March 6, 2014
スバールバル世界種子貯蔵庫(SGSV)が2万品種の作物の種子を新たに受け入れた。
貯蔵庫の6周年を祝うように、100カ国以上に起源を持つ種子が一斉に送られてきた。貯蔵庫のパートナーであるグローバル作物多様性トラストの上級研究員ルイジ・グアリーノ(Luigi Guarino)氏によれば、貯蔵庫は世界の食物の遺伝的多様性を守る“貸金庫”であり、北極圏にあるノルウェー、スバールバル諸島の高度な施設に82万619品種の種子を貯蔵しているという。
貯蔵庫の目的は、可能な限り多くの作物を消えてしまう前に安全に保存することだ。われわれはほんの一握りの最も収穫量が多い果物や野菜、穀物に頼るようになったため、それ以外の何千もの品種が驚くべき速さで失われている。
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貯蔵庫の6周年を祝うように、100カ国以上に起源を持つ種子が一斉に送られてきた。貯蔵庫のパートナーであるグローバル作物多様性トラストの上級研究員ルイジ・グアリーノ(Luigi Guarino)氏によれば、貯蔵庫は世界の食物の遺伝的多様性を守る“貸金庫”であり、北極圏にあるノルウェー、スバールバル諸島の高度な施設に82万619品種の種子を貯蔵しているという。
貯蔵庫の目的は、可能な限り多くの作物を消えてしまう前に安全に保存することだ。われわれはほんの一握りの最も収穫量が多い果物や野菜、穀物に頼るようになったため、それ以外の何千もの品種が驚くべき速さで失われている。
気候変動や一晩にして1つの品種を絶滅させてしまう病気など、将来の不確実性を考えると、できる限り多様な品種を保存しておくことが重要だと科学者たちは口をそろえる。
すでに多くの大学や研究所が作物の遺伝子バンクを保有している。基本的には乾燥種子の冷蔵庫だ。ただし、グアリーノ氏によれば、これらの施設は内戦や台風、火事といった災難に耐えられない可能性があるという。そこで世界滅亡の日のための種子貯蔵庫(Doomsday Seed Vault)とも呼ばれるスバールバル世界種子貯蔵庫の出番だ。
貯蔵庫が新たに受け入れた種子をいくつか紹介する。
◆“宇宙ビール”にもなったオオムギ
貯蔵庫は今回初めて日本からの種子を受け入れた。岡山大学のゲノム多様性グループが送ったオオムギ575品種の種子で、さらに5000品種を送る計画もある。
日本では2011年の地震と津波を機に、オオムギの専門家たちが遺伝子バンクの信頼性を懸念するようになっていた。
オオムギは伝統的な“和食(washoku)”を作り出す穀物のひとつで、醤油や味噌の原料になるほか、麦茶、明治期以降はビールやウィスキーも作られている。
日本のビール生産大手のサッポロビールは2010年、国際宇宙ステーション(ISS)のロシアのサービスモジュール、ズベズダに5カ月滞在した種子から栽培したオオムギで限定商品“宇宙ビール”を生産している。
岡山大学資源植物科学研究所の教授、佐藤和広氏は声明の中で、「オオムギは日本だけでなく世界の食糧安全保障にとって非常に重要な存在だ」と述べている。「われわれは乾燥地や塩分がある土壌でも生産性の高い品種を保有している。未来の世代がこれらの品種をいつでも栽培できるよう、われわれはできる限りのことをしなければならない」。
◆イモを守る
グアリーノ氏によれば、南はパタゴニアから北はアメリカ、コロラド州で栽培されている200品種近い野生のイモの一部は2050年までに絶滅する恐れがあるという。原因は生息地の消失や気候変動だ。
そこで動いたのが国際イモセンター(CIP)だ。CIP は野生のジャガイモ195品種と野生のサツマイモ61品種の種子をスバールバルの貯蔵庫に送った。これらの品種を守るとともに、さらに栄養価が高く、病気に強い品種を開発する目的もある。
◆トウモロコシ、コムギ
貯蔵庫が初めて受け入れた“農業の至宝”はこれだけではない。国際トウモロコシ・小麦改良センター(CIMMYT)はトウモロコシ1946品種とコムギ5964品種の種子を貯蔵庫に送った。
世界中の村々で何世紀にもわたってユニークなパンになってきたコムギの種子がスバールバルに集まった。
グローバル作物多様性トラストのブライアン・レイノフ(Brian Lainoff)氏はスバールバル世界種子貯蔵庫について、「世界が一つになって農業のために何ができるかを示す」存在だと述べている。
PHOTOGRAPH BY PAUL NICKLEN, NATIONAL GEOGRAPHIC