楽しめないならやるな!決定版To-doアプリWunderlistの開発者が語るアプリ開発の心得

2014.03.06 21:00

ワンダーリストとクリスチャン・リーバー.jpg


ライフハッカーではここ数年、Todoアプリ「Wunderlist」をイチオシしています。発表当初のそのシンプルで使いやすいデザインに魅了されただけでなく、ToDoの共有、Eメール通知、タスクの反復など、アップデートのたびに追加される新機能もまた素晴らしい。そして、Wunderlistをイチオシしているのは私たちだけではありませんでした。なんと、Appleが選ぶ「2013 App of the Year」にも選ばれたのです。

今回は、Wunderlistの創設者でCEOのクリスチャン・リーバー(Christian Reber)さんに、アプリ誕生の舞台裏について伺いました。


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── Wunderlistのアイデアは何がきっかけで生まれたのでしょうか。あなた自身が直面していた問題の解決策としてですか? それとも、何か別のきっかけがあったのですか?

リーバー:共同創設者の面々とは、Wunderlistの会社「6Wunderkinder」を立ち上げる前から、ウェブ制作の仕事を一緒にしていました。複数のクライアントを相手に、いくつものプロジェクトを同時に進めていたのです。規模の拡大に伴い、信頼できるプロジェクトマネジメントツールが必要になってきました。そこで既存のツールをいろいろ試したのですが、毎日使いたいと思えるものは1つもありませんでした。

どのツールにも共通の問題点があったのです。それは、複雑さ、モバイルとデスクトップの両方で使えるアプリがない、同期ができない、の3点。それならば自分たちで作ってしまおうということになりました。それがWunderlistです。我々のようなニーズを持つ人たちに向けて、美しくてシンプルなアプリを作りたいと思い、ビジネスだけでなく日常生活のToDoも管理できるようなものを目指すことにしました。


── アイデアを思いついたあと、次に取った行動はなんですか?

リーバー:具体的なアイデアはありませんでしたが、解決すべき問題は明確にありました。その点が、初期の成功の一因だったのではないかと思います。Wunderlistは、シンプルで直感的、かつ美しくて速い商品を作ることでその問題を解決しようという試みの結果として生まれたものだったのです。

我々は試作品を作り、それを持ってたくさんの投資家のもとに足を運びました。そして、幸運にもあるエンジェル投資家の注意を引くことに成功したのです。その2カ月後、Mac版およびWindows版のWunderlistをローンチ。その後も、iPhone版、iPad版、ウェブ版、Android版を続々とリリースしました。そんな中、ローンチ時の成功を耳にした海外投資家から連絡をいただき、Atomico(Skypeチームの一員)との間に投資契約を結ぶことができました。これにより、Wunderlistの成功が確実なものになったのです。


── ターゲットとするプラットフォームをどのように選びましたか?

リーバー:最初は何も決めませんでした。むしろ、できるだけ多くのプラットフォームをサポートするという明確な目標を定め、Blackberry、Linux、Windows Phoneも含め、ほとんどすべてのプラットフォームに対応するアプリを作りました。

正直そのころは、アプリの種類が増えすぎると開発期間が大幅に遅くなるなんて、誰も想像できませんでした。ところが実際は、あるアーキテクチャで1つの変更をすると、すべてのクライアントアプリケーションに影響が及びます。これによって発生する作業量は、1つのウェブアプリケーションしかないのと比べると雲泥の差だったのです。そこでようやく我々は、急成長中で人気のあるOSに集中することに決めました。具体的には、iOS、OS X、Android、Windows、ウェブ(Chrome OS含む)です。

現在、Wunderlist 3の制作に取り掛かっています。対応プラットフォームの拡大だけでなく、デザインとテクノロジーの両面から、商品全体を再考しているところです。特にWindows版は、もうすぐエキサイティングな発表ができる予定です。

このプロセスが始まったころ、「できるだけ多くのプラットフォームに対応しながら、高品質なソフトウェアを作り続けるにはどうしたらいいのだろう」と、自問自答を繰り返しました。新バージョンは、今後数カ月以内に発表されます。それは、Wunderlistをあらゆる人の日常に組み込むことができる、非常に大きなステップとなるでしょう。斬新なデザイン、一層軽くなったインターフェース、リアルタイムの同期、そして、APIの公開。もはやWunderlistは単なるToDoアプリではなくなるでしょう。


── 最も苦労したのは何ですか? また、それをどのようにして乗り越えましたか?

