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香港でマスコミへの襲撃が相次ぐ

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2014年3月6日(木)

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 2月26日の朝、クルマから降りた劉進図氏は、近づいてきた男に背中と足を刺された。犯人はオートバイに乗った共犯者と共に逃げ去った。重傷を負った劉氏は病院に緊急搬送された。その後、同氏の容体は安定した。

 これは初めての事件ではない。香港では近頃、劉氏と同じように中国政府に反発していると思われる標的に対する襲撃が相次いでいる。昨年6月には、香港のメディア大手ネクストメディア・グループに覆面をした3人の男が押し入り、従業員を脅して、「アップル・デイリー(蘋果日報)」2万6000部を燃やした。同紙は反共産党のスタンスを取る有名な日刊紙だ。

 同月、週刊誌「アイサン・アフェアーズ(陽光時務週刊)」発行人の陳平氏が、こん棒を持った男たちに襲われた。同誌は中国本土のデリケートな問題に切り込むことで有名だ。さらに、中国に批判的なことで有名なトーク番組司会者、李慧玲氏が解雇されるという出来事もあった。

共産党幹部親族の隠し資産を暴露

 冒頭で紹介した劉氏は1月まで、過激な調査報道で知られる中国語新聞「明報」の編集長を務めていた。劉氏の後任には、誰が見ても明らかに体制を支持する人間が充てられた。このため編集部員たちは、抗議運動を繰り返すとともに、経営陣に対して劉氏解任の理由を説明するよう求める陳情書に署名した。だが、今のところ回答は得られていない。

 劉氏襲撃事件の3日前、香港では数千人が報道の自由を求めて街頭デモを行った。明報のあるスタッフによれば、劉氏は人々の先頭に立って、「ニュース編集室に干渉しようとする見えざる圧力への抵抗」を示していたという。

 劉氏の下で同紙は、一部の中国共産幹部が海外に資産を隠し持っていることを暴露する報道――非営利の報道機関「国際調査報道ジャーナリスト連合」による――の一翼を担った。その資産の中には、習近平国家主席や温家宝前首相の親族が所有する企業の株も含まれている。これらの企業は海外のタックスヘイブン(租税回避地)に登記されていた。

 香港記者協会のシャーリー・ヤン副会長は、劉氏が襲撃された事件を「香港の報道機関及び表現の自由への挑発」だと呼んだ。この事件に中国政府が関わっている証拠は全くない。しかし、今は地方の政治家をしている元ジャーナリストのクラウディア・モー氏は、「従順でなければ痛い目に遭うだけだという、香港の報道機関への警告」のように感じられると述べた。

 パリを本拠地とする国際的なジャーナリスト団体「国境なき記者団」が発表した、世界の報道の自由度ランキング2013で、香港は61位だった。2002年の第1回ランキングで獲得した18位をはるかに下回っている。

©2014 The Economist Newspaper Limited.
Mar. 1st, 2014 All rights reserved.

英エコノミスト誌の記事は、日経ビジネスがライセンス契約に基づき翻訳したものです。英語の原文記事はwww.economist.comで読むことができます。

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