政治インフラの改革は、政治の活力を取り戻すためです。民意を忠実に反映する選挙制度は政治不信を少しでも払拭することが狙いです。議会制度の見直しは停滞する政治に活力を付与することです。行政機構の見直しや連邦制の導入も、政治の効果的・効率的な実現を模索することが狙いでした。
これらの政治インフラを実現するためには、政治インフラの総本山の見直しが不可欠となります。すなわち憲法の改正です。
連邦制を導入するならば地方自治に関する憲法の条項を修正する必要があります。それに伴い、参議院を州の代表者で構成する議会と位置付け、一票の格差を無視した選挙制度を設けるとすれば、一票の価値の平等を定める現行憲法はやはり改める必要があるでしょう。参議院で否決した場合の再可決要件の緩和にも憲法改正が必要です。
この点で、最後に、憲法改正のあり方について議論する必要がります。具体的には憲法の改正要件を定めた憲法96条を改正するかどうか、という問題に焦点を当てたいと考えます。
現在の憲法96条は、憲法改正に際し、衆参両院において全議員の3分の2以上の賛成で改正を発議し、国民投票を行うことを定めています。問題は3分の2以上という改正のハードルが妥当かどうか、ということです。
安倍首相は2013年の参院選前に憲法96条の先行改正を訴えました。これには賛否両論ありますが、本書は96条の改正自体には賛成です。
先行改正が問題になる理由は、先行改正の是非ではなく、安倍首相の改正の意図にあります。自民党は大規模な改憲案を策定し、続いて安倍首相が96条の先行改正を訴えました。そこで広範囲の支持を得られなかったためか、参院選後、憲法改正の議論は下火となり、集団的自衛権に関する憲法解釈の変更が議論されています。
このような動きをみれば、始めから狙いは憲法9条にあり、9条の改正のための96条先行改正だったのではないか、と疑問視されても当然といえます。96条の問題は、それ単体の問題です。他の条文を変えるために改正要件を緩和するという考え方だとすれば、これは姑息と受け取られても仕方ないでしょう。
正面から、憲法は両院で3分の2以上の賛成を経なければ発議できないほど、改正に高いハードルを設けるべきか議論すればよいことだと考えます。
これまで記載した通り、必要な改革のために憲法の改正が必要ならば、改憲を妨げる理由はないと考えます。政治インフラ改革、現代的な安全保障政策を実施するための憲法9条の改正など、憲法は絶対に変えてはならないものではないはずです。議論を重ねることは自由です。
問題は、改正のためのふさわしいハードルはどこか、ということです。
憲法改正が実際に視野に入り始めた背景には、小選挙区比例代表並立制が導入され、小泉政権期の郵政選挙以降、地滑り的な勝利が起こるようになってからではないかと考えます。それまでの衆議院の中選挙区制度では、自民党が与党単独で3分の2以上の議席を得たことは一度もありません。
衆議院で3分の2という議席を獲得したことで、初めて憲法改正が視野に入り始めたといえます。後は参議院です。憲法改正が与野党の政治的争点となれば、参議院でも3分の2をめぐる激しい戦いが展開されます。現に2013年の参院選では、改憲を志向する政党が3分の2の議席を獲得するかに注目が集まりました。
このような参院選は、本書が提案してきた参議院の役割とは相容れない選挙戦です。参議院は権力闘争の場ではなく、あくまでも良識の府です。先述の通り、選挙の目的も政党を選ぶことではなく、個人を選ぶことにあります。
解散のある衆議院ならば、憲法改正を争点に3分の2の議席数をめぐる選挙戦が行われても問題はないと考えますが、参議院は6年の任期が保障されています。憲法という単一の課題だけでなく、さまざまな課題に答えを出さなければなりません。参院選は憲法改正という単一の争点のためだけに議員を選ぶ選挙ではないはずです。
憲法改正をめぐる与野党間の議席数争いは衆議院に限定すればよいと考えます。参議院では憲法改正案であっても、通常の法案通り質の高い実質的な議論が行われることが重要です。その議論さえ経ているのならば、最終的な採決では過半数の賛成・反対で可決・否決を判断してもよいのではないでしょうか。
安倍首相の96条先行改正案は衆参ともに過半数というものでしたが、本書は衆議院のみに3分の2以上の賛成を求め、参議院は過半数でもよいと考えます。政権が争われる衆議院で3分の2以上の賛成を得たならば、その改正案には一定の正統性があります。参議院では「数は力」ではない、良識の府にふさわしい審議が行われればよいはずです。
