アニメは子供向け−という概念を破った「機動戦士ガンダム」のテレビ放送から今年で35周年。今なお衰えない人気の秘密を探ろうと、ガンダム生みの親の創作の原点に迫る初の伝記漫画『「ガンダム」を創った男たち。』(KADOKAWA)が刊行された。不朽の名作誕生の裏で繰り広げられた壮絶な葛藤が明かされる。(戸津井康之)
「大人を夢中にさせる、かつてないアニメを作ろう」。総監督、富野由悠季(よしゆき)さん(72)の掲げた目標に、キャラクターデザイナーの安彦良和さん(66)、メカニックデザイナーの大河原邦男さん(66)が共鳴、“3つの才能”が結集し伝説のアニメは生まれた。当時3人は30代。その後、富野さんは作家としても活躍、安彦さんは漫画家に、大河原さんはメカニックデザイナーという職業を確立、ともに現役の第一線で活躍している。
『「ガンダム」を創った男たち。』は漫画家の大和田秀樹さん(44)が、3人や当時のスタッフらに取材、創作過程の秘話を漫画で再現していく。
ガンダム以前、アニメ番組のスポンサーの多くが玩具メーカーで「アニメは玩具のCM」という状況にアニメ製作者は甘んじていた。「そんな時代に3人はガンダムでこの常識を覆したのです。しかし、伝説を創った3人なのに伝記と呼べるものがこれまでなかった。35年を機に3人の記録を漫画で残したかった」と大和田さんは言う。
漫画では、メカデザインを担当した大河原さんの“秘策”も明かされる。大河原さんは、主人公メカのガンダムについてはメーカーの意向を尊重したが、玩具化の計画のなかった敵メカのザクは自分の思うままに現実の兵器のようなリアルなデザインで描き上げる。放送後、プラモデル化されたザクはメーカーの思惑に反し、ガンダムと人気を二分するメカに成長。バンダイのプラモデル「ガンプラ」は30年間で累計4億個を超えるヒット商品となった。
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