社説
河野談話検証 米韓との溝深めないか(3月6日)
安倍晋三政権が、従軍慰安婦問題で旧日本軍の関与と強制性を認めた河野洋平官房長官談話の検証に乗り出した。
談話作成過程において、日韓間で意見の擦り合わせがあったかどうかを中心に検証するという。
韓国側は河野談話の見直しにつながる動きだとして強く反発しており、冷え込んだ日韓関係がさらに悪化するのは必至だ。日韓に関係改善を促している米国からも批判を招く恐れがある。
河野談話は日本政府の公的な見解として国際社会に定着している。安倍政権も踏襲する立場だ。
慰安婦問題については日韓の学識者らによる研究も進んでいる。日米韓の連携強化が急がれるこの時期に、あえて政府が率先して検証する必要があるのか。
検証を強く求めたのは日本維新の会だ。集団的自衛権行使容認のための憲法解釈見直しなどに同党の協力を得るのが検証の狙いなら、近視眼的に過ぎる。
検証のきっかけは、談話発表当時に事務方トップだった石原信雄元官房副長官が参考人として出席した衆院予算委での発言だ。
談話は元慰安婦16人の証言に基づき作成したが、石原氏は裏付け調査はしなかったと証言した。作成に当たり、韓国側と擦り合わせがあった可能性にも言及した。
だが、談話は日本政府が元慰安婦の証言を事実と認定し、内閣の意思として発表したものだ。歴代政権も踏襲し、談話に基づいて日本の外交上の立場を積み重ねてきた。尊重すべきなのは当然だ。
韓国の朴槿恵(パククネ)大統領は「三・一独立運動」記念式典の演説で慰安婦問題に初めて具体的に言及し、検証の動きをけん制した。
ただ、各国首脳との会談で日本の歴史認識を持ち出すなど朴氏のかたくなに過ぎる姿勢は、日本の談話見直しの動きを勢いづかせかねない。冷静な対応を求めたい。
自民党の桜田義孝文部科学副大臣は、維新幹部らの呼びかけで開かれた河野談話見直しを求める集会に出席し、活動に賛同する考えを示した。政府幹部がこんな姿勢では、オバマ米政権の日本への不信感も増幅するばかりだ。
首相は第1次政権で「慰安婦問題で強制性を裏付ける証拠はなかった」とする答弁書を閣議決定し、第2次政権発足前には河野談話の見直しを主張していた。米韓から疑念を持たれても仕方がない。
首相が米韓との連携を強めたいと本気で考えているのなら、これ以上波風を立てるべきではない。
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