韓国:「証言だけで慰労金対象」元徴用工巡り判決

毎日新聞 2014年03月05日 21時25分

 【ソウル澤田克己】ソウル行政裁は5日、戦時中に日本で働かされた韓国人元徴用工の負傷について、家族らの証言だけでも韓国政府が慰労金を支給すべきだという判決が出たことを明らかにした。

 判決は2月28日付。1940〜45年に大阪で労働者として働かされた男性(78年死去)の遺族が、大阪で腰に深刻な障害を負ったと主張して、韓国政府傘下の「支援委員会」に慰労金支給を求めていた。

 韓国の関連法では、強制労働の結果として深刻な障害を負ったことを証明する資料があれば慰労金が支給される。この男性の場合、証拠がないと申請を却下されていた。

 判決は、男性が30年以上前に死去したことから「客観的・具体的な資料提出は事実上不可能」と指摘。終戦時に10歳だった娘を含め、複数の人物が同じ証言をしていることなどを根拠に「強制労働中に障害を負ったと見ることができる」と認め、慰労金の対象になりうると判断した。

 元徴用工を巡っては、個人請求権を認める韓国の司法判断が日韓間の懸案となっている。今回の判決は個人請求権に直接関係しないが、証拠がなくても救済すべきだという判断は波紋を広げそうだ。

 ソウル行政裁の広報担当者は毎日新聞に「元徴用工は、事情がそれぞれ違う。今回の判断は異例のものだ」と話した。

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