボールは使い主が振り向いてくれる方法を考えた。
「ぼっちはアニメが好きだ。特に空想のお話が好き。『くそアニメ』が好きって言ってたもん!」
『ネット小説の異世界ものとか、マジ飽きる。似たようなものばっか、大量生産しやがって。無駄遣いだ』と使い主が言っていたのを真に受けたのだろう。
「ぼっちは、素直な人間じゃない。つまり、これはぼっちなりの愛情表現に違いないんだ。好きなものは後に取って置く……」
「異世界アニメの第一話を五分見たあとに、「つまらん」と言って、違うアニメに変えるのは、そのアニメが面白くてしょうがないからだよね。本当にかわいいんだから、えへへへ……」
 段ボールを寒い風が打ちつける。
「ぶるぶふ……、ぼくがぼっちを更生させる。願いをかなえるよ。君を異世界に連れて行ってあげる。お礼はしなくていいんだよ。魔法がある世界なら、人間と同じように話せるし、これでぼくのことを好きになってくれるはずだね。一石三鳥になるよ!」
 段ボールは自画自賛を交えながら、使い主への想いをつづっていたが、
「でも、無理だ。ぼくには力がない」
「ある」
「!」
 段ボールの前に世界が現れた。
金髪の女の子が祈りをささげていた。
女の子は、段ボールの意識に入って来た。
「あなたには、力がない。だから、私が力を与える」
「なにを言っているんだい」
「あなたには世界を救う崇高な思想を理解する力がある」
「ぼくはダンボールだ。人間を理解しているとは言い切れないよ」
「『私たちの世界』は間もなく滅ぶ。『あなたの住む世界』に、救世主となる人物がいる。あなたの想う人」
「ぼっちのことかい?」
「あなたが一番想う人には力がある。人間としてはひどく『できそこない』な人物」
「ぼっちをいじめるのかい?」
「いいえ」
「ぼくを連れて行くならそうすればいい」
「ふたりいて初めて力を発揮する」
「ぼくたちがなぜ、君たちの世界を救わないといけないんだい? なぜぼくにお願いするの? ぼっちは十分すぎるほど傷ついている」
「本人は私の問いかけに答えない。君しかいない。どちらにしても、君が連れて来なければ、彼は来ない。その世界で出来損ないと罵られながら生きるか、こちらの世界で英雄に仕立て上げられるか、あなたが決めるといい。あなたたちが来なければ、私たちの世界は滅ぶ。ただそれだけ。あなたたちとは無関係なのだから」
「君たちの世界の住人は、ぼっちを必要としているのかい? 世界が違っても、「人間」に必要とされている。そうかい?」
「そう」
「わかった。君の世界を救いに行くよ、ぼっちを連れて。君の名前を教えてくれるかな?」
「――私は悪魔祓いの祈祷師ベリンダ」
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