これらの政治インフラを実現するためには、政治インフラの総本山の見直しが不可欠となります。すなわち憲法の改正です。
連邦制を導入するならば地方自治に関する憲法の条項を修正する必要があります。それに伴い、参議院を州の代表者で構成する議会と位置付け、一票の格差を無視した選挙制度を設けるとすれば、一票の価値の平等を定める現行憲法はやはり改める必要があるでしょう。参議院で否決した場合の再可決要件の緩和にも憲法改正が必要です。
この点で、最後に、憲法改正のあり方について議論する必要がります。具体的には憲法の改正要件を定めた憲法96条を改正するかどうか、という問題に焦点を当てたいと考えます。
現在の憲法96条は、憲法改正に際し、衆参両院において全議員の3分の2以上の賛成で改正を発議し、国民投票を行うことを定めています。問題は3分の2以上という改正のハードルが妥当かどうか、ということです。
安倍首相は2013年の参院選前に憲法96条の先行改正を訴えました。これには賛否両論ありますが、本書は96条の改正自体には賛成です。
先行改正が問題になる理由は、先行改正の是非ではなく、安倍首相の改正の意図にあります。自民党は大規模な改憲案を策定し、続いて安倍首相が96条の先行改正を訴えました。そこで広範囲の支持を得られなかったためか、参院選後、憲法改正の議論は下火となり、集団的自衛権に関する憲法解釈の変更が議論されています。
このような動きをみれば、始めから狙いは憲法9条にあり、9条の改正のための96条先行改正だったのではないか、と疑問視されても当然といえます。96条の問題は、それ単体の問題です。他の条文を変えるために改正要件を緩和するという考え方だとすれば、これは姑息と受け取られても仕方ないでしょう。
正面から、憲法は両院で3分の2以上の賛成を経なければ発議できないほど、改正に高いハードルを設けるべきか議論すればよいことだと考えます。
これまで記載した通り、必要な改革のために憲法の改正が必要ならば、改憲を妨げる理由はないと考えます。政治インフラ改革、現代的な安全保障政策を実施するための憲法9条の改正など、憲法は絶対に変えてはならないものではないはずです。議論を重ねることは自由です。
問題は、改正のためのふさわしいハードルはどこか、ということです。
憲法改正が実際に視野に入り始めた背景には、小選挙区比例代表並立制が導入され、小泉政権期の郵政選挙以降、地滑り的な勝利が起こるようになってからではないかと考えます。それまでの衆議院の中選挙区制度では、自民党が与党単独で3分の2以上の議席を得たことは一度もありません。
衆議院で3分の2という議席を獲得したことで、初めて憲法改正が視野に入り始めたといえます。後は参議院です。憲法改正が与野党の政治的争点となれば、参議院でも3分の2をめぐる激しい戦いが展開されます。現に2013年の参院選では、改憲を志向する政党が3分の2の議席を獲得するかに注目が集まりました。
このような参院選は、本書が提案してきた参議院の役割とは相容れない選挙戦です。参議院は権力闘争の場ではなく、あくまでも良識の府です。先述の通り、選挙の目的も政党を選ぶことではなく、個人を選ぶことにあります。
解散のある衆議院ならば、憲法改正を争点に3分の2の議席数をめぐる選挙戦が行われても問題はないと考えますが、参議院は6年の任期が保障されています。憲法という単一の課題だけでなく、さまざまな課題に答えを出さなければなりません。参院選は憲法改正という単一の争点のためだけに議員を選ぶ選挙ではないはずです。
憲法改正をめぐる与野党間の議席数争いは衆議院に限定すればよいと考えます。参議院では憲法改正案であっても、通常の法案通り質の高い実質的な議論が行われることが重要です。その議論さえ経ているのならば、最終的な採決では過半数の賛成・反対で可決・否決を判断してもよいのではないでしょうか。
安倍首相の96条先行改正案は衆参ともに過半数というものでしたが、本書は衆議院のみに3分の2以上の賛成を求め、参議院は過半数でもよいと考えます。政権が争われる衆議院で3分の2以上の賛成を得たならば、その改正案には一定の正統性があります。参議院では「数は力」ではない、良識の府にふさわしい審議が行われればよいはずです。