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【ビジネスの裏側】鳴り物入り大阪新名所『グランフロント』開業1カ月「来場760万人でも客単価657円」の“激辛決算”
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JR大阪駅北側の複合ビル群「グランフロント大阪」が4月26日に開業して1カ月が経過した。この間の来場者数は累計約700万を超え、東京スカイツリータウン(約581万人)や阪急百貨店梅田本店(約400万人)をしのぐ盛況ぶりだ。専門店街の売上高も50億円と目標を上回るペース。ただ来場者1人当たりの売上高は700円以下とややさみしい数字。様子見の客が多いのが主な要因だが、「大阪人には高価すぎる」(関係者)のも原因…?
グランフロントには開業初日から多くの人が詰めかけ、大型連休明けの5月6日までで約367万人が訪れた。その後も客足は衰えず、平日で1日10~20万人を集め、同月25日までに来場者は約761万人にも上った。
「日本初」「関西初」を中心に266店舗を集めた専門店街は連日黒山の人だかり。特にスペイン発のインテリアショップや、米ニューヨークから上陸した人気ベーカリーカフェは“満員御礼”が続いている。
専門店街の売上高は1カ月で50億円を突破した。専門店街の初年度の売上高目標は400億円で、このままなら優に達成できるペースだ。
しかし、1カ月での来場者1人当たりの売上高は657円。初年度の来場者目標は2500万人で、売上高は1人当たり1600円が必要となる見込みだ。つまり、当初の“想定”よりも来場者がお金を落としていないということになる。
グランフロントの関係者は「様子見の客が多い。混雑の中で疲れてしまい、見るだけで帰る人も少なくない」と分析する。実際に買い物をした客の単価は3千~4千円という。
この関係者はその上で、「専門店街のカード会員数は順調に拡大し、リピーターが増えてきている」と強調。「滞留時間も伸びており、じっくりと買い物や飲食をする人が増えていくだろう」と売り上げ拡大に期待を寄せる。
しかし売上高を引き上げるには懸念が残る。関西大学大学院の宮本勝浩教授は「グランフロントは値段の張るいいものをそろえていて、大阪の消費者向きではない」と指摘する。
宮本教授によると「物珍しさから最初は客が押し寄せるが、いいものを安く買いたい大阪の消費者には響かないのではないか」という。実際、グランフロントのあるバーでは300ミリリットル程度のビールが平均で800円程度するなど、割高感が目立つ。
これは不振が続く大阪駅ビルの百貨店「JR大阪三越伊勢丹」と同じ状況だという。“東京志向”の品ぞろえに、大阪の消費者の反応が鈍いというのだ。
グランフロントでは今夏、オープン後で初となるバーゲンを予定している。来場者増、売上高アップにつながることは間違いないが、売上高の拡大ペースをどこまで維持できるかは不透明だ。
宮本教授は雑貨店「東急ハンズ」や、カジュアル衣料の「ユニクロ」を誘致した大阪駅ビルの百貨店「大丸梅田店」を引き合いに出し、こう話した。「グランフロントも方向転換し、大阪人が好む値段を抑えた商品もそろえる“二刀流”がいいのではないか」