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日記

kahoの日記: STAP細胞の非実在について 29

日記 by kaho

なめてますね,これ.
何と言って,理研の対応です.

STAP論文についての手技解説の発表,だそうですが,これは無意味です.
なぜなら,STAP細胞など存在しないから.
間違った書き方をしたとか論文制作の作法のことではありません.「存在しない」のです.
私は証拠も提供しました.しかし,受け入れられなかったようです.

この論文は画像の捏造や文章のコピペ,結果の解釈の間違いなど多数の指摘がされています.
それらは大問題で,問題の大きさとしてはこれだけで論文の撤回があってしかるべきです.が,私はそこはあえてここでは語りません.他の場所で語られているからということもありますが,もっと本質的なこと,つまり「STAP細胞は存在しない」ことを問題にしたいからです.

どうしてSTAP細胞が存在しないといえるのか?
私はこの論文のインサイダーではありません.従って誰がどのように間違いを犯したかどのような意図を持っていたかといったことは分かりません.
しかし,彼らが公開しているデータから彼らの捏造,少なくとも完全な誤りは証明できます.
彼らはそうとは知らず,自分たちの捏造を世界に公開しているのです.

どのデータから?
それは,次世代シーケンサーの生データからです.
今回の論文(2報)のうち片方ではChIP-seqという実験を行っています.そして(本当は論文の公開時にするべきですが)しばらくした後でこの時のデータを誰にでも使えるように公開しました.実験の詳細は省きますが,この実験では対照実験として”input”と称した染色体配列そのものを読んでいます.
これは細胞のDNAの配列がほぼランダムに断片化されて記録されているので,丁寧に見ていくとその細胞がどのような染色体構造を持っているのかが分かります.

彼らの論文ではT細胞を酸で刺激することで細胞の初期化を行ったとしています.
初期化された細胞が,例えばMuse細胞のように,元からあった幹細胞を選別しただけでないことの証拠として,論文ではTCRのゲノム再構成を証拠として提出しています.TCRとはT細胞レセプターのことで,一つの細胞が一つの抗体だけをつくるように切り貼りされるので,T細胞とそれ以外では全く長さが異なってしまうため,ここを見れば一度T細胞になったものかどうかが分かるからです.
奇妙なことにこの再構成がSTAP幹細胞からつくられたマウスでも観察されるかは論文に記載されていません.これを出せ,という意見はかなり早くからありましたが,これまで出していませんでした.

私はこのまっとうな意見に対して「調べる手段はあるよ」と思っていました.それが先程述べた”input”です.
このデータは50塩基ほどの断片なので,再構成されたDNA配列全体は分かりません.しかし,切り取られた配列がなくなるため,「再構成が起きたかどうか」は分かります.
ゲノム再構成とは染色体のある部分が編集されて短くなるので,DNA配列をみるとその部分がなくなってしまいます.
もしSTAP細胞がT細胞からつくりだされたとすると,ES細胞,CD45+細胞,STAP細胞で比較するとES細胞に比べてCD45+細胞とSTAP細胞ではTCR領域のDNAが減っていることが期待されます.
この解析を始めた時,私は軽い気持ちで,実験生物学をやっている人が見つけられないものでも自分ならすぐに分かるという軽い優越感を得ようとしていました.
しかし,結果は驚くべきものでした.
まず,CD45+s細胞はTCRの再構成がわずかに見られます.しかしSTAP細胞,そして低pH環境下においたCD45+細胞では再構成は観察されなかったのです.
これが私の解析が悪いせいなのかと思い,全く異なるT細胞のデータを使って調べましたが,他のデータでは確実にTCR再構成を観察することが出来ました.つまり,STAP細胞はT細胞由来ではなかったのです.
この段階で私は,この論文におけるT細胞の選別が非常に悪く,幹細胞が混ざっていたのではないかと推測しました.しかしそれは甘かったのです.
低pHで処理するとT細胞はほとんどいなくなります.ではなぜSTAP幹細胞ではTCR再構成が起きていることを証拠として提出しているのでしょうか.これは,実験の手技が悪いとか,ミスであるとか,そういう話ではありません.

それもこの”input”の比較によって明らかになります.
その内容は更に長く専門的になるので,また日を改めて書こうかと思います.

  • プロトコル公開されました.
    論文と矛盾する点が多いので,苦し紛れに見えます.
    ゲノム再構成についてはこの部分でちゃんと述べています.

    (iii) We have established multiple STAP stem cell lines from STAP cells derived from CD45+ haematopoietic cells. Of eight clones examined, none contained the rearranged TCR allele, suggesting the possibility of negative cell-type-dependent bias (including maturation of the cell of origin) for STAP cells to give rise to STAP stem cells in the conversion process. This may be relevant to the fact that STAP cell conversion was less efficient when non-neonatal cells were used as somatic cells of origin in the current protocol.

    8つのサンプルのうちゲノム再構成がみられたものはなかった,だそうです.
    これは私が提出した資料を見た可能性があります.そうだとすればこの数日のうちに書いたものでしょう.
    だとすれば分化した細胞から作成されたという証拠はなくなるし,論文の図も誤っていることになります.数枚の図の訂正ではすまない「修正」が必要になるでしょうね.

