【レポート】
視聴率も絶好調なNHK連続テレビ小説『ごちそうさん』。主人公・め以子の成長物語は多くの視聴者を引き付けています。今回は、この人気番組のオープニング映像やロゴについて、NHK大阪 岡本幸江チーフ・プロデューサーにお話を伺いました。
――『ごちそうさん』のロゴは笑顔の入った独特のデザインですね。
岡本プロデューサー:このロゴの作成は、映像ディレクターの関和亮さんにお願いしました。関さんには、「ロゴ」だけでなく「オープニングタイトル」、「ポスター」、「台本のデザイン」も併せてお願い致しました。
――それまでに関さんと面識はあったのですか?
岡本プロデューサー:いえ、ありませんでした。
――なぜ関和亮さんに仕事を依頼しようと思われたのでしょうか。
岡本プロデューサー:実は、私はサカナクションの『アルクアラウンド』という楽曲のPV(プロモーションビデオ)がとても好きなんです。楽曲の歌詞を、歩きながら次々に見せていくという演出がされているのですが、素晴らしくカッコいいんです。
CGでもできるんでしょうけれども、実際に物を作って一連のカメラワークで撮っているんです。そのハンドメイド感、手作り感といいますか、それにとても感銘を受けました。これを手掛けられたのが関さんだったのです。
――なるほど。
岡本プロデューサー:『ごちそうさん』はご飯を作るお話です。ご飯は人が自分の手で作るものです。ですから、このような手作り感を大事にするクリエイターさんにお願いしたいと思いました。
――関さんにはどのような発注をされましたか?
岡本プロデューサー:『ごちそうさん』のテーマは料理です。体を動かして料理を作り、人に感動を与える。ですから、まず「手作り感」が欲しいということですね。
また、物語は、明治・大正・昭和の初期にわたって展開します。そこで、大正ロマンといいますか、ちょっとしたレトロ感、「レトロなかわいさ」が欲しい、と申し上げました。
続いて『ごちそうさん』の「ロゴ」、「オープニングタイトル」、「ポスター」、「台本のデザイン」を手掛けられた関和亮さんにお話を伺いました。
――岡本プロデューサーからはどのような指示がありましたか?
関さん:「食事というのは手で作りますよね。手作業や温かさ、ぬくもりを感じるモチーフでお願いしたい」というオーダーがありました。また「笑顔」というキーワードも頂きました。打ち合わせの際に「誰でもおなかがすいているときにご飯を食べると笑顔になりますよねぇ」と話していたことをよく覚えております。
――デザイン作業にはいつ取り掛かり始め、制作にどのくらいの時間がかかりましたか?
関さん:最初の打ち合わせは放送の6カ月ほど前で、かなり時間をかけてギリギリまで作っていました。いろんなパターンを試したので、提出するのにも、また選ぶのにも時間がかかりました。
――ロゴに込めたデザイン意図を教えてください。
関さん:初めは食に関するモチーフで作成しようとしておりました。例えば「卵」だったり、「お米」だったり……。でも、ひとつに固定することが主人公・め以子のイメージと合わず、やはり「笑顔」がモチーフなのではないかと思いました。
め以子は食事を作って食べた人を笑顔にしますが、それを見ため以子もまた笑顔になる。そんなストーリーの根本をロゴにも込めてみました。
――ドラマのロゴということで、何か意識された点などありましたでしょうか?
関さん:そうですね、「ドラマ」というよりは「朝ドラ」を意識して作成しました。毎朝見るものですからね。"気付いたらいる"といいますか、おみそ汁のようなホッとする存在を意識しました。
――実際に作ったロゴについて、ご自身でどのような感想をお持ちでしょうか。
関さん:歴史のある「朝ドラ」のロゴを作ったということをとても光栄に感じています。チャンスを与えてくださった朝ドラ制作陣に感謝しております。
――出来上がったロゴを岡本プロデューサーはどのように思われますか?
岡本プロデューサー:洋風なかわいらしさといいますか、ちゃめっ気があって、食卓を囲むときの楽しい感じ、喜びが表現されている、とても素敵なロゴになっていると思います。また、タイトルバックも番組の手作り感とマッチしていて。CGだと思う方がいらっしゃるかもしれませんが、実は全部アナログなんですよ。
――CGを使っていないということですか?
岡本プロデューサー:はい(笑)。最初、関さんから案を伺ったときはとても驚きました。何枚もパネルを使って、モチーフをテグスでつって、レンズが筒みたいになっているカメラを人がじわじわと動かして撮っていきました。だからちょっと揺れているところもあります。
世界がずっとつながっていて、そして広がっていく。主人公・め以子がたどる成長の過程が表現されているオープニングなのです。過去から現在につながっている物語、「これは自分の物語でもある」と視聴者の皆さんに感じてもらえればいいですね。
――若いクリエイターの参考になると思いますので聞かせてください。ドラマのロゴを作ることの難しさとはどんな点でしょうか。
岡本プロデュサー:そうですね、ドラマは集団で力を合わせて作るものです。そこには、みんなが目指すべきテーマ、コンセプトがあります。それらを共有しなければなりません。ですから、ロゴを作るクリエイターにも、テーマ、コンセプトを共通認識として持ってもらうことが一番大切です。その上で、オリジナリティーを発揮してもらえれば……と思います。
――ありがとうございます。
『ごちそうさん』のロゴは手作り感を大事にして制作されたのですね。それにしても、オープニングが全てアナログで撮影されているというのは驚きですね。
(高橋モータース@dcp)
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