アイスランドの向こう見ずで若い投資家たちは6年前に経済を破綻させ、リーマンショック以前にはバンカーの無謀ぶりの象徴となったが、小国のアイスランドを国際金融の大舞台にのしあげたのも事実だ。
そして今、経済破綻の遺産を打ち消そうとしている1人のアイスランドの技術者が、仮想通貨の世界で似たようなことを成し遂げた。ただし今回は、2008年の金融危機の背後にあった「大きすぎてつぶせない」金融機関を救うという古い考えとは対極にある構想が土台となっている。
彼が発明した「オーロラコイン」として知られる「alt.coin」は、価格変動が激しいものの、仮想通貨の時価総額ランキングで一時、ビットコインに次ぐ2位に躍り出た。
coinmarketcap.comによると、現時点でオーロラコインの時価総額は3億8100万ドル(約389億円)。4日時点と比べ51%減少したが、2月27日と比べると約12倍だ。3月4日までは別の仮想通貨ライトコインを上回っていた。「採掘前」の1060万オーロラコインの価値は現在、1コイン当たり39.71ドル(約4000円)だ。
ビットコインが金だとするとライトコインは銀に位置付けられている。ビットコインの時価総額は83億ドル、ライトコインは4億2300万ドルとされている。
このランキングでは、公正な比較ができないため、やはり別の仮想通貨であるリップルは除外している。リップルの時価総額は16億ドルだが、他の仮想通貨が使用している分散型ネットワークとは大きく異なる中央管理方式で発行体がその大半を保有しているためだ。
小国のアイスランドが快挙を達成した要因の1つは、オーロラコインには近くに大衆市場があることだ。「Baldur Friggjar Odinsson」の偽名で活動している発明者は、3月25日に仮想通貨をネット上で「空中投下」し、国のIDデータベースに登録されている33万人の国民一人一人に31.8オーロラコインを付与する計画を立てている。アイスランド国民はインターネット接続率やコンピューターの精通度では世界でも指折りだ。
そのため投資家は、この新しい通貨が大衆に受け入れられる機が熟しているとみている。また、アイスランドは仮想通貨の普及のための実験室のような役割も果たす。
仮想通貨付与計画は、アイスランドの厳しい資本規制に真っ向から歯向かうものだ。同国政府は当初、資本規制は2008年の混乱期の一時的な措置と明言していたが、それから5年以上たってもまだ残っている。規制によって、アイスランド国民は国内外の資本移動が制限されている。一方、政府は自国通貨アイスランド・クローナの価値を必死に守ろうとしている。オーロラコインのウェブサイトでは、新しい1000クローナ札がジンバブエの1垓ジンバブエ・ドルに変わっていく画像で通貨下落が表現され、オーロラコインがこうした通貨のわなから逃れる方法として示されている。
Odinsson氏はメールのやりとりで「オーロラコインの重要な点は、アイスランド国民にクローナの代替通貨を提供することだ。クローナを使うと投獄されたかのような苦痛を余儀なくされる」とし、「アイスランド国民は、海外の通貨取引所におけるドルや他の外国通貨のように、好きな場所でオーロラコインを売り、好きな物を買うことが自由にできるようになる。中央銀行や政治家の許可を得る必要もない」と述べた。
オーロラコインの発明者が偽名を使うのは、ビットコインの謎の発明者「中本哲史」氏の戦略と似ている。発明者はこれについて、「当局は権力に挑む者を攻撃する。だから、こうした攻撃から身を守るために北欧神話から名前を取った」と述べた。アイスランドの中央銀行は仮想通貨に声高に反対し、政府はビットコインに敵対的な姿勢を取っている。
北欧神話では、Baldur(バルドル)は神々の王であるOdin(オーディン)の息子で、Frig(フリッグ)は最高位の女神。発明者はnorse-mythology.orgでBaldurについて、最も愛されている神の1人で、「ずる賢く不誠実な」神のロキに殺される寛容で明るく勇敢な神様」と説明している。
オーロラコインにいかに妥当だとしても、Odinsson氏は、6日間で投機筋がオーロラコインの価格を25倍にしたり、その後、半値にしたりすることを手放しで喜んでいるわけではない。価格が上昇すれば、この仮想通貨を購入して使う人が現れるかもしれないが、急落したり激しく変動したりすれば、みな怖がって逃げてしまうかもしれない。
発明者はメールで「個人的には、オーロラコインの価格がもっと緩やかに上昇してほしかった」と述べた。
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