    次の日記で書こうと思っていましたが元々CD45はここで述べられているようにT細胞のマーカーではなく血球系の広い細胞のマーカーです.論文中でT細胞だと書いた部分は全て間違っており,ゲノム再構成についての記述も全て削除しなければならないでしょう.
    最初はCD45+で細胞を選択した理由は単なる無知か,わざと(幹細胞を含む)雑多な細胞を混ぜるためだと思っていました.その中にSTAPとなりうる細胞が含まれているかもしれないからと.しかし恐らくそうではありません.他の研究者が理解しづらくするための煙幕だと,今は思っています.

    --
    kaho
    • by minet (45149) on 2014年03月05日 18時24分 (#2556777) 日記

      他所がやると失敗すると聞いて、錬金術時代の、弟子がこっそり金を混ぜて師匠の実験「成功」を演出していたエピソードを思い出していたのですが、
      そんなどころではなく、本当に金はないという事なのですね…

    • by Anonymous Coward

      ほかの多くの方も、CD45がT細胞マーカーの様に誤解されているようでした。
      まったく、全体が詐欺のような論文ですね。
      最初の記者会見でも、 T細胞に分化した細胞が酸で簡単にリプログラミングされてた。と、確かに言っていた、あるいは誤解させていました。
      結局、 脾臓に紛れた幹細胞が選択されたことがあったかもしれないぐらいの、ジャンク論文ですね。(捏造がなかったとしても。)

    • by Anonymous Coward

      ちょっと違うと思う。

    • by Anonymous Coward

      「私が提出した資料」ってどこに出したどんなものですか?
      中身を知りたいのでなく、唐突に出て来てるように見えるので。

      #ネットに上げる資料をすべて作ってから上げた方がいいような・・・
      #要は落ち着いて作業をしないとだれもが損する。
      #まあお茶でも飲んで、落ち着いて ( ^-^)o旦~~~~

    • by Anonymous Coward

      Kaho様。DNA配列情報からTCRの再構成を検出されるとは慧眼です。すごい技術だと思います。この英文を書いた方もCD45とT細胞を混同していると思います。なぜならCD45+のうちT細胞は10%もないでしょう。8個程度のクローンでは何も言えません。それでもわざわざTCRを調べてコメントしているのはT細胞から造ったSTAP由来のSTAP幹細胞(ややこしい)と思って解析しているだと思います。論文でもCD45+なのかT細胞がよくわからない箇所があります。もしKaho様の言われるようにSTAP細胞にもTCR再構成の痕跡がないのであればこれはやはりSTAPおよびSTAP幹細胞ともに組織幹細胞由来ということになるでしょう。その場合は論文の主旨である分化した細胞でもストレスで万能細胞になった、という主張は崩れます。それ以上のことは憶測になるので言えません。

  • >それもこの”input”の比較によって明らかになります.

    ゲノムのDNAの配列が由来するはずのとは違ったgenotype、ES細胞株とかiPS細胞株の由来であることを示唆するような解析結果だったのでしょうか?

    NGSのデータからは捏造でなくても、コンタミなどもすぐわかってしまいますね。

  • by Anonymous Coward on 2014年03月05日 18時50分 (#2556798)

    kahoさんはstap細胞とstap幹細胞の違いを理解出来てないのではないですか?
    至急勉強して自分の間違いは訂正してくださいね

    • ご指摘ありがとうございます.
      怒りに任せて書いたのでいろいろ誤字脱字用語の混乱がありますね.解析の方では気をつけているので以降はちゃんと区別します.

      --
      kaho
      • by Anonymous Coward

        現時点でわかったのは、STAP「幹」細胞が分化した細胞が初期化してできたものではないって
        ことですね。STAP細胞そのものはどうなんでしょうか?
        STAP「幹」細胞が、STAP細胞から得られたという部分の主張が間違っていたってことですよね。

        • by Anonymous Coward

          kahoさんが調べられてわかったのはNCBIデータベース上のデータ(SRAのSRP038104で検索されるデータ)解析の結果,CD45+ cellのみにTCRの再構成が見られ,STAP cell,STAP stem cell,そして低phで刺激されたCD45+ cellにおいてはいずれもTCRの再構成が見られなかったとのことではないでしょうか?
          バイオインフォマティクスの知識はありませんが,共有データベース上のデータからここまで分かるというのは驚きですし,すごいことだと思います.世界中でだれも気づいていないことであれば,データ解析の結果をletter to the editorの形でNatureに送ってみてはいかがかと思うのですが,どうでしょうか?