リーバー:たくさんありますよ。今でも同じですが、集中が何よりも難しかったです。これはきっとほとんどのスタートアップやビジネスに当てはまると思います。何かで成功を収めれば、もっともっと成長を試みるのが企業というものです。我々の場合、それは機能の追加やプラットフォームの拡大でした。新たな商品開発を試みたこともありました(Wunderkitを覚えてる人もいるでしょう)。これは明らかに「集中の欠如」なのですが、1つの商品に毎日取り組んでいると重要なことだけに集中するのが難しくなってくるのです。

当社では現在50人が働いていますが、チームが大きくなればなるほど、小さな断片をつないできめ細かな商品を作り上げていく作業が難しくなります。スキルも意識も高い人が増えるほど、独自の方法で会社に貢献したくなるのです。ときには、個人が独自の機能を作り始めたこともありました。全プラットフォームに共通の商品体験を提供するために、我々は常にチームとして集中するように意識する必要があるのです。

最も苦労したのは、間違いなくWunderlist 2のローンチでした。でもそれは、これまでで最大の教訓にもなっています。大きな壁にぶつかった時、過去の経験を思い返すと、何が重要で何に集中したら良いかが分かるのです。


── ローンチした時はどのような感じでしたか?

リーバー:いい質問ですね。私はよく、商品開発をフットボールクラブの設立に例えます。選手を決め、鍛え、試合に参加してやっと勝ち負けが決まる。これは会社でも同じこと。チームを雇い、最初のバージョンを作るために一生懸命働き、ローンチする。そして、初めて成功か失敗かが決まるのです。

商品のローンチはとてもエキサイティングなので、テンションとモチベーションが上がります。でも同時に、極限まで空気が張りつめてストレスも高まる、とても厳しい時間でもあります。フットボールチームにファンがいるように、スタートアップにもファンがいます。ファンが外から見ている風景は、中で起こっていることとは異なる場合がほとんどなのです。でも、むしろ私はそれが楽しい。心から商品設計やアプリ開発が好きなんだと思います。


── ユーザーの要求や批判にはどのように対応していますか?

リーバー:当社では新機能の人気投票フォーラムを用意していて、Wunderlistを改善するためのアイデアが積極的に寄せられています。入力されたリクエストはお客様コミュニティ全体に公開され、投票を受け付けます。これにより、どの程度のお客様がその機能を待ち望んでいるかを知ることができるシステムです。ここで得たデータが、商品のロードマップになるのです。

また、当社宛てのメール、ツイート、Facebookメッセージは必ず目を通すようにしています。お客様が求めるものを敏感に感じ取る嗅覚を養うためです。Wunderlist 3はユーザーの要望をしっかり反映できている自信がありますね。


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── 「新機能の開発」と「既存機能の運用」に割く時間の比率はどれくらいですか?

現在は、メジャーアップデートであるWunderlist 3のローンチに100%集中しています。Wunderlist 3は新しい中核となる予定で、数々の新機能でお客様をあっと言わせるべく基礎を固めているところです。

新機能に関するプロセスはシンプルです。いちばん大事なものを選び、それをローンチする。そして、次に大事なものを選びローンチ。この作業を延々と繰り返すのです。既存機能はそう簡単にはいきません。なぜなら、既存機能の場合、磨き上げる作業やアーキテクチャの変更が主となるからです。既存機能の変更にはより多くの作業が必要であり、直接的な成果もわかりにくいものです。予定通りに動いていない機能を発見したらもちろんそれを変更しますが、Wunderlistにある全機能を磨き続けていくことも忘れません。


── 同じような挑戦をしたいと考えている人に対して、どのようなアドバイスをしますか?

一般的には、自分の問題を解決することですね。私はこれまでそうしてきました。私が作る商品は、自分が喉から手が出るほどほしいものだけです。とは言え、アドバイスは相手の持つ背景によって変わってきます。私はプログラマーとデザイナーのハイブリッドなので、両方の世界を理解して繋ぎ合わせる方法を知っています。

商品開発には情熱と忍耐が必要です。それから、楽しいと思えないことはやらない方がいいでしょう。やると決めたのなら、まずはいちばんシンプルなものを作ることから。機能の優先順位付けとデザインのシンプル化は容赦なく。トレンドは無視して、人々の人生に付加価値を与える商品を作ることです。


Tessa Miller(原文/訳:堀込泰三)

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