          • by Anonymous Coward

            そうでしたか。勘違いしていました。
            理研の説明では、STAP細胞がSTAP「幹」細胞になる過程でTCR再構成のないものが
            選別されるとなっていましたから。なるほど。
            STAP cellでTCR再構成がないって、完全に矛盾しているじゃん。
            なるほど。だとすると、「捏造」という主張をするのも、理研の説明を「言い訳」というのもうなずけます。

            • by Anonymous Coward

              私もそう思います.公開された手順ではSTAP幹細胞にはTCR再構成が認められないということを指摘していますが(そもそもSTAP細胞は増殖しないということで細胞そのものは残っておらず,STAP幹細胞のTCR再構成の有無しか調べられなかったのではないかと思います.),論文上ではSTAP細胞ではTCR再構成があることを示していますし,その電気泳動の図は切り貼りの疑惑がかけられています.kahoさんの指摘が確かであれば,捏造を強く疑わせます.もちろんreprogramingではなくselectionの結果として多能性を持ったSTAP細胞が存在した可能性は否定できませんが,TCR再構成の存在を指摘する部分は捏造でしょうし,論文はリトラクトせざるを得なくなるでしょう.
              kahoさんの発見は現在議論になっているSTAP細胞の真偽をはっきりさせるためのかなり決定的な証拠に成りうるように思いますので,大変すごいことだと思います.ぜひ,英文にして世界に公開して欲しいと思います.

              • by Anonymous Coward

                私もそう思います。
                日本だけでなく、ぜひ全世界に発信してほしいです。
                日本の研究に対する評価をこれ以上、落とさないためにも。

              • by Anonymous Coward

                プログラムを公開されるだけでも様々に適応されるように思います。しかしあやかり商法のごとく『再現に成功した』と発表するグループもきっと出てくるでしょう。常温核融合の時のように。しっかり検証する技術としても価値があるでしょう。

  • by Anonymous Coward on 2014年03月05日 23時23分 (#2556987)

    ・上記記事の論文部分:
    「初期化された細胞が,例えばMuse細胞のように,元からあった幹細胞を選別しただけでないことの証拠として,論文では『TCRのゲノム再構成』を証拠として提出しています.TCRとはT細胞レセプターのことで,~略~,ここを見れば一度T細胞になったものかどうかが分かる」

    ・上記記事のkahoさん検証部分:
    「これが私の解析が悪いせいなのかと思い,全く異なるT細胞のデータを使って調べましたが,他のデータでは確実に『TCR再構成』を観察することが出来ました.」

    えっ? kahoさんも、『T細胞の初期化』を成功されたってこと?

    • by Anonymous Coward

      生物もバイオインフォマティクスも門前外なので間違っていたらごめんなさい。
      kahoさんはTCR再構成を検出するコンピュータープログラムというのを作っていて、
      著者の提供した、STAP幹細胞に関する``input"呼ばれるデータに対して動かしたところ、検出されなかった。
      コンピュータープログラムのほうにバグがあったのかな?とも思って、
      全く別のT細胞由来とわかっている遺伝データに対して適用したら、検出できたので、
      コンピュータープログラムのバグではなくて、STAP幹細胞にTCR再構成がなかったと結論づけたのではないでしょうか?

      • by Anonymous Coward

        おお! 「TCR再構成を検出するコンピュータープログラム」の例え、非常に分かりやすかったです。ご丁寧な予想解説、ありがとうございました。

        そうか、「全く別のT細胞由来とわかっている遺伝データに対して適用したら、(TCR再構成が)検出できた」のではないか?ということですね。

        植物かイモリのT細胞なんですかね…(Wikipedia:刺激惹起性多能性獲得細胞 より)。

        とにかくありがとうございました。あなたにゴーストライティングして頂きたいです。

  • by Anonymous Coward on 2014年03月06日 0時02分 (#2557007)

    人を捏造呼ばわりするのだから、
    「もしSTAP細胞が実在したら、私は切腹して詫びます」
    くらい宣言してくださいよ。

    勝利を確信しているのなら、できるでしょう?

    • by Anonymous Coward

      非実名の論客にすら合理的に論破される実験報告は、科学と呼べない。
      ただし、私が先にも書いたようにkaho氏にも冷静に誤解されにくい指摘文を作成願いたい。

      #この日記を読むまでは小保方氏を信じていたが、今は30%位かな・・・・・

    • 「人を捏造呼ばわり」と考えるのは非アカデミックな人の悪い癖で、「人を」じゃなくて「論を」です。
      もし間違っていたら、当然「自論を切腹して詫びる」ことはしますよ。

      • by Anonymous Coward

        アカデミックな態度というならば、論文には論文で、データでもって反論するものです。
        元の文章は、人を捏造呼ばわりしたい気持ちだけが現れています。

    • by Anonymous Coward

      なんで切腹??

      • by Anonymous Coward

        うーむ。ここまで来れば非実名じゃなくて実名で強く批判しても良いんじゃないだろうか。
        スラドで非実名で批判するんじゃなくて、現実世界で強く叫んでも良さそうな気がする。
        それをしない理由って何かあるんだろうか。

        • by Anonymous Coward

          それができないから匿名でやるんですよ。

    • by Anonymous Coward

      勝利って何? このブログの人はデータ解析して他人の論文を批判しているだけでしょう。データの意味がわからない素人は黙っていなさい。

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アレゲはアレゲを呼ぶ -- ある傍観